早川由紀夫の火山ブログ

火山でいま進行中の噴火や異常をわかりやすく解説します。

スミソニアンの火山レポート

スミソニアン自然史博物館はGlobal Volcanism Programを30年前から運営しています。世界の火山と噴火のデータベースを維持更新するほかに、週間レポート月間レポートを出して新しい情報を世界中に提供しています。

週間レポートは速報です。火曜日締めの情報を水曜日午後に発表します。情報はまずメーリングリストに発表しますが、1-2日で上記ウェブにも掲載します。

月間レポートは詳報です。写真や図を使った丁寧な解説をおよそ2ヵ月後に発表します。白黒印刷の冊子を世界中に約600毎月発送します。上記ウェブにはカラーで掲載しますが、冊子発送日から数えて30日ほどあとになります。

ワシントン滞在中


この自転車で、バージニア州アーリントンからポトマック川を渡ってワシントンDCのスミソニアン自然史博物館まで毎日通っています。2009年3月まで滞在します。滞在記は別ブログをご覧ください。

私の博士論文がウェブで公開されていた

私は、1985年3月に東京大学から理学博士を取得しました。翌年3月に、提出した博士論文のほとんどを東京大学地震研究所彙報 第60冊第4号 pp. 507-592 に印刷しました。タイトルは、"Pyroclastic Geology of Towada Volcano"です。これが、東京大学学術機関リポジトリ(UT Repository)で公開されていることに、きょう気づきました。

書誌情報とアブストラクト
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神戸の水害を伝えた新聞記事 自然への畏敬を忘れる

橋脚にしがみつき九死に一生 神戸の水害で男性語る アサヒコム

(前略)
能勢さんは「増水は想像を超える速さだった。濁流にのみこまれた人は逃げる間もなかっただろう。こんな悲惨な事故は二度と起きてほしくない」と振り返る。


きのうの神戸の水害で、橋脚にしがみついて助かったひとにインタビューして、そのとき何が起こったのかをありありと描き出した新聞記事だ。しかしそのいい仕事を、最後に置いた一文で台なしにしてしまった。

「こんな悲惨な事故は二度と起きてほしくない」は、助かったひとの発言として書いてあるが、執筆した記者の意思と価値観によって、まとめの言葉として据えられたものである。

新聞記事はこの災害を理知的に生き生きと描写している。しかし、最後のこの一文だけがとってつけたように情緒的だ。誰かに過失があって、そのためにこの悲惨な事故が起きたかのよう読めてしまう。しかし、きのうの水害は誰かに過失があったから起こったのではない。大自然の圧倒的な力にひとが打ちのめされたのだ。

たしかに悲惨な災害だったが、「二度と起きてほしくない」と念じてもそれは叶えられない。このような災害は、ときを置いてかならず繰り返す。ひとのちからでそれを止めることはできない。この記事を書いた記者は、ひとの手が及ばない圧倒的な自然に対する畏敬の念を忘れたように思う。

地球は、いま100メートルの坂を下ろうとしている

地球はいま、寒冷化しています。

地球は、2万年前に氷期の底を経験したあと、急速に温暖化しました。8000年前までに何回かあった寒の戻りを挟んで、5000年前にもっとも暖かくなりました。地球は、そのあとゆっくり寒冷化しています。次の氷期に向かっています。次の氷期の底は10万年後に来るだろうと思われます。この約12万年周期の温暖寒冷サイクルは、過去に遡って少なくとも7回は数えられます。8回目が起こらない可能性はゼロではありませんが、8回目も起こると考えるのが自然です。

5000年前がじつは温暖のピークではなく、温暖のピークはこれから来るという考えは検討に値します。いまから500年後にもっとも暖かくなるかもしれません。しかしそのとき、地球の平均気温が5000年前よりはるかに高くなるとは思われません。せいぜい1度高くなるだけでしょう。

