早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

溶岩すくい まもなく復活か

20080129_DSC03000_L[1]s
USGS HVO

ハワイ火山観測所のページにある写真をみると、ついにロイヤルガーデン分譲地に溶岩が進入し始めたことがわかる。パホイホイ溶岩ではなくアア溶岩だ。アア溶岩が音を立てて前進するのをこの目で見てみたいものだ。この分譲地は20年も前に回りを溶岩に取り囲まれてキプカになったため、いま住人はほとんどいない。

あと2週間もすれば、海岸近くで溶岩すくいが再びできるようになるとみられる。ヒロからパホアを通って東からアプローチするとよい。

噴火警報の安売り

火山のレベル2は噴火警報として伝達される。そのとき気象庁が期待する住民の行動は「通常の生活」だという。それなら警報にする意味がない。噴火予報と呼んだほうがよい。

過去に雲仙岳や三宅島などで長期間継続したことがあるが、レベル2あるいは3の火山の現状を伝える情報を毎日出すことになったとき、それは噴火警報として出されるのだろうか。もしそうなら警報の安売りにつながる。気象庁は、警告をするだけでなく、火山のいまの状態を迅速かつていねいにわかりやすく伝えることもしてほしい。

以前の火山観測情報は、住民に情報をきめこまかく伝えるシステムとして優れていた。しかし今回の改訂で廃止されてしまった。同様のカテゴリーを復活させる必要性を強く感じる。このままでは、警報を毎日出すわけにはいかないから情報の発表回数を減らす、などといったとんまなことがほんとうに起こりそうだ。

内陸の浅い地震に緊急地震速報は無力

reachtime[1]

内陸の浅い地震では緊急火山情報が役に立たないことが、能登半島で今朝起こった地震で実証された。上は気象庁サイトから転載した図である。図をクリックすると気象庁ページが別窓で表示される。赤い星が震源、黄色が震度4だった領域だ。

一番内側にあって緊急地震速報第1報提供時を示す0の円が、黄色い領域をすっかり取り囲んでいる。震源から伝播した主要動がこの地域で震度4の揺れを発生させる前に緊急火山情報を伝達することができなかった事実がよくわかる。この円の外側に、5秒後、10秒後、、のS波の到達位置が同心円で示してある。

内陸の浅い場所で起こった地震の情報を被災地に事前に提供する企ては、どんなに技術革新が進んでも達成できないだろう。震源までの距離が近すぎる。残念なことに、そしてそれは当然のことなのだが、震源に近いところでこそ深刻な被害が生じる。

【“内陸の浅い地震に緊急地震速報は無力”の続きを読む】

不可解な居住禁止処置 三宅島で7年半

三宅村:阿古高濃度地区、一時滞在期間を拡大 /東京
 三宅村は23日、00年の三宅島噴火災害後の火山ガス(二酸化硫黄)の影響で居住を禁止している島南西部の「阿古高濃度地区」について、現在は7、8月に限り認める一時滞在期間を3~8月に拡大する条例改正案を村議会臨時会に提出し、全会一致で可決された。

 同地区はガス濃度の低下が認められたため、村は昨年から夏の2カ月間だけ滞在を認めた。ガスの感受性が高いぜんそく患者や19歳未満の人は対象外で、健康診断を義務づけ、期間中に6世帯12人が滞在を果たした。

 村は昨年12月に開かれた安全確保対策専門家会議を経て、滞在期間の拡大は可能と判断した。今後、もう一つの居住禁止地区である島東部の「坪田高濃度地区」についても一時滞在の是非を検討する。【木村健二】

毎日新聞 2008年1月24日


2000年9月から、もう7年半になる。まだ居住を禁じている地域があるのだという。三宅島に警戒区域は一度も設定されたことはないし、いったん出された避難指示もすでに解除になった。それなのに、自分の土地で寝起きすることができないのだという。自分の土地に住むことを権力によって禁じられるとはどういうことか。自分の土地に住めるかどうかを自分では判断できなくて、他者の決定に従わなければならないとはどういうことか。こういう、基本的人権にかかわることへの恐るべき感度の低さがこの島の空気を圧倒的に支配している。

住まわせない処置に対する補償金が支払われたとは聞かない。噴火直後に全国から集まった義捐金がどう使われたかもわからない。住民にはごく一部しか配分されていないのではなかろうか。

ハワイの火山監視 国と地方自治体の役割分担

アメリカ合衆国地質調査所のハワイ火山観測所は、キラウエア火山の監視をして最新情報を毎朝提供している。きょうのレポートから

Kilauea Daily Update issued Jan 20, 2008 08:22 HST Volcanic-Alert Level WATCH - Aviation Color Code ORANGE

キラウエア毎日更新 2008年1月20日8時22分(ハワイ時間)、災害対応レベル:注意、航空カラーコード:オレンジ。

(略)

Hazard Summary: Based on the information summarized above, there continues to be a threat from lava flows to residents of Royal Gardens subdivision. The rootless shields are a little more than 2 miles uphill of the subdivision and lava is capable of advancing similar distances in a week. Hawai`i County Civil Defense has been notified and is taking appropriate measures.

