早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

日本の軽石噴火・火砕流噴火・溶岩噴火



M5噴火が何百年もないのはよくあること。ふつうだ。M5噴火が連発した17世紀の北海道が特異。14世紀と16世紀と19世紀には、M4噴火がひとつもなかった。北海道駒ヶ岳1929年噴火以降、M4噴火がないが、まあよくあることだ。



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十和田湖915年毛馬内火砕流が図抜けて大きい。次が浅間山1108年追分火砕流。



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桜島1914年溶岩は特筆すべき噴出量だった。雲仙岳1990年溶岩や西之島2013年溶岩は、ふつうに大きい。

・上の3グラフを見るときには注意してください。下のほうに集中した点は、噴火レコードの収拾に人為効果が大きく関与した結果です。点密度が最近増えているのは、火山噴火が頻発していることを意味していません。最近の噴火が登録されやすいからのみかけです。上のほうの点の位置と間隔を見てください。これは、火山を、自然を、見ています。

・データは日本の2000年噴火データベースから。

日本の火山リスク

リスクは被害と発生頻度の積であらわす。過去に起こった顕著な火山災害について、いま起こったときの死者数を被害とし、年代の逆数を発生頻度とみてその災害のリスクを計算した。その結果を都道府県ごとに集計するとこのようになる。

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2014年の交通事故死者は、日本全体で4113人だった。日本火山全体のリスクは1655(人/年)だから、交通事故リスクの40%である。ただし都道府県単位で比較すると、青森県・秋田県・群馬県・静岡県・長崎県・熊本県・宮崎県・鹿児島県で火山リスクが交通事故リスクを上回る。高リスク火山から遠いところの府県には火山リスクゼロが多い。火山リスクは、日本列島にあまねくあるのではなく局在している。

日本火山のリスク評価 2014年1月27日

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火山の4キロ円比較

火口中心から測って4キロはマジックナンバーである。爆発時に弾道起動を描いて火口から投出される大岩はせいぜい4キロまでしか到達しないことが、20世紀前半に浅間山で頻発したブルカノ式爆発で経験として蓄積された。弾道学によってそれ以上飛ばないことが保証されているわけではないが、火山防災のための目安として有効である。また、空から降る小石や火砕流のリスクを考慮するときも、4キロはよい目安になる。ここでは、各火山の4キロ円(赤色)を比較してみよう。外側に橙色で8キロ円を示した。

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浅間山と御嶽山は、4キロ円の中に人家はない。箱根山は4キロ円の中にたくさんの人家とホテルがある。口永良部島は4キロ円の中にだけ人家がある。

火山はめったに噴火しない。それでも小さな噴火はときどき起こるが、大きな噴火はまれにしか起こらない。小さな噴火をときどきしている火山の人々は火山との付き合い方に慣れている。そこでは壊滅的な災害が起こらない。静かな火山の懐深くに人々が近寄ったあと、大きな噴火が起こると街が壊滅する。

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年毎の噴火数

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2000年噴火データベースから作成。
赤ハイライト M4 (1億トン)
橙ハイライト M3
黄ハイライト M2
水ハイライト M1

2011年3月11日の大地震のあと、日本列島で火山噴火が増えてはいない。

▼日本列島火山噴火の平均的イメージ
・異常が観測された火山10のうち1つが噴火に至る。
・桜島と諏訪瀬島は毎月噴火している。
・この2山以外に噴火するのは、毎年2山くらい。

大森房吉の活火山・休火山・死火山

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震災豫防調査會報告 第八十七號

大森房吉は、100年前、活火山・休火山・死火山を次のように区別した。
活火山:しばしば破裂して、平時から噴煙を出している火山。浅間山、霧島山、阿蘇山、桜島、伊豆大島、有珠山など。
休火山:歴史時代に噴火したことがあるが、その後、長いあいだ破裂せず、噴煙もない火山。富士山、鶴見岳、開聞岳、神津島、新島など。
死火山:硫気ばかりで、破裂しない火山。箱根山など。ただし休火山との区別はむずかしい。

たいへん納得がいく分類だ。語感に忠実だと思う。1888年噴火前の磐梯山は休火山だった述べているところは、(物理学者であるにもかかわらず)大森が、現在のみならず歴史的な視座も有していたことがわかる。また、死火山は噴火しないが地震を起こすことはあると注意喚起している。

現在の用語で活火山に相当する概念を、大森は活火山と休火山の二つに分けて表現した。私もこの表現に賛成だ。

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原発再稼働で注目されているカルデラ破局噴火の本当のリスク

川内原発を火砕流が襲ったのは歴史的事実だ。そのような災害再来に備えて火山監視するというが、それは役に立たない。

なぜなら、火砕流には予兆があるかもしれないが、それを火砕流にならない予兆から区別できないからだ。火砕流が1万年に1回なら、予兆は100年に1回出よう。火砕流噴火の予兆がもし100年出続けるなら、常時出ていることになる。いまも予兆あるのではないかい?

