早川由紀夫の火山ブログ

火山でいま進行中の噴火や異常をわかりやすく解説します。

火山噴火と自動車保険

自動車保険の更新が近づいてきて、資料が送られてきました。それをみて気づきました。

車両保険は、「台風・こう水・高潮」の場合に補償されると書いてあります。昨年末にあった気象業務法の「画期的」改正によって火山噴火の前に警報が出るようになったというのだから、ここに「火山噴火」も加えてほしいものです。

2004年9月16日朝、浅間山に向かう途中の横川サービスエリアで、火山噴火による被害が補償されるかどうか私は保険代理店に電話で尋ねましたが、補償されないという答えをもらいました。火山監視技術が向上して火山噴火の危険を事前にアナウンスできると気象庁がいうのだから、これからは火山噴火による被害も台風や洪水による被害と同じように補償されてしかるべきです。

不可解な居住禁止処置 三宅島で7年半

三宅村:阿古高濃度地区、一時滞在期間を拡大 /東京
 三宅村は23日、00年の三宅島噴火災害後の火山ガス(二酸化硫黄)の影響で居住を禁止している島南西部の「阿古高濃度地区」について、現在は7、8月に限り認める一時滞在期間を3〜8月に拡大する条例改正案を村議会臨時会に提出し、全会一致で可決された。

 同地区はガス濃度の低下が認められたため、村は昨年から夏の2カ月間だけ滞在を認めた。ガスの感受性が高いぜんそく患者や19歳未満の人は対象外で、健康診断を義務づけ、期間中に6世帯12人が滞在を果たした。

 村は昨年12月に開かれた安全確保対策専門家会議を経て、滞在期間の拡大は可能と判断した。今後、もう一つの居住禁止地区である島東部の「坪田高濃度地区」についても一時滞在の是非を検討する。【木村健二】

毎日新聞 2008年1月24日


2000年9月から、もう7年半になる。まだ居住を禁じている地域があるのだという。三宅島に警戒区域は一度も設定されたことはないし、いったん出された避難指示もすでに解除になった。それなのに、自分の土地で寝起きすることができないのだという。自分の土地に住むことを権力によって禁じられるとはどういうことか。自分の土地に住めるかどうかを自分では判断できなくて、他者の決定に従わなければならないとはどういうことか。こういう、基本的人権にかかわることへの恐るべき感度の低さがこの島の空気を圧倒的に支配している。

住まわせない処置に対する補償金が支払われたとは聞かない。噴火直後に全国から集まった義捐金がどう使われたかもわからない。住民にはごく一部しか配分されていないのではなかろうか。

防災行動の指示は市町村長が出す

 

宮崎日日新聞2007年12月25日社説より

気象庁は今月から噴火警報・警戒レベルの発表を始めた。これまでは火山活動についての状況を5段階に分けて危険度を表示するだけで、各段階で住民や登山者らがどういう行動を取ったらいいかは示していなかった。しかしこれからは危険度に応じた防災行動が明確に分かるようになった。


この社説は、今回の改訂で、住民がとるべき防災行動を気象庁が指し示してくれるようになったと読める。しかし、実際はそうでない。気象庁は行政がとるべき対応を例示するだけである。どの地域にどんな対応をとるかは地元自治体が決める。ここでいう地元自治体は、都道府県ではなく、市町村をいう。避難の勧告や警戒区域の設定は市町村長の専権事項であることが、災害対策基本法で定められている。

市町村長は、気象庁が発表する噴火警報を参考にして、みずからが適切だと考える対応をとる、あるいはとらない。この権限は責任と裏腹の関係にある。気象庁が対応の内容を具体的に示してくれるからそれに従えばよいと受身の姿勢でいては、ならない。そこでは、主体的にもの考える力が求められている。問題解決能力が試される。政治家にとって力量の発揮しどころだ。地元の特殊事情によっては、気象庁が指し示した例示とは異なる災害対応をとるのが望ましいと考えられる場合もあろう。本当にそうなら、そうしてよい。

噴火警報・警戒レベルの発表で、自治体が違ってもどんな防災行動を取るべきかの共通認識を持つことができるようになった。


いや、対象火山との位置関係によって、自治体がとるべき防災行動はそれぞれ異なる。火山から5キロしか離れていない自治体の防災対応と50キロ離れた自治体の防災対応が同じだったら、それはむしろおかしい。火山周辺の自治体は情報交換を密にして互いに助け合うことが必要だが、防災対応を横並びにすることにこだわってはならない。各自治体は、それぞれリスクに応じた適切な対応をとることが求められる。その対応は、自治体の地理条件・社会条件によって異なるであろう。ここでも主体的にものを考える力が必要となる。