災害まとめ:上にまとめた情報によると、ロイヤルガーデン分譲地の居住者には、溶岩流による脅威が継続している。(溶岩流を直接供給する)根なしの盾は分譲地の上2マイル強(3.2キロ強)のところにある。溶岩は1週間でその程度の距離を流れる能力をもっている。ハワイ郡の民間防衛はこれを知らされ、適切な処置をとっている。

(略)


災害時において、国と地方自治体がどう役割分担するかのよい見本だ。国は、火山の脅威を定量的かつ具体的にわかりやすく説明するところまでに留まっていて、それにどう対策するかあるいはしないかの判断を地元自治体に任せている。

気象庁活火山リストの歴史

久野活火山時代(1968年~1991年) 77火山
・歴史時代に噴火記録があった火山と噴気および熱異常がある火山を活火山とした。
・久野久がリストをつくったらしい。1979年に噴火した御岳山と1989年に噴火した伊豆東部が(想像される基準からみるとやや奇妙だが)リストに入っていたことは、気象庁の活火山リストの面目を保った。
・休火山の大半が含まれていなかった。
・活火山と休火山の間に線を引いた基準だったといってよいだろう。

2009年3月13日追記
久野久の時代のこととして、次の二つに言及しておくべきだ。
 当時の国際的火山学コミュニティは、Catalog of the Active Volcanoes of the World (CAVW)をもっていた。それは、地域ごとの火山カタログ集として10冊程度にまとめられて刊行された。もちろん英文である。日本部分は久野久によって1962年に書かれた。1968年に気象庁が選んだ77火山は、その日本部分に掲載された火山の数と同じなのだろうとみられる(確認必要)。
 もうひとつ。日本火山学会はBulletin of Volcanic Eruptions (BVE)を英文で毎年刊行していた。これは1990年代まで続いたが、スミソニアンが毎月出していたSEANとの兼ね合いがあったらしく、いまは刊行されていない。SEANはいまの Bulletin of the Global Volcanism Network (BGVN) の前身である。


2000年活火山時代(1991年~2002年) 83火山、86火山
・歴史記録の不完全性と地域的偏差を解消して、2000年間に噴火したかどうかで判断することにした。初めて数値基準が導入された。
・追加された火山:丸山、恵庭岳、倶多楽、十和田湖、榛名山、海徳海山と噴火浅根の分離(1991年2月)。燧ヶ岳、羅臼岳、北福徳堆(1996年)。
・まだ多数の休火山が含まれていなかった。
・中途半端な移行期だった。

1万年活火山時代(2002年~    ) 108火山
・2000年を国際基準の1万年に改めた。
・休火山のほとんどが活火山として登録された。
・追加された火山の例:利尻山、羊蹄山、ニセコ、肘折、沼沢沼、北横岳、利島、御蔵島、阿武、福江、米丸、池田湖。
・漏れた火山:鷲羽池、志賀、(奥日光)三岳、そして従来からの赤城山。
・気象庁判断が疑わしい火山:利尻山、ニセコ、高原山、阿武
・休火山と死火山の間に線を引いたものと理解できる。
・1万年を少し超える昔に噴火した火山の取り扱いが今後の課題として残された。男体山、赤城山、大山。

日本には完新世火山がいくつあるか? (1999年1月稿)

Bulletin of the Global Volcanism Network (BGVN) 【“気象庁活火山リストの歴史”の続きを読む】

休火山と死火山を葬ったのは1960年代の教科書検定

1995年12月4日発行のアエラより、「編集部 内山幸男」の署名記事

○休火山や死火山は死語

 しかし、休火山、死火山という言い方は、今はしない。活火山以外は、「活火山でない火山」という同語反復的な呼び方をする。火山の寿命は人間よりはるかに長い。数百年や数千年活動していなかったからといって、死火山とも休火山ともいいきれないからだ。教科書からは、六〇年代に消えたらしい。

 「地学の方では、六〇年代前半から『やめて』とお願いした」

 と有田忠雄元文部省主任教科書調査官はふり返る。地理の教科書にはその後も残っていたが、それも、六〇年代後半には消えた。

 同じころ、富士火山帯とか那須火山帯とかいった「火山帯」も、教科書から消えた。

 今は、プレート理論に対応した火山フロントという言葉に置きかわっている。


科学と合理性を欠いたひとりの教科書調査官による情緒的な考え方が、教科書検定というシステムを通じて国全体に広まった。そして日本火山学界もマスメディアも、無批判にそれをあと押しした。

そこには、とりあえず活火山に分類しておけば住民の防災意識を向上することができるだろうという安直な考えが透けて見える。活火山の安売りが、結局は住民の防災意識の低下につながることに気づいていない。

火山の噴火リスク評価は、活火山かそうでないかの単純二分法に留まっていてはならない。休火山という概念を使った三分法は、定性的ではあるが二分法よりも一歩進んでいる。これからは、リスクを火山ごとに突き比べて定量評価するレベルに進まなければならない。日本には、すべての火山の噴火リスクを評価できるデータが10年も前から存在する。

