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早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

キラウエアの休止 1週間経過

キラウエアで、地表を流れる溶岩が見えなくなって1週間が経過した。

Kilauea Daily Update issued Jun 27, 2007 08:10 HST Volcanic-Alert Level ADVISORY - Aviation Color Code YELLOW
Report prepared by the Hawaiian Volcano Observatory (HVO):

It has now been a week since active lava was observed at the surface of Kilauea volcano. The Pu`u `O`o eruption continues to be in a pause.

(略)

Until activity changes, Kilauea reports will be posted daily.



ハワイ火山観測所は25日に、キラウエアの危険レベルを ORANGE/WATCH から YELLOW/ADVISORY に変更した。地表に溶岩が現れ次第、ORANGE/WARNING に戻すと言っている。

Kilauea Daily Update issued Jun 25, 2007 08:37 HST Volcanic-Alert Level ADVISORY - Aviation Color Code YELLOW
Report prepared by the Hawaiian Volcano Observatory (HVO):

In response to the decrease in volcanic activity at Kilauea, HVO is changing the Volcano Alert Level from ORANGE/WATCH to YELLOW/ADVISORY. A description of the warning schemes and criteria for the different alert levels are available from http://volcanoes.usgs.gov/2006/warnschemes.html. The site includes a link to a USGS Fact Sheet on the subject. Should lava reappear at the surface or levels of volcanic unrest increase, HVO will return to the ORANGE/WARNING alert level.

キラウエアのシナリオ

今後の推移を確率予想してみます。

1)エピソード55の復活(10%)
2)エピソード56の発展(60%)
3)エピソード57   (20%)
4)噴火終了     (10%)

2)はファイヤーカーテンを含みます。その確率は20%程度でしょうか。
4)は、1983年1月2日以来24年続いたキラウエア観測史上最長噴火の終焉を意味します。

Kilauea Information Release issued Jun 21, 2007 18:46 HST Volcanic-Alert Level WATCH - Aviation Color Code ORANGE
Report prepared by the Hawaiian Volcano Observatory (HVO):

Pu`u `O`o activity is paused. There is no active lava visible anywhere on the flow field.

There is no new activity at the site of the June 18/19 eruption.


ハワイ火山観測所

キラウエア・エピソード56

東リフトゾーン上部に生じた新しい割れ目の長さ250メートル区間から、溶岩が地表に流れ出していることを、6月19日(火)の朝7時(ハワイ時間)、ハワイ火山観測所員が確認しました。確認したとき、溶岩はすでに固まっていました。前日1545から1700まで続いた地震頻発のときに流れ出したのだろうと彼らは考えています。

場所は、プウオオの西6キロ、キラウエア山頂の東13キロで、Kane Nui o Hamoと呼ばれるところです。

ハワイ火山観測所は、このイベントにエピソード56を宣言しました。この前のエピソード55は、1997年2月24日に始まったプウオオからの溶岩流出でした。エピソード56の開始によって、エピソード55は数時間以内に終了するだろうとハワイ火山観測所は予想しています。

東リフトゾーンの開口幅は、すでに95センチに達したそうです。

ハワイ火山観測所のページ
update
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ハワイ大学によるキラウエア・エピソードのまとめ

「火山活動度レベル」から「噴火警戒レベル」へ

気象庁は、現在の「火山活動度レベル」の名称を「噴火警戒レベル」に切り替えると、2007年6月7日に発表した。

2003年10月に気象庁が火山活動度レベルを導入したとき、私は、日本の火山のレベルを気象庁が発表することは大歓迎だが、その名前があまりにもわかりにくい。一般に説明するときに使うにはたいへん不適当だと感じた。私は一貫してこの気象庁火山レベルを「危険レベル」と呼んで紹介してきた。たとえばゑれきてる浅間山(2003年12月)。

今回、気象庁自身が「火山活動度レベル」はわかりにくい名前だと認めた。新しい名称として提案された「噴火警戒レベル」はわかりやすく、一般に説明するときにも使える。

しかし別の問題がある。従来、気象庁はみずからが発表する火山情報文の中で、発表文を見た行政や住民が取るべきアクションのガイドとして、「注意」「警戒」「厳重な警戒」という三つの用語を特別のメッセージをもって使用してきた。たとえば2000年の三宅島噴火では、「厳重な警戒」の文字は最後まで火山情報文の中に現れなかった。それは意図して気象庁がしなかったのだと、その後の研究で明らかになっている。気象庁は、そのとき、「厳重な警戒」が必要だと言わないことによってみずからの意思を社会に実現しようとした。

今回、「噴火警戒レベル」と命名したことによって、警戒の文字がどの火山情報でも使われることになってしまった。火山情報の本文中で「警戒」や「厳重な警戒」を使うとき、それに強い行政メッセージを込めるこれまでの手法は、レベルの名前に警戒を入れてしまったことによって使えなくなった。気象庁が発する警戒の二文字が、今後はとても軽く扱われてしまうだろう。

今回の発表文に添えられた別紙にある次の表示にも注目した。

レベル5(避難)
レベル4(避難準備)
レベル3(注意)
レベル2(火口周辺注意)
レベル1(平常)

レベル4は避難準備、レベル5は避難を意味するという。従来のやり方だったなら、ここには警戒の文字が入るが、レベルの名前で警戒の二文字を使ってしまったから、それができなかったのだろう。そこに代わりに避難の二文字を入れたことは、気象庁が火山監視だけに留まっていないで、防災対応まで踏む込むと宣言したことを意味する。火山麓の住民が避難するかしないかを、これからは気象庁長官が決めることになった。

ただし災害対策基本法は、避難勧告と避難指示は市町村長の専権事項だと定めている(60条)。気象庁長官がその判断を実質的にするしくみが今回できたのだから、法律条文にそれを盛り込む改正作業をすみやかに始めなければならない。