UFO 今度は石破防衛大臣

「UFO対処を頭に入れるべき」石破防衛相
12月20日11時56分配信 産経新聞


 石破茂防衛相が20日午前の記者会見で語った、未確認飛行物体(UFO)に関する発言の詳細は以下の通り。

「UFO(の質問)は出ませんでしたね。再開しようか?」

−−UFO論議が注目を浴びているが、ご所見を

「存在しないと断定できる根拠がない。個人的に信じる、信じないの問題はあるのだろうが、そういうような未確認飛行物体、それを操る生命体が存在しないと断定しうる根拠はない。防衛省としてというよりも、私個人の話だが、存在しないと断定し得ない以上、いるかもしれない。少なくともないと断定するだけの根拠を私は持っていない。そういうものはあり得るだろうということだと私は思う」

−−その場合、防衛力のあり方への影響は
「ゴジラの映画があるが、ゴジラでもモスラでも何でもいいのだが、あのときに自衛隊が出ますよね。一体、何なんだこの法的根拠はという議論があまりされない。映画でも防衛相が何かを決定するとか、首相が何かを決定するとかのシーンはないわけだ。ただ、ゴジラがやってきたということになればこれは普通は災害派遣なのでしょうね
 命令による災害派遣か要請による災害派遣かは別にしてですよ、これは災害派遣でしょう。これは天変地異の類ですから。モスラでもだいたい同様であろうかなと思いますが、UFO襲来という話になるとこれは災害派遣なのかねということになるのだろう。領空侵犯なのかというと、あれが外国の航空機かということになる。外国というカテゴリーにはまず入らないでしょうね。

 航空機というからには翼があって揚力によって飛ぶのが航空機ですから、UFOが何によって飛んでいるのか、色んな議論があるのでしょうけど、それをそのまま領空侵犯で読めるかというとなかなか厳しいかもしれない。そうなってくると、これは飛翔体なのかねということになるとするとどうなのか。例えば隕石(いんせき)が降ってきたことと同じに考えられるか。隕石は自然現象だから何の意思もなく降ってくるわけですが、UFOの場合は意思なく降ってくるわけではない。これをどのように法的に評価するのかということもある。そうすると災害派遣が使えるのか、領空侵犯でもなさそうだ。そうすると防衛出動かねということになるが、それをわが国に対する急迫不正な武力攻撃と考えるかというとそうはならないだろう
 UFOが襲来して、色々な攻撃を仕掛けるということになれば、そういう評価も成り立つのだと思うが、『地球の皆さん、仲良くしよう』と言って降ってきたときに、それはわが国に対する急迫不正な武力攻撃でも何でもない。また、何らかの意思が伝達されたときに何を言っているかよく分からないという場合に一体、どのようにわが方の意思を伝達するのだということもある。当省として、こういう場合にどうするかという方針を固めたわけでも何でもない。これは私個人の話であって、私は頭の体操という言葉はあまり好きではないが、色んな可能性は考えておくべきものだ。
 ある日突然にそういうことが起こって、どうするのかというのもあまり望ましいことではない。省として取り組むことは全然ないが、私自身として、一体どうなるのかということは考えてみたいと思っている。そのときに日本だけ襲来するかというと、世界あちこちに襲来するでしょうな。そのときに国連でそういう議論が行われたかというとあまり承知していない。まだ、存在しないと断定し得うる根拠がない以上は、やはり頭のどこかに置いておくべきなのではないのかなと。当省としてそういう方針を決定したということでは全くありません」


貴重な発言だから、全文転載します。職責の視点から問題の所在を指摘したのはよかったのだが、それを裏打ちする教養が不足していた。

教養はともかく、職責の話をしよう。地球外生命体が飛来したら、陣頭に立ってその対応に当たるべきは防衛大臣ではなく総理大臣だ。災害緊急事態を布告することになるだろう。残念ながら、防衛省は災害対策基本法を所掌していない。

「映画でも防衛相が何かを決定するとか、首相が何かを決定するとかのシーンはない」という石破大臣の発言は、そのとおりだ。昨年公開された『日本沈没』にも、そのシーンはなかった。

→ 日本沈没 ハイテクジャンボは火山弾で落ちない

官房長官が記者会見で個人的意見

町村信孝官房長官が18日、定例記者会見でUFOの実在にかかわる個人意見を述べた。

あのー、私は個人的には、こういうものは絶対いると思っておりまして。個人的な、個人的な意見でありまして、政府答弁は政府答弁であります。
産経新聞から


政府答弁と個人意見が異なることがあってよい。政府答弁を否定する個人意見を官房長官がその日の記者会見で表明したという、こんなわかりやすい事例が収集できました。

ともすれば集団決定に無条件で従うことが強制され、個人の自由が束縛されることが多い社会で、溜飲を下げた思いがします。

浜岡原発の運転差し止め請求

静岡地裁が26日、浜岡原発の運転差し止め請求を棄却したという。報道によると、浜岡原発が設計に利用した想定震度には学術的根拠が十分に認められるというのが理由だそうだ。しかし、きわめて専門的なこのような学術判断を非専門家であろう司法人にさせてよいか、疑わしい。

