地震や津波の専門家ではないですが、警報による活動制限等があると大きな影響を受ける交通事業者です。
役人が責任回避のために、過剰な警報をだすことは、税金で収入が守られている役人にとっては理にかなっているかも知れません。
しかし、交通事業者は運行を停止しても、事業全てを停止できるわけではなく経費は掛かり、給料も払わなくてはなりません。
その意味で、警報の乱発はとても困ったことになります。新型インフルエンザのときも、学校閉鎖しても授業料は返還しないので学校は気楽で良いなと思ったこともあります。
その程度のレベルですから、自然科学的にも社会科学的にも今回のチリ地震において発令された警報のレベルがどれほど妥当であったのか、正確な判断など出来ないのですが、結果としては、警報が出されて良かったと思っています。
警報が出たときに、その情報をどのように活用するかについて、社会の感心が高まったからです。
京浜地区について言えば、今回の警報で、鶴見線、南武線支線、京浜急行などは運行停止しましたが、京浜東北線、地下鉄などは止まらず、東京マラソンも継続されました。
同じ警報といっても、東京は最大1m、神奈川は最大2mと予測される数値が異なったことと、それぞれの運行地域における防潮設備の違いなどがきちんとシミュレーションされた結果だと思っています。
残念ながらそのシミュレーションの中身は報道されません。マスによる津波関連の情報処理能力がまだ低く、報道されることがむしろ混乱を招くと判断されているからだと思います。
これはダイオキシンや環境ホルモンなどの報道からマスコミが反省して得た結論だろうと想像しています。
ダイオキシンや環境ホルモンはそのもののリスクよりも過剰に警戒することの経済的なリスクのほうがはるかに大きいのに、初期の報道の仕方の失敗により日本社会は未だに大きなほうのリスクを抱えています。
津波警報も、情報の伝達のされ方が津波そのもののリスクと過剰反応のリスクとの逆転を起こしかねないと言うことを、多くの関係者に改めて認識させたことが今回の警報の大きな役割だったと思っています。
おそらくは津波に関する一般の知識レベルは未だに相当に低いです。だからこそ検潮所のデータと津波の痕跡の先端の標高を未だに区別しないで報道しています。
奥尻島の津波は大きな被害の有った青苗地区では2mと多くの過去のニュースに記録されています。30mを越す記録は数ヵ月後の調査で発見された痕跡と記憶します。
複数の岬で回析を受けた波がたまたま干渉によって巨大化した場所にそれなりの形状の入り江があったのだろうと素人なりに想像しますが、本当かどうかはわかりません。
今回の津波では高知県の須崎で1.2mと言う最大値が観測されたそうですが、すぐ隣の久礼では半分たらずだったはずです。この差の原因もわかりません。
マスコミはまだまだ全ての情報を流すことに慎重です。
今回の津波情報が、交通事業者にどれだけ提供されたのか?鉄道事業者には上記のように詳細であったのだろうと推察はしますが、私どものような道路運送事業者にはマスコミとインターネットの公開情報だけでした。
先生のような専門家の方の活動が、リスクの大小の判断まで一般化されることに大いに寄与してくださると思っています。
そして、様々な事象のリスクが、その事象そのもののリスクと過剰な警戒による経済的なリスクの双方が最小になることを願っています。
早川先生のツイッターでのつぶやきを拝見し、優れた活動の一端を知ることが出来たことに感謝しています。
Author:早川由紀夫
私は火山の地質学が専門です。そのなかでも、噴火によって火山から吐き出される火山灰の分布に強い関心をもっています。福島第一原発から放出された放射能の分布は、火山灰に関する私の専門知識を応用してうまく理解することができます。
@HayakawaYukio