そもそも、入戸火砕流のようなカルデラ破局噴火は、原発再稼働や原発立地のために心配するだけで済むレベルの災害ではない。リスクはそれよりはるかに大きい。鹿児島県と宮崎県の存亡をかけた心配だ。この心配、ほんとにする勇気ありますか?

カルデラ破局噴火による川内原発の被災を心配すべきは、火砕流に焼かれて即死する鹿児島人・宮崎人ではない。1000キロ離れたところで火砕流から生き延びたと安心したのも束の間、放射能を浴びることになる東京人だ。

島崎邦彦委員「もう少しきちんとした検討が必要ではないかと思います。とくに、あの、火山学者の専門家の方を集めていただいて議論をする。やはり決める場合には、もう少し慎重な検討が必要かと思います」原子力規制委員会2014.4.23

火山災害の種類とリスク

月刊地理5月号の特集「火山災害は噴火だけじゃない」に、小論「火山災害の種類とリスク」を寄稿しました。古今書院の許可を得て全文pdfファイルを公開します。

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火山災害のリスクは、私たちがよく目にする噴火によるもの、すなわち高温マグマに直接よるものは小さい。噴火と無関係に大雨によって火山斜面で発生するラハールのリスクが無視できない。日本列島で100年に1回起こる既存火山体の崩壊による土石なだれのリスクが中程度に大きい。途方もない量のマグマを火砕流として地表に一気に噴出するカルデラ破局噴火は日本列島で1万年に1回しか起こらないから、私たちはそれをまだ目にしたことがない。しかし、そのリスクが火山災害リスクの中でずば抜けて大きい。このような低頻度大規模災害リスクに現代社会はどう立ち向かえばよいのか、現時点ではよくわからない。そのときが来る前に考えを深めておく必要がある。

火山リスクは低頻度大規模災害にある。

死者が100人を超える火山災害のリスト。この日本社会は山体崩壊による土石なだれを経験しているが、カルデラ破局噴火はまだ経験していない。



よく起こる火山災害で人はたいして死なない。長い目で見ると火山で死ぬ人のほとんどは、百年や万年に一回起こる低頻度大規模災害による。すなわち山体崩壊とカルデラ破局噴火である。百年や万年に一度しか起こらない災害に、この現代社会が対応できるとは思えない。平時の備えも無理だろうし、危機時の対応も無理だろう。(だからそのときが来たら、ジタバタせずに潔くあきらめて死ね。火山には勝てない。)

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日本火山のリスク評価(2014年2月改訂)

・表1 火山ごとのリスク一覧

本文

・表2 高リスク火山のリスト
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雲仙岳(986)→496
十和田湖(272)
富士山(250)
榛名山(242)→80
姶良(234)
阿蘇(210)
支笏湖(112)
浅間山(101)
箱根山(77)
-----------------

2013年の交通事故死者は、日本全体で4373人だった。日本火山全体のリスクは2203(人/年)だから、交通事故リスクの1/2である。ただし都道府県単位で比較すると、鹿児島県・長崎県・群馬県・秋田県・青森県で、火山リスクが交通事故リスクを上回る。

原子力発電所の火砕流リスク

ツイッターまとめ

リスク評価(科学)

原発が火砕流で埋まったらどうなるか

カルデラ破局噴火のタイミングと予知可能性

六ヶ所村の再処理工場と十和田湖からの火砕流 (2014年1月19日)
施設に火砕流が到達すると同程度の深刻な結果をもたらすと仮定すると、火砕流の発生頻度がリスクを決める。1万5000年前の八戸火砕流のリスクを1とすると、2万8000年前の入戸火砕流のリスクは0.54、10万5000年前の洞爺火砕流のリスクは0.14だ。

地質学者の白昼夢 (2014年1月22日)
南九州で次に起こる火砕流が川内原発を飲み込んだらどうなるか、想像してみた。

リスク管理(政治)

本気で1回議論する? カルデラ破局噴火のリスク管理

火砕流みたいなものに対して、どうせ来たら全滅するようなところで原子力発電所が事故を起こしても、これは諦めるしかない
原子力規制委員会の平成 25 年 3 月 28 日会合で出た意見。

川内原発とシラス噴火 井村先生、参議院内集会でお話

原発の再稼働を決めるのは誰か
あるべきプロセスと責任の所在は、
1)専門家がリスク評価をする。
2)そのリスク評価を加味して、政治家がリスク管理する。再稼働するかどうかを決断する。
3)すべての責任は政治家にある。
4)専門家に責任はない。あるのは、説明責任のみ。

カルデラ破局噴火を直前に察知して避難できるか
個人としてでなく、日本社会としてどうかを検討した。原発との関係も議論した。

原発とカルデラ破局噴火

低頻度大規模事象の扱いは、単純なリスク比較だけでは不十分。(2013年12月22日)
リスクが大きくても極低頻度なら、無視したほうがよいような気がする。もし対策すると莫大なカネがかかる。その費用負担に社会が耐えられないのではないか。社会を崩壊させてまでリスク管理するのは本末転倒だ。

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