5000年前から現在までの海面低下は2メートルほどです。過去の地球の平均気温を知るには、海面の位置がよい指標になります。寒くなると氷が大陸の上に蓄積されるから海の水が減って海面が下がります。

2万年前の氷期の底のとき、海面はいまより100メートルも下にありました。したがって、いまは約12万年周期の温暖寒冷サイクルのなかでもっとも温暖な時期にあたります。地球は、これから氷期に向かって100メートルの坂をゆっくりと数万年かけて下ろうとしています。

最近1000年間を細かく見ましょう。西暦900-1250年は温暖でした。日本では平安朝文化が栄えました、北大西洋ではバイキングが活躍しました。そのあと1850年まで、寒冷時代が続きました。小氷期といいます。現在はそのあとに続く温暖期です。ヨーロッパやアラスカの氷河は、毎年縮退しています。この寒冷/温暖変化は、上で説明した約12万年周期の氷期/間氷期サイクルよりずっと短い時間スケールの話です。

したがって、現代科学が教える現在の地球の立ち位置は次です。短期的な細かい目で見ると温暖化しているようにみえるが、長期的には寒冷化している。次の氷期最寒冷は10万年後に来るだろう。いまの温暖化はこれから1万年も長くわけではない。やがて終わって、寒冷化にスイッチを切り替える。

地球はいま短期的には温暖化していますが長期的には寒冷化しています。いま地球は100メートルの坂をわずかに下り始めたところにいます。その坂は単調ではなく、険しいアップダウンを何回も繰り返します。目の前の上り坂だけを見て、大局的には100メートルの坂を下っていることを忘れている、あるいは知らないひとが多いようにみえます。

また、化石燃料をいくら大量に消費するといっても、地球によるこの自発的環境変化をひとのちからで左右できると思うのは傲慢だと感じます。自然への畏敬が足りない気がします。ひとの所作がひとの住環境に影響を与えることはありましょうが、地球環境を支配するとまでは思われません。地球の営みはかならずひとを凌駕します。

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日本火山のリスク評価

リスクは被害と発生頻度の積であらわす。過去に起こった顕著な火山災害について、いま起こったときの想定死者数を被害とし、年代の逆数を発生頻度とみてリスクを計算した。得られた数値を各火山ごとにすべて足し合わせて、その火山のリスクとした。

この計算法だと、都市に近接した火山のリスクと、近い過去にカルデラをつくる大きな火砕流噴火をした火山のリスクが高く評価される。

雲仙岳(486)
十和田湖(258)
榛名山(245)
阿蘇(210)
富士山(208)
桜島(157)
支笏湖(91)
浅間山(63)
磐梯山(45)
洞爺湖(32)

交通事故による死者は、日本全体で毎年6000人である。火山リスク第1位の雲仙岳でも、その1/10に届かない。ただし都道府県単位で比較すると、鹿児島県・長崎県・群馬県・秋田県・青森県で、火山リスクが交通事故リスクを上回る。

日本火山全体のリスクは約2000(人/年)だから、交通事故の1/3である。

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休火山と死火山を葬ったのは1960年代の教科書検定

1995年12月4日発行のアエラより、「編集部 内山幸男」の署名記事

○休火山や死火山は死語

 しかし、休火山、死火山という言い方は、今はしない。活火山以外は、「活火山でない火山」という同語反復的な呼び方をする。火山の寿命は人間よりはるかに長い。数百年や数千年活動していなかったからといって、死火山とも休火山ともいいきれないからだ。教科書からは、六〇年代に消えたらしい。

 「地学の方では、六〇年代前半から『やめて』とお願いした」

 と有田忠雄元文部省主任教科書調査官はふり返る。地理の教科書にはその後も残っていたが、それも、六〇年代後半には消えた。

 同じころ、富士火山帯とか那須火山帯とかいった「火山帯」も、教科書から消えた。

 今は、プレート理論に対応した火山フロントという言葉に置きかわっている。


科学と合理性を欠いたひとりの教科書調査官による情緒的な考え方が、教科書検定というシステムを通じて国全体に広まった。そして日本火山学界もマスメディアも、無批判にそれをあと押しした。