学術の適否は専門家に判断させるべきであり、司法人ができること(すべきこと)は、手続きに不備がなかったかの判断だけだ。

今回の場合は、中部電力が採用した想定震度が、経済産業省原子力安全・保安院が定めた「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」に合致するかどうかが争われたようにみえる。このような高度に学術的な判断を、地震素人であろう司法人ができるとは思えない。手続きの可否については司法の場で争うのが適当だが、想定震度が指針に合致するかどうかの判断は審査機関を(原子力安全・保安院が)新たに設けてそこで審査すべきだ

原告は、裁判では、想定震度の可否を争うのではなく、浜岡原発で事故が起こったときの補償を争うのがよかった。もし事故がおきてからでは遅いというなら、事故が起こるとどのような被害を受けるかをきわめて具体的に示す立証責任があった。そして、事故が起こる確率を添える。これこそ、まさにリスク・コミュニケーションである。

とはいっても、この地裁判決にはそれ以前のレベルの問題もあったようだ。宮岡章裁判長は、「東海地震だけでなく東南海・南海地震と連動した場合にも耐震安全性が確保されており、原告らの生命、身体が侵害される具体的な危険性は認められない」と述べたそうだ(読売新聞)。この裁判長はゼロリスクの存在を信じている。今回の原告は、不運な裁判長に当たってしまったようにみえる。

(原告の請求内容を調べないまま書いていますから、もしかするとこの文章には私の無知による不適切があるかもしれません。)

組織が個人による発言を規制する例

民主党、全議員にテレビ自粛令
アサヒコム 2007年09月15日05時59分

 民主党が党所属の衆参両院議員に対し、メディアで政局絡みの発言を慎むように求める文書を13日付で出していたことがわかった。小沢代表が12日に「テレビ出演には気を付けてくれ」と党幹部に指示したのがきっかけで、事実上、テレビ出演の自粛を求めた格好だ。

 口頭での指示が徹底せず、中堅若手の出演が相次いだため、文書で徹底した。幹部の一人は「浮足だって、政局モードで動いている相手の土俵に乗ってはいけない」と話している。

 文書は「政局が揺れ動いているが、民主党の政治姿勢や政策方針にはなんら影響を与えない」とし、「メディア対応は妨げないが、政局に関することは小沢代表にお任せ頂き、政局評論などのご発言は慎まれるよう」と要請している。


民間企業なら、社長がこのような指示を社員にするのはちっともおかしくない。しかし政治の世界では、反発があるようだ。新聞記事になったことから想像できる。学術の世界でも同様の葛藤がしばしば発生する。

はしかの疑いで修学旅行生を隔離 カナダ

アサヒコム

修学旅行生、カナダで「隔離」 はしか流行、海外に波紋
2007年05月30日09時57分

 カナダを修学旅行で訪れた東京都内の高校2年生の一行で、生徒の1人がはしかのような症状を訴え、病院で治療と検査を受けていることが29日、わかった。残りの生徒らは滞在先のホテルに一時「隔離」され、感染検査を受けたという。カナダでははしかの発生率は非常に低く、現地メディアも今回の事態を報道。はしかの流行が海外でも波紋を呼んでいる。

 現地の保健当局と学校関係者によると、一行が24日にカナダ入りした後、女子生徒の1人が発熱と発疹の症状を示し、バンクーバーの病院に入院した。残りの生徒123人と教員、添乗員らは移動先のバンフのホテルで保健当局から待機するよう指示を受け、血液検査を受けた。女子生徒の診断結果はまだ出ていないが、残りの生徒らには感染者がいないことがわかり、29日は観光などの日程をこなしたという。

 バンクーバーの保健当局の広報担当者は「カナダでは、はしかの感染率は非常に低い。日本では流行していると聞くが、私たちにとって今回は異例の事態だ」と話した。



この隔離は、緊急時における私権の制限を考えるときの事例としてたいへん興味深い。

・リスクの認識と評価と管理
・当局側による強制
・当事者への金銭補償

避難勧告に切り替えて帰宅許可 沖縄中城村

沖縄県の中城村長「もう今日から帰れるというふうに、避難指示から避難勧告に切り替えたことを、ここに皆さんに報告いたします。」(NHKテレビニュースにおける村長発言を忠実に文字化)

これは、おかしい。災害対策基本法60条による避難指示と避難勧告は、危険度の差によるものではない。避難が急を要するか否かの違いによる。避難勧告を出しながら帰宅を認めるというのは、おかしな処置だ。一時帰宅ならその限りにあらず。

第60条 災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、人の生命又は身体を災害から保護し、その他災害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の居住者、滞在者その他の者に対し、避難のための立退きを勧告し、及び急を要すると認めるときは、これらの者に対し、避難のための立退きを指示することができる。


いっぽう那覇市のいまにも崩れ落ちそうなマンションへの立ち入りは引き続き禁止されるそうだが、崩れ落ちないまま数日がたった。1時間でも30分でもいいから大切なもの価値のあるものを取りに帰りたい住民がきっといることだろう。取りに行くことが権力によって封じられたままそれらが失われたとき、いったい補償はあるのだろうか。その損失は自然災害によるとは言えないだろう。

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