(類型1)中心点からの距離で警戒範囲を決めた火山
浅間山。レベル3は山頂火口から4キロ。

草津白根山(湯釜)。レベル3は湯釜火口から2キロ。

新燃岳。レベル3は火口から3キロもしくは4キロ。

桜島。レベル3は南岳火口と昭和火口から2キロ。
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毎日新聞記事(10月18日)のアンケートは私のところにも来ました。9月3日に送信した回答を下に転記します。
アンケートに答えます。
(1)昨年の御嶽山噴火災害は、そもそも避けられなかった。秋の好天の土曜日の正午前。最悪のタイミングだった。もし夜間に噴火したなら死者はひとりも出なかっただろう。
(2)適切ではありません。いまの噴火警戒レベルシステムは、災害対策基本法60条・63条に抵触しています。立入禁止や避難は、地元市町村長の専権事項です。
(3)火山住民の命を守るだけを掲げて、彼らの生活を蹂躙しています。気象庁は、彼らの生活を保障する必要があります。
(4)噴火警戒レベルの上げ下げに外部の火山研究者が関わっていません。噴火予知連でさえ、レベルの検討をしないと聞いています。レベルは気象庁内部だけで決めていると承知しています。
(5)早期警戒態勢が何を意味するかわかりませんが、いま決定的に足りないのは、噴火を見てすみやかに解釈する能力とシステムです。火砕流と見ても火砕流と判断できない、噴火だが噴火とは言わないと公言する、などの学力から見識に渡る大幅な知的改善が必要です。いま目の前で起こっている事象を的確に判断してすみやかに広報することが必要。火山噴火は、数分で終わる地震と違って、何日も、ときには何年もかけて推移していくのだから。火山監視はたいがいにしておいてよい。確定的は予知はできないのですから。
早川由紀夫(2015)インターネットを利用した御嶽山2014年噴火の迅速把握と情報伝達。月刊地理、60(5)、14-23。
http://www.hayakawayukio.jp/publication/paper/60-5-hayakawa.pdf
(6)回答しません。
(7)変わっていません。噴火が報告される火山は増えていますが、それは4年前の大地震以降、火山に注目が集まっている効果が大きい。マグマ噴出量で測ると、増えていません。前と同じです。
http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-entry-700.html
(8)確定的予知はできません。
(9)原理的に不可能だと思います。
(10)噴火警戒レベルをやめるべきです。避難などのリスク管理に踏み込んでいなかった以前の火山活動度レベルに戻すべきです。
(11)火山のこと、もっと勉強してくださいね。これから秋の紅葉が美しい季節です。火山にでかけてその美しさを自分の目で見て、きれいな高原の空気を吸って火山を好きになれば、火山のことをいいかげんに書いてはいけないと自戒してもらえるでしょう。
気象庁は、2007年12月1日から火山に噴火警戒レベルを設定して噴火予知の業務を始めた。
これまでの7年間に気象庁が出した噴火警報を詳しく読むと噴火予知を17回発表したと解釈できる。そのうち3回の直後に噴火が発生した。的中率は18%である。いっぽうこの間に予知がないまま噴火が9回発生したから、現在の気象庁による噴火予知の感度は25%である。
○予知成功 3回
●予知失敗(空振り) 14回
×予知失敗(見逃し) 9回
ただし桜島を除く
予知あり 予知なし
噴火あり 3 9
噴火なし 14 -
的中率 3/17 = 18%(予知が的中した割合)
感度 3/12 = 25%(噴火を予知した割合)
2014年10月7日
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霧島火山群における火山防災事業に関する検討会 ~霧島火山の噴火の影響と危機管理~
2004年12月13日@鹿児島県国分市
火山噴火危機における国と自治体の役割
きのう4月1日16時17分に三宅島が11ヶ月ぶりに噴火したと気象庁が伝えました。気象庁は情報を次のように発表しました。噴火から9分後の16時26分に
噴火に関する火山観測報を発表して、有色噴煙が火口の上600メートルまで上昇したことを速報しました。続いて17時20分に
火山の状況に関する解説情報を発表して、噴火が2008年5月8日以来であると評価した上で、防災上の警戒事項を書き添えました。
最後に19時30分に、5ページからなる
火山活動解説資料を発表しました。この中には、遠望カメラによる噴火時の画像、積灰を確認した地点を記した地図、積灰写真、地震計の記録、2001年以降の噴火リストが含まれています。
きのうの気象庁は、有意義な情報を短時間で発表したと思います。ただしプロフェッショナルの仕事なら、積灰の量を「車のボンネット一面に確認できる程度の量」とあいまいに表現するのではなく、試料を持ち帰ってただちに秤量して単位面積あたりの重量を数値で発表してほしい。
残念ながら単位面積あたりの重量は報告されていませんが、三池浜の積灰写真が公開されています。これを
浅間山火山灰の写真と比較して、10g/m2程度だと見積もりましょう。三池浜は火口から3.1キロの距離にありますから、この積灰量が1.5平方キロの面積を囲むと仮定します。経験に基づいてその積を12倍します。これによって、4月1日の噴火で火口から噴出した固形物質の全量は200トン程度だったと評価できます。噴火マグニチュードでいうと-1.7です。4月1日の噴火は、10メートル四方、厚さ1メートルの岩石が粉々になって火口から飛び出した爆発だったと理解されます。
2007年12月1日の
気象業務法改正によって、気象庁長官の許可なく火山の予報を反復継続して公にすることができなくなりました(17条)。火山の警報については、気象庁以外が公にすることが一切できなくなりました(23条)。
