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早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

噴火警戒レベルを決める基準がわからない

気象庁は、明日から16火山で噴火警戒レベルを導入する。そして従来の火山活動レベルを廃止するという。火山活動度レベルは、どんな噴火や異常が起こったらどのレベルにするかの基準が各火山ごとに公表されていた。その基準には小さくない問題はあったが、いちおう検証に耐えるシステムだった。たとえば浅間山草津白根山

しかし明日から導入する噴火警戒レベルについて気象庁は、各火山ごとに適用する基準を公表していない。第三者による客観的評価を拒んでいるようにみえる。

火山はひとつ一つ異なる個性をもつ。気象庁は、火山活動度レベルのときと同じように噴火警戒レベルの基準を各火山ごとに公表するべきだ。たとえば浅間山の場合、どんな噴火や異常が発生したらレベル2にするか、レベル3にするか、判断基準をあらかじめ示しておく責任が気象庁にはある。

浅間山火山防災対策連絡会議が29日に開かれた

毎日新聞群馬によると

浅間山(2568メートル)の周辺市町村や群馬、長野両県などが噴火時の対応などを協議する「浅間山火山防災対策連絡会議」が29日、嬬恋村内で開かれた。小・中規模噴火の「噴火警戒レベル3(入山規制)」は火口を中心に半径4キロ以内とした従来の入山規制を状況に応じて以遠に拡大することや道路規制や施設閉鎖を実施することを申し合わせた。

(略)

従来の活動度レベル3では火口から4キロ以内を立ち入り禁止とするだけだったが、噴火警戒レベル3ではこれに加え、状況に応じて4キロ以遠でも道路を一時規制したり、施設を休業する。今後は半径4キロの外周に建設された鬼押ハイウェーや国道146号、観光地の鬼押出し園も対象となり、噴出物を除去し、安全確認後に規制を解除する。

 レベル4(避難準備)と5(避難)についても今後、統一的な対応を検討する。レベル1(平常)の半径500キロ(ママ)規制、2(火口周辺規制)の2キロ規制は変更点はほとんどなかった。


気象庁は、レベル1は平常だから火口縁まで安全だとしたが、防災の権限と責任を法律で負わされた地元自治体はそれでは不十分だと考えて、従来どおり500メートル規制にしたという。ただしこの500メートルは火口中心からの距離だから、火口縁からだと350メートルほどになる。

読売新聞群馬の記事はウェブでは見あたらないが、前橋に配達された紙面には、火山博物館としゃくなげ園は4キロ以内にあるのでレベル3である限り営業しないと決めた、とあった。文面は記憶による。

現行の2003年ハザードマップは、火山博物館を半径4キロ円の外に出している。このマップに虚偽を書いたことを、作成者自身がついに認めたようだ。

早川由紀夫(2006)『浅間山火山防災マップ2003年版』にみられる虚偽。日本地球惑星科学連合2006年大会,幕張,2006.5.15

キラウエア溶岩すくい再び実現か

11月21日午前6時頃(ハワイ時間)、キラウエアの噴火の様子が大きく変わりました。7月21日以来、東へ溶岩流が進んでいましたが、そのチューブシステムが放棄されて、前と同じように溶岩流が南東に進み始めました。東へ伸びたチューブシステムは、高温溶岩の供給が途絶えましたから数日以内に固まってしまうでしょう。南東に進み始めた溶岩は以前と同じように太平洋を目指しています。昨年と同じように今年も年末に、南海岸で溶岩すくいができる期待が高まってきました。

ハワイ火山観測所のページ

噴火警報(4):浅間山の場合

東京新聞が次のように伝えた。

 新設される噴火警報は、人家がある地域で避難や避難準備が必要な時に発表。火口周辺警報は、入山や火口付近への立ち入りを規制すべき時に出す。噴火警戒レベルは、レベル5(避難)とレベル4(避難準備)が噴火警報に、レベル3(入山規制)とレベル2(火口周辺規制)が火口周辺警報にそれぞれ対応。レベル1(平常)は火山活動が静穏で、特に防災行動は必要ないとされる。

 噴火警戒レベルは当面、地元自治体と調整が済んだ全国十六の火山に導入する。関東・中部では浅間山(群馬・長野県境)、草津白根山(群馬県)、富士山(静岡・山梨県境)、伊豆大島(東京都)の四火山で、いずれもレベル1となる見通し。来年度までに九火山を追加する方針だ。


浅間山は2006年9月22日からレベル1だから、12月1日もそのままレベル1とされるのだろう。しかし地元自治体は500メートル規制をしている。12月1日からは火口縁まで無規制だということに、自動的にはならない。

このような記事になったのは新聞社の早合点かもしれないと思って気象庁のページをみた。レベル1の説明には、「特になし(状況に応じて火口内への立入規制等)」とある。火口縁まで行ってよいように読める。新聞社の早合点ではなかった。

火山リスクに対応してどう防災避難行動をとるかは、地元市町村長の専権事項だ。災害対策基本法が明確に定めている(60条)。気象庁が勝手に決めることはできない。

噴火警報(3)

2000年夏の三宅島を考えてみます。補助金団体に成り下がっていた三宅村には自己決定能力と意思がありませんでした。三宅村は完全に東京都の支配下にありました。さて東京都が何をしたかしなかったか。彼らは、気象庁が緊急火山情報を出さないことを理由に(あるいは気象庁に緊急火山情報を出させないよう画策して)、島民を長いこと避難させませんでした。