そこには、とりあえず活火山に分類しておけば住民の防災意識を向上することができるだろうという安直な考えが透けて見える。活火山の安売りが、結局は住民の防災意識の低下につながることに気づいていない。

火山の噴火リスク評価は、活火山かそうでないかの単純二分法に留まっていてはならない。休火山という概念を使った三分法は、定性的ではあるが二分法よりも一歩進んでいる。これからは、リスクを火山ごとに突き比べて定量評価するレベルに進まなければならない。日本には、すべての火山の噴火リスクを評価できるデータが10年も前から存在する。

日本の火山の最近噴火年代 (1996年12月)
いまから1年以内に噴火する(しない)確率の表 (1996年12月)

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星の王子さまは死火山も煤をはらう

星の王子さま星の王子さま
(2005/08)
アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ、Antoine De Saint Exup´ery 他

商品詳細を見る

Le Petit Prince, ANTOINE DE SAINT EXUPERY, 1943
星の王子さま、サンテグジュペリ、池澤夏樹・新訳(2005.8.31)、集英社

出発の日の朝、彼は自分の惑星をきちんと片づけた。まず活火山の煤を丁寧に取ってきれいに掃除する。彼のところには2つの活火山があった。朝ご飯を温めたりするのにとても便利だった。死火山も1つあったけれど、彼は「それだってわかるものか!」と考えて、やっぱり掃除した。

「ぼくは火山を3つ持っていて、週に1回は煤をはらいます。火山の1つは活動していないけれど、やっぱり掃除をします。何が起こるかわからないから。」

「火山が3つ。2つは活火山で1つは死火山みたいですが、いつまた噴火するかわかりません」


星の王子さまは、「いつまた噴火するかわかりません」と考えて死火山の煤はらいをした。休火山なら、近いうちにきっと噴火すると思ってもっと念入りに煤はらいをしたにちがいない。

休火山という語は、その火山がもう噴火しないと誤解を与えるから使うべきでないとする論があるが、これは誤っている。休火山という語には、いまは休んでいるだけであって、そのうちむっくりと起き上がって噴火するだろうという予測が含まれている。生きている火山であって、まだ死んでいないと判定しているわけだ。

「休火山の語を使うのはやめて、それらは活火山というべきである」とする指導がわが国で40年ほど前に中央行政として実施された。日本火山学界のほとんどもこの行政に追従して、休火山の語を日本語から消滅させようと企図してきた。「休火山という語は、いまは使われません」と勝手に裁定するひとまでいた。

しかし、休火山の語がもう噴火しないことを意味すると決めつけるのは、国民を愚弄している。池澤夏樹訳の星の王子さまを読んだ日本国民は、休火山が近い将来噴火するのは当たり前で、死火山ですら噴火するかもしれないと覚悟している。

活火山・休火山・死火山の三分類は、火山噴火の危険と火山の寿命を考えるときにたいへんわかりやすい表記法である。休火山という語を使うことによって、火山の寿命は人間の寿命よりずっと長く、短期間のみかけだけではその危険性を正しく判断できないことをうまく伝えることができる。休火山はいま眠っているから静かなだけであって、将来いつかむっくり起き出して激しい噴火をするかもしれないことを教えられて理解できないひとは、いない。

眠っている火山は、その核心部まで立ち入って火山の驚異を存分に楽しむことができる格好の学習対象だ。休火山という語を捨てることは、この機会を捨てることに直結する。火山防災のために格好の教材を利用しないことにつながる。もったいないことだ。

この三分類は日本語だけでなく、フランス語(volcan actif, volcan dormant, volcan eteint)にも、英語(active volcano, dormant volcano, extinct volcano)にも、みられる。長い時間をかけてつくられた文化を背負った語である。日本語は、おそらく明治期に、フランス語か英語を翻訳してつくられたのだろう。この三分類をいま日本で放棄する理由はどこにもない。火山防災のために、むしろ積極的に使うべき語である。