てるみつさんの2009/3/10 15:43発言は、改正された気象業務法に抵触していると思います。過去の事実の評価だけでなく、具体的な未来予測に立ち入っていますから。なお私は、てるみつさんの2009/3/10 15:43発言のような文章をインターネットブログに載せるなと言っているのではありません。現行法に照らして違法適法を判断しただけです。悪法にどう対処するかについては、いろいろな考えがあるだろうと思います。
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気象庁はきょう、桜島でも噴火警報の切替えをしたと発表した。どうやら、気象庁がいう切替えとは、同じレベルの中でも危険度を微妙に上げ下げすることを意味するらしい。これは、日本語文化圏の人にとって、けっして自明のことではない。気象庁は説明責任を果たしていないと私は考える。そもそも切替えと言っただけでは、危険が増したか減じたかが伝わらない。これは不完全な情報発信である。
火山名 桜島 噴火警報(火口周辺)
平成21年3月10日07時10分 福岡管区気象台・鹿児島地方気象台
**(見出し)**
<桜島に火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)を切替え>
火口から居住地域近くまでの範囲で警戒が必要。
<噴火警戒レベル3(入山規制)が継続>
**(本 文)**
1.火山活動の状況及び予報警報事項
桜島の昭和火口で、本日(10日)05時22分に爆発的噴火が発生し、弾道を描いて飛散する大きな噴石が2合目(昭和火口より2km付近)まで達しました。
桜島の噴火活動は活発化する恐れがあり、火口から居住地域近くまでの範囲で弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒が必要です。
(以下略)
じっさい、きょうの切替えは危険度が上昇したことを気象庁は伝えたかったのだろうと想像するが、それは自明なことではない。上の情報文には危険度が上昇したことが明示的に書いてない。
一方、2月3日の浅間山の切替えは危険度が低下したことを伝えたかったのだろう。これもそうは明記してなかった。2月3日から浅間山の危険度が少しだけ低下したと気象庁が判断を「切替え」たと理解できた人は、私を含めてほとんどいなかっただろうと推察される。
【“桜島でも噴火警報の「切替え」 火山弾が2キロまで”の続きを読む】
気象庁地震火山部が6日16時に発表した「
火山の状況に関する解説情報 第4号」の中に次の記述がある。
1.火山活動の状況及び予報警報事項
浅間山では、2月1日に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げました。その後、2月3日に噴火警報を切替え、噴火警戒レベル3(入山規制)を継続しています。
2月1日に気象庁が浅間山のレベルを2から3に引き上げた事実は広く報道されたのでよく知られている。3日に噴火警報を切替えたというのを私は、新聞記事で目にした記憶がある。そのときは意味がわからなかったが、新聞記者が生半可な理解で書いたのだろうと思って放置していた。しかし気象庁が本当にそうアナウンスしたのだと、きょう確認することができた。これはいったいどういう意味なのだろうか。気象庁は「切替え」という言葉で何を伝えようと意図したのだろうか。同じ文の後ろでレベル3継続と書いているから、私には意図がまったく読み取れない。読み取れないのは私だけではないだろう。
2月3日に気象庁は、浅間山の危険が増したと伝えたかったのか(そうではないだろう)、減ったと伝えたかったのか、それとも変化なし(現状維持)と伝えたかったのか。日本語をそのまま読むと、ひとつの文の中で矛盾しているので理解不能である。
広辞苑によると、
切り替える
(1)今までのに取りかえて別のにする。新しくする。「スイッチを―・える」「頭を―・える」
(2)両替する。兌換する。
気象庁は、防災官庁であることを自認するなら、防災情報を伝える際に独自の言葉遣いを用いることを徹底的に避けるべきだ。防災のために気象庁ができることは日本語による情報提供だけなのだから、気象庁は平易なことばでわかりやすく情報を伝達することに熱心に努めなければならない。いまの気象庁にはそういった意識・配慮が欠落している。これは現場担当者の問題ではなく、指導層の意識の問題だ。「噴石」については、もはや手がつけられない状態に陥ってしまった。
【“「噴火警報の切替え」って何だ?”の続きを読む】
日本の火山防災の責任を気象庁長官が一手に引き受けることになってから、きょうで一年が経過した。気象庁は、日本のおもだった火山に
噴火警戒レベルを1から5まで設定した。各レベルによって、住民がとるべき防災行動をそれぞれ規定している。レベル4で避難準備、レベル5で避難だ。住民が避難行動を開始するきっかけは、気象庁が宣言するレベル5である。逆に言えば、住民は気象庁がレベル5を宣言するまで避難しなくてよい。
この一年間、気象庁による情報公開は、とくにインターネットを介してめざましく前進した。火山に異常があると、従来のテキスト情報だけでなく、写真や観測データを掲載したpdfファイルをきわめて迅速に公開するようになった。その迅速と詳細についての賞賛の声が国外から私の耳に聞こえてくる。
しかし、気象庁が火山防災を責任を持って遂行するに十分な
能力をこの短期間で獲得したかというと、もちろんそうではない。まだ、はなはだ不十分だ。それは一年や二年で達成できることではない。実際、8月22日の霧島新燃岳の噴火は、レベル1のまま発生してしまった。気象庁は、新燃岳が噴火したのを知ってからレベルを2に引き上げた。
住民が避難するべきか、しなくてよいか、の意思決定は昨年12月から気象庁がすることになった。これは、その意思決定を市町村長がすると定めた災害対策基本法と矛盾しているように私には思われるが、市町村長は自らの決定権を責任とともに中央に差し出して無邪気に喜んでいる。
ほんとうにこれでよいのか。火山のリスクについて、何をどこまで受容するかには地域依存性がきわめて高い。地方固有の文化に直結する価値観をみずから捨て去り、中央の言うがままに従ういまの方式でほんとうによいのか。
いまの中央が地方と
同一の価値観を共有するとは、私にはとうてい思われない。