結局、9月1日にわけのわからない避難指示に至ったわけですが、もしあれが緊急火山情報ではなく噴火警報体制下だったなら、噴火警報なしに避難指示に進むことはできなかったでしょう。8月29日の火砕流をもってしても、社会の圧力が東京都の権力を打ち負かすまでには至らなかったでしょう。

気象庁から噴火警報が出なければ、住民の生活を苦しめる結果になるに決まっている避難指示を首長がみずからの意志と責任で出すとは思われません。噴火警報が出ないことを最大の理由にして住民を日常生活に引き留めるでしょう。噴火警報なしの避難指示は、実社会では不可能だとみます。こんな重大な判断の岐路となる噴火警報を、ひとり気象庁に任せてよいのでしょうか。

緊急地震速報と火山警戒レベルという、ごく一部の新しい仕組みの導入をもってして、地震噴火の情報伝達システムの全体を支える根幹を安易に変更しようとする今回の改正案に私は賛成できません。緊急地震速報は、通信の速度が地震波の速度よりずっと速いことを利用して、地震波の到来を10秒程度前に予測するものです。社会が長いあいだ期待してきた地震予知とはまったく異なるものです。

火山警戒レベルは、すでにある火山活動度レベルの名前を変えただけのものです。現行の火山活動度レベルの中身はたいへんずさんです。たとえば噴石という用語の使い方をみればわかります。このことはすでに述べたことがありますので、ここでは繰り返しません。火山活動度レベルは実際の火山噴火危機で役に立ったことがないどころか、浅間山の2004年噴火では混乱を招いたやっかいものです。火山警戒レベルへの名称変更に伴って、内容が少しは改善されるのでしょうか。

問題の本質を解決したようにはみえないこれら二つを大きく掲げて、地震と火山の警報が出せるくらいまで自分たちが前進したともし主張するなら、それは噴飯物です。

(この文章は10月4日に書きました。そのときここにも掲示しようかと思いましたが、やめました。しかし、やっぱり掲示することにします。本日少し改変しました。)

【“噴火警報(3)”の続きを読む】

三宅島バイクフェスタの知事見通し

石原知事定例記者会見録
平成19(2007)年11月2日(金)


【記者】三宅島のバイクイベントが、いよいよ今月に迫ってきましたけれども、以前から知事は、来年は公道レースをぜひというふうにおっしゃっていましたけれども、メーカー側のほうは、レースというところに…。

【知事】メーカーといったって、たくさんあるのよ。だからね、ホンダがついてこなかったら、ほかでもやれますよ。今度、現に、例えば、レッドブルという世界で流通している清涼飲料水のメーカーがね、協力してくれる。これはですね、あちこちのバイクのイベントにスポンサーになっているところですからね。そのほかに、日本以外のドゥカティとかダビッドソンとか、いっぱいメーカーはありますからね。それはやっぱり競争すればホンダの車は優秀なのかもしらんけども。しかし、どういうんでしょうね、ほかにもメーカーはたくさんありますし、これが充実してくれば、必ず協賛者は出てくると思います。

 それから、やっぱり、この間も村長と話しましたけど、島全体の公道を使うんじゃなくて、ほとんど人の住んでない部分を使ってですね、そのかわり1周、2周じゃなくて、何回も回るみたいな、そういうレースも可能だと思うし、そういう道路の整備、拡幅も、これから考えていこうと思いますから。

 それから、どこかの新聞がケチつけてるけどね。要するに、人が来ないじゃないかという。あの島はね、この間の連休だって、本当に100人も人が、釣り師も行かないような島ですよ。だけど、やっぱり、今度も少なくとも1000人近い人が集まると思いますけども、それだってやっぱり島にとっては画期的なことでね。何か策を講じなかったら。

 私もこの間、三本岳へダイビングに行ってね、ちょっとしけが来たんで、仕方がなしに阿古の港へ入ってね、あの島が初めての人たちを案内して山へ行きましたがね。山どころか、危険地域の、要するに、居住禁止されている地域のすぐ横のところまで、全部木は枯れているの。大きな木は、漂白されている。これはね、災害が起こったときじゃないんですよ。あれから8年近く過ぎて、その間、じわじわじわじわ上からガスが下りてきてね、立ち木が全部枯れちゃった。

 そういう状況の中でね、やっぱり人の住むことそのものがとっても危ないと思うけども、それでもなおみんな頑張っていらっしゃるなら、やっぱり何らかの支援をして、何というのかな、島にお金が落ちるような算段をしないとだめでしょう。

 だから、あなたは反対か賛成か知らんけども、案があったら出してくれ。出してくれよ、案を。いい案があったら、どんどん採用するから。

(略)

【記者】三宅島のバイクフェスタの話に戻ってしまうんですが、先月末で申し込みが締め切られまして、オープニングパレードやツーリングラリーなどに参加するためにバイクを持ち込むという一般ライダーが、当初見込んでいた100人を大きく下回って33人ということなんですけれども、この数字はどのように受けとめていらっしゃいますか。

【知事】さあ、その数字は詳しく聞いていない。もうちょっと何か数が多いんじゃないでしょうか。合わせて、いずれにしろ600~700人の方が来られる訳ですから、それに見合う車が参加するんじゃないかな。ちょっと私、正確な数字を…。

 あ、ラリー等参加バイク台数は約90台です。

【記者】島の人から盛り上がらないのではないかというような、心配する声も上がっていますが。

【知事】やってみなきゃわからない、そんなものは。最初から大成功するものでもないしね。初めての企画ですから。やっぱり年を重ねていくごとに充実してくるでしょう。物事はみんなそうじゃないの。