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三宅島バイクフェスタの知事見通し

石原知事定例記者会見録
平成19(2007)年11月2日(金)


【記者】三宅島のバイクイベントが、いよいよ今月に迫ってきましたけれども、以前から知事は、来年は公道レースをぜひというふうにおっしゃっていましたけれども、メーカー側のほうは、レースというところに…。

【知事】メーカーといったって、たくさんあるのよ。だからね、ホンダがついてこなかったら、ほかでもやれますよ。今度、現に、例えば、レッドブルという世界で流通している清涼飲料水のメーカーがね、協力してくれる。これはですね、あちこちのバイクのイベントにスポンサーになっているところですからね。そのほかに、日本以外のドゥカティとかダビッドソンとか、いっぱいメーカーはありますからね。それはやっぱり競争すればホンダの車は優秀なのかもしらんけども。しかし、どういうんでしょうね、ほかにもメーカーはたくさんありますし、これが充実してくれば、必ず協賛者は出てくると思います。

 それから、やっぱり、この間も村長と話しましたけど、島全体の公道を使うんじゃなくて、ほとんど人の住んでない部分を使ってですね、そのかわり1周、2周じゃなくて、何回も回るみたいな、そういうレースも可能だと思うし、そういう道路の整備、拡幅も、これから考えていこうと思いますから。

 それから、どこかの新聞がケチつけてるけどね。要するに、人が来ないじゃないかという。あの島はね、この間の連休だって、本当に100人も人が、釣り師も行かないような島ですよ。だけど、やっぱり、今度も少なくとも1000人近い人が集まると思いますけども、それだってやっぱり島にとっては画期的なことでね。何か策を講じなかったら。

 私もこの間、三本岳へダイビングに行ってね、ちょっとしけが来たんで、仕方がなしに阿古の港へ入ってね、あの島が初めての人たちを案内して山へ行きましたがね。山どころか、危険地域の、要するに、居住禁止されている地域のすぐ横のところまで、全部木は枯れているの。大きな木は、漂白されている。これはね、災害が起こったときじゃないんですよ。あれから8年近く過ぎて、その間、じわじわじわじわ上からガスが下りてきてね、立ち木が全部枯れちゃった。

 そういう状況の中でね、やっぱり人の住むことそのものがとっても危ないと思うけども、それでもなおみんな頑張っていらっしゃるなら、やっぱり何らかの支援をして、何というのかな、島にお金が落ちるような算段をしないとだめでしょう。

 だから、あなたは反対か賛成か知らんけども、案があったら出してくれ。出してくれよ、案を。いい案があったら、どんどん採用するから。

(略)

【記者】三宅島のバイクフェスタの話に戻ってしまうんですが、先月末で申し込みが締め切られまして、オープニングパレードやツーリングラリーなどに参加するためにバイクを持ち込むという一般ライダーが、当初見込んでいた100人を大きく下回って33人ということなんですけれども、この数字はどのように受けとめていらっしゃいますか。

【知事】さあ、その数字は詳しく聞いていない。もうちょっと何か数が多いんじゃないでしょうか。合わせて、いずれにしろ600〜700人の方が来られる訳ですから、それに見合う車が参加するんじゃないかな。ちょっと私、正確な数字を…。

 あ、ラリー等参加バイク台数は約90台です。

【記者】島の人から盛り上がらないのではないかというような、心配する声も上がっていますが。

【知事】やってみなきゃわからない、そんなものは。最初から大成功するものでもないしね。初めての企画ですから。やっぱり年を重ねていくごとに充実してくるでしょう。物事はみんなそうじゃないの。

暗闇

朝来たり、しかして去れり
また来たり、されどついに昼は来たらず
バイロン(1816)


インドネシアのタンボラ火山が噴火した1815年噴火の翌年は、夏がなかった年としてよく知られる。バイロンはこの詩をその年の避暑先スイスで書いた。
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