桜島大正噴火では、300
メガトンの軽石が空高く噴き出すとともに、4
ギガトンの溶岩が流れ出しました。
火口は南岳の東西山腹に開きました。どちらも山頂から放射方向に伸びる割れ目火口でした。1月12日10時ころ西で噴火が始まり、その10分後に東でも噴火が始まったと記録されています。
湯之平展望台からみた北岳と大正軽石軽石は、噴火割れ目の中でもっとも高い西火口の標高530メートル地点からおもに噴き出しました。北岳から西に伸びる尾根の上に厚い軽石堆積物がのっているのを、湯之平展望台からはもちろん鹿児島市内の城山展望台からも見ることができます。
溶岩は、噴火割れ目の中でもっとも低い東火口の標高250メートル地点(鍋山の南山腹)からもっとも多く流れ出しました。海峡を埋めて大隈半島と陸続きにした溶岩はここから流れ出したものです。
(左)桜島ビジターセンター内の展示、(右)東桜島小学校の校庭にある碑文の解説1914年1月の大正噴火による死者は58人だと聞いていましたが、その内訳をこの展示から知ることができました。死者35人、行方不明23人。
死者のうち2人は噴火で混乱して我を忘れたのか、冬の海に自分から入って死亡。行方不明23人も同様に自分から海に入ったのではないかと疑われます。島内に留まって溶岩の下に埋まったとは思いにくい。溶岩の前進速度はとてもゆっくりですから。
残りの死者33人は、噴火開始日(1月12日)18時29分に起こったマグニチュード7.1の地震によって、対岸の鹿児島市側の住民が倒壊した家屋などの下敷きになって死亡したといいます。
もう少し調べないと確定できませんが、桜島噴火そのものによる死者はゼロだった可能性があります。その目で桜島の地質図を点検すると、大正噴火のときにそこに留まっても安全だったろうと思われる地域を島内にいくつか指定できます。
大正噴火でさえ島内に留まっても死ななかったのなら、次の噴火で高齢者や要介護者をわざわざ島外に避難させるいまの計画は、考え直したほうがよいかもしれません。

桜島に行ってきました。有村で、3日もしくは6日の火山灰を観察しました。発泡してない小石を含む典型的なブルカノ式堆積物でした。おととしの昭和火口からの噴火は、静かに灰を降らせる灰噴火でした。今月の3回の噴火は大音響と火砕流を伴うものだったから、特別の噴火かと心配しましたが、とくに変わったことはありません。桜島でごく普通の爆発です。これは安心情報です。
きょう、国土交通省の桜島国際砂防センターを訪問しました。3日の2回の爆発、6日の1回の爆発の模様を動画で見せていただきました。鹿児島では、テレビニュースでも流れたそうです。
なお今回の桜島旅行は1月から予定していたものです。2月3日の昭和火口再開をみて急遽実施したものではありません。
昭和火口の下流にある黒神小学校と黒神中学校の被災リスクを評価してみよう。先月までは両校とも安全だった。日本の標準的な生活とくらべて、児童生徒が教室内で授業を受けることにとくに高いリスクは認められなかった。
しかし2月3日の噴火によって、状況が変わった。両校にいま先月までの安全はない。では両校を脅かす桜島のリスクはどれくらいになったか。現時点では、定量的に見積もるに足るデータが存在しない。とはいってもリスクを評価する必要性がいま認められるから、半定量的でもよいからなんとか見積もってみよう。
大きな地図で見る児童生徒が背負う交通事故のリスクについて考える。昨年の交通事故死者は全国で約6000人だった。2万人にひとりが自動車社会の犠牲になった。個人から見ると、日本で1年間生活して交通事故に遭って死亡する確率は0.005%である。1ヵ月なら0.0004%である。黒神小学校と黒神中学校の児童生徒は、0.0004%の確率で自動車に引かれて死ぬリスクを容認して毎月通学しているわけだ。
さて、昭和火口から火砕流が噴出して黒神小学校と黒神中学校を焼き尽くすことを考えてみよう。あまり考えたくないことだが、これは1991年9月15日に長崎県の大野木場小学校でじっさいに起きたことである。さいわいにも、あのころは9月15日が敬老の日で祝日だったから、授業中の児童が火砕流に飲み込まれることはなかった。校庭の二宮金次郎像が身代わりになってくれた。
雲仙岳からの熱雲で焼かれた大野木場小学校いまのような状況が桜島に100回発生して、1ヵ月以内に火砕流が黒神小学校と黒神中学校に到達することが1回起こると仮定しよう。これは1%の確率だから、交通事故リスクの2500倍に当たる。もし1000回に1回だとしても、交通事故リスクの250倍である。
大野木場小学校は、火口から4.3キロ離れていた。昭和火口から黒神小学校と黒神中学校までの距離は3.7キロだ。大野木場小学校を焼いた雲仙岳の火砕流と、いまの桜島から発生している火砕流の何が同じで何が違うか。その運動特性と破壊力にどのような違いがあるか。ほんとうはこういう火山学がわかればリスク評価がもっと精度よくできるのだが、2月3日と6日に桜島から発生した火砕流の特徴はまだほとんどわかっていない。火砕流が残した堆積物に近づいて試料を採取できれば理解が進むだろうが、実現していないようだ。
現時点では、黒神小学校と黒神中学校とその学区に住むひとたちは、交通事故のリスクと比べたら桁違いのリスクで自分たちがいま桜島から脅かされている事実にきちんと目を向けることが大事である。火砕流のリスクのほかに泥流や溶岩流のリスクもある。黒神のひとたちはこれらのリスクから目をそらしてはいけない。リスクをしっかり受け止めて、それをどう処理するか自分自身でよく考える。桜島を、火山を、火砕流を、よく勉強する必要があるだろう。考えた結果として選択した行動は、すべて正しい。リスクから目をそらし、考えないことが誤りである。
