地球はいま、寒冷化しています。
地球は、2万年前に氷期の底を経験したあと、急速に温暖化しました。8000年前までに何回かあった寒の戻りを挟んで、5000年前にもっとも暖かくなりました。地球は、そのあとゆっくり寒冷化しています。次の氷期に向かっています。次の氷期の底は10万年後に来るだろうと思われます。この約12万年周期の温暖寒冷サイクルは、過去に遡って少なくとも7回は数えられます。8回目が起こらない可能性はゼロではありませんが、8回目も起こると考えるのが自然です。
5000年前がじつは温暖のピークではなく、温暖のピークはこれから来るという考えは検討に値します。いまから500年後にもっとも暖かくなるかもしれません。しかしそのとき、地球の平均気温が5000年前よりはるかに高くなるとは思われません。せいぜい1度高くなるだけでしょう。
5000年前から現在までの海面低下は2メートルほどです。過去の地球の平均気温を知るには、海面の位置がよい指標になります。寒くなると氷が大陸の上に蓄積されるから海の水が減って海面が下がります。
2万年前の氷期の底のとき、海面はいまより100メートルも下にありました。したがって、いまは約12万年周期の温暖寒冷サイクルのなかでもっとも温暖な時期にあたります。地球は、これから氷期に向かって100メートルの坂をゆっくりと数万年かけて下ろうとしています。
最近1000年間を細かく見ましょう。西暦900-1250年は温暖でした。日本では平安朝文化が栄えました、北大西洋ではバイキングが活躍しました。そのあと1850年まで、寒冷時代が続きました。小氷期といいます。現在はそのあとに続く温暖期です。ヨーロッパやアラスカの氷河は、毎年縮小しています。この寒冷/温暖変化は、上で説明した約12万年周期の氷期/間氷期サイクルよりずっと短い時間スケールの話です。
したがって、現代科学が教える現在の地球の立ち位置は次です。短期的な細かい目で見ると温暖化しているようにみえるが、長期的には寒冷化している。次の氷期最寒冷は10万年後に来るだろう。いまの温暖化はこれから1万年も長くわけではない。やがて終わって、寒冷化にスイッチを切り替える。
地球はいま短期的には温暖化していますが長期的には寒冷化しています。いま地球は100メートルの坂をわずかに下り始めたところにいます。その坂は単調ではなく、険しいアップダウンを何回も繰り返します。目の前の上り坂だけを見て、大局的には100メートルの坂を下っていることを忘れている、あるいは知らないひとが多いようにみえます。
また、化石燃料をいくら大量に消費するといっても、地球によるこの自発的環境変化をひとのちからで左右できると思うのは傲慢だと感じます。自然への畏敬が足りない気がします。ひとの所作がひとの住環境に影響を与えることはありましょうが、地球環境を支配するとまでは思われません。地球の営みはかならずひとを凌駕します。
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