火山名 桜島 火山の状況に関する解説情報 第6号
平成20年2月6日16時50分 福岡管区気象台・鹿児島地方気象台
> 昭和火口から約3kmの有村展望所付近で大きさ3〜5mmの火山れき(小さな噴石)を確認しました。
じゃあ、きょうの爆発で桜島は噴火警戒レベル3をクリアしたわけだ。
桜島レベル3
> 火口から概ね2km以内に噴石飛散
これは、出先機関の反則プレイ、もしくは本庁が作成したルールブックの不備がもたらした不適切な結論である。2キロを超えて3キロまで噴石が到達したから、レベル3では不十分だとするのは当たらない。(ただし、これとは別のリスクのために、いまレベル4にすべきかどうかを検討する必要があることを私は否定しない。)
3ミリの石粒なら、無防備の頭に落下しても傷つくことはない。家に帰ってシャワーを浴びるだけで快適な健康生活を簡単に取り戻すことができる。一方、噴火警戒レベル表でレベル3において想定される現象として書かれた噴石は、弾道軌道を描いて空中を飛行して、着地点にクレーターをつくる(直径1メートルほどの)火山弾を念頭にしている。当たれば即死する深刻な火山現象だ。
洗髪必要と即死。もたらす結果がこれほど異なる火山現象を、同じ言葉(噴石)をつかって住民に伝達している気象庁は、まっとうな火山監視をおこなっているとは言えない。気象庁が使用する噴石という語に大きな問題があることを、私はずっと前から指摘してきた。この問題は、数年前から、学会で私以外の研究者からも指摘されるようになった。気象庁も、問題があることを火山噴火予知連絡会報で認めている。しかし、いっこうに改善されない。
京都大学桜島のページから。クリック拡大は京都大学桜島へリンク。
発生の翌日撮影された写真だが、火砕流の堆積物表面から水蒸気が上昇している。高温であることを物語っている。
# 京都大学桜島のページにある昭和火口の熱映像はたいへん興味深いのですが、どの範囲をとらえた画像なのか初心者にはわかりにくい。可視画像が添えられるとよい。

気象庁の
火山活動解説資料から
末端崖をもつ立派な火砕流だ。白っぽい色からして、軽石からなるのではないか。もし軽石なら、いま噴火しようとしているマグマは少量でないと考えるべきだ。本格的な噴火に発展する可能性を視野に入れなければならなくなる。
せっかく「火山の状況に関する解説情報」という長い名前の情報を新設したのだから、写真や図表をできるだけたくさん使って表現力豊かにわかりやすい発表を、気象庁にはしてほしい。
たとえば下に、火砕流が発生して1キロ下ったと書いてあるが、そう判断した証拠画像を情報に添付する配慮がほしい。そうすれば、気象庁がした判断が正しいかどうかを他者が検証できる。いまは検証できない。火砕流発生が事実かどうかわからない。いまは、気象庁が火砕流発生を伝達した事実だけがあるにすぎない。(学術の世界ではこう扱われる)
昨年法律を改正して、噴火警報を出すことにして、他者が無許可で噴火予報を出すことを禁じたのだから、気象庁にはそれくらいの努力(サービス)をする責任がある。
こういう事実と意見、規制と責任などのむずかしい議論とは別に、画像や動画をインターネットで公開すれば、地域住民に、そして広く国民全体に、いま進行中の火山現象をわかりやすく伝えることができる。画像や動画がもつ表現力は、テキスト情報とはくらべものにならないから、火山に関心をもつひとを増やすことができる。対象に関心をもつことが防災実現の第一歩である。ハワイ火山観測所による
キラウエア広報がよい手本になろう。
火山の状況に関する解説情報 第2号
火山名 桜島 火山の状況に関する解説情報 第2号
平成20年2月3日18時03分 福岡管区気象台・鹿児島地方気象台
**(本 文)**
<火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)が継続)>
本日10時18分と15時54分に昭和火口(南岳東斜面の標高800m付近)で爆発的噴火が発生しました。このことから16時10分に火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)を発表し、噴火警戒レベルを2から3に引き上げました。
本日10時18分の噴火では、噴煙が高さ1500mまで上がり、雲に入りました(噴煙高度、海抜約3000m以下)。噴石は7合目(火口から200〜300m)まで飛散しました。15時54分の噴火では噴煙が斜面を流れ下る小規模な火砕流が見られ、火口から1km程度の範囲に到達しました。
桜島では、過去の事例からみると小規模な噴火であっても、火砕流(火口から約1km程度流下)が発生する可能性があります。また、火口から2km程度の範囲に噴石が飛散する可能性もあります。
火口から2km程度の範囲では警戒が必要です。
また、風下では降灰に注意してください。
なお、桜島では山頂から概ね2kmの範囲が立ち入り規制となっています。今回の噴火警戒レベル3(入山規制)により、この規制の範囲は変わらず、従来と同様です。
<火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)が継続>
最後のこの書き方は、どう読んでも、規制を気象庁が決めているとしか読めない。文章力のなさでこうなってしまっているなら、文章を改良すればよい。規制主体である鹿児島市の語を挿入すればよくなるだろう。しかし意図してこう書いているのなら、それは違法行為だ。
【“気象庁火山情報に画像と動画がほしい”の続きを読む】