日本の火山の最近噴火年代 (1996年12月)
いまから1年以内に噴火する(しない)確率の表 (1996年12月)

【“休火山と死火山を葬ったのは1960年代の教科書検定”の続きを読む】

星の王子さまは死火山も煤をはらう

星の王子さま星の王子さま
(2005/08)
アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ、Antoine De Saint Exup´ery 他

商品詳細を見る

Le Petit Prince, ANTOINE DE SAINT EXUPERY, 1943
星の王子さま、サンテグジュペリ、池澤夏樹・新訳(2005.8.31)、集英社

出発の日の朝、彼は自分の惑星をきちんと片づけた。まず活火山の煤を丁寧に取ってきれいに掃除する。彼のところには2つの活火山があった。朝ご飯を温めたりするのにとても便利だった。死火山も1つあったけれど、彼は「それだってわかるものか!」と考えて、やっぱり掃除した。

「ぼくは火山を3つ持っていて、週に1回は煤をはらいます。火山の1つは活動していないけれど、やっぱり掃除をします。何が起こるかわからないから。」

「火山が3つ。2つは活火山で1つは死火山みたいですが、いつまた噴火するかわかりません」


星の王子さまは、「いつまた噴火するかわかりません」と考えて死火山の煤はらいをした。休火山なら、近いうちにきっと噴火すると思ってもっと念入りに煤はらいをしたにちがいない。

休火山という語は、その火山がもう噴火しないと誤解を与えるから使うべきでないとする論があるが、これは誤っている。休火山という語には、いまは休んでいるだけであって、そのうちむっくりと起き上がって噴火するだろうという予測が含まれている。生きている火山であって、まだ死んでいないと判定しているわけだ。

「休火山の語を使うのはやめて、それらは活火山というべきである」とする指導がわが国で40年ほど前に中央行政として実施された。日本火山学界のほとんどもこの行政に追従して、休火山の語を日本語から消滅させようと企図してきた。「休火山という語は、いまは使われません」と勝手に裁定するひとまでいた。

しかし、休火山の語がもう噴火しないことを意味すると決めつけるのは、国民を愚弄している。池澤夏樹訳の星の王子さまを読んだ日本国民は、休火山が近い将来噴火するのは当たり前で、死火山ですら噴火するかもしれないと覚悟している。

活火山・休火山・死火山の三分類は、火山噴火の危険と火山の寿命を考えるときにたいへんわかりやすい表記法である。休火山という語を使うことによって、火山の寿命は人間の寿命よりずっと長く、短期間のみかけだけではその危険性を正しく判断できないことをうまく伝えることができる。休火山はいま眠っているから静かなだけであって、将来いつかむっくり起き出して激しい噴火をするかもしれないことを教えられて理解できないひとは、いない。

眠っている火山は、その核心部まで立ち入って火山の驚異を存分に楽しむことができる格好の学習対象だ。休火山という語を捨てることは、この機会を捨てることに直結する。火山防災のために格好の教材を利用しないことにつながる。もったいないことだ。

この三分類は日本語だけでなく、フランス語(volcan actif, volcan dormant, volcan eteint)にも、英語(active volcano, dormant volcano, extinct volcano)にも、みられる。長い時間をかけてつくられた文化を背負った語である。日本語は、おそらく明治期に、フランス語か英語を翻訳してつくられたのだろう。この三分類をいま日本で放棄する理由はどこにもない。火山防災のために、むしろ積極的に使うべき語である。

【“星の王子さまは死火山も煤をはらう”の続きを読む】

火口周辺規制を気象庁が決めるのは、おかしい

気象庁の火山ページにある地図には、現在の噴火警報発表状況について、次のように書いてある。

三宅島 (火口周辺危険)
桜島 噴火警戒レベル2 (火口周辺規制)
薩摩硫黄島 噴火警戒レベル2 (火口周辺規制)
口永良部時間 噴火警戒レベル2 (火口周辺規制)
諏訪瀬島 噴火警戒レベル2 (火口周辺規制)


火口周辺危険と火口周辺規制の二種類がある。三宅島は警戒レベルをまだ導入してない火山だから、火口周辺規制ではなく火口周辺危険の記述にとどまるというのが気象庁の説明だ。

火口周辺危険の表記は、よい。しかし火口周辺規制の表記はよくない。この表記だと、規制している主体は気象庁だとしか読めない。警戒レベルを導入した火山についても、火口周辺規制ではなく火口周辺危険と書くべきだ。規制の権限を法律によって付与されているのは地元自治体の長であって、気象庁ではない。この図をみると、あたかも気象庁にその権限があるかのようにみえてしまう。

このような誤解されやすい地図が掲げられるのは、そもそも噴火警戒レベルに付されたキーワードが不適切だからだ。避難、避難準備、規制といった防災対応アクションを意味する語を、気象庁はみずからの発意として使うべきではない。気象庁は、防災対応への口出しをやめ、火山の危険を評価するだけに留まるべきだ。リスク学の言葉で言えば、気象庁がすべきはリスク評価までだ。リスク管理に踏み込んではならない。リスク管理は地元自治体の長が行うと災害対策基本法が明確に規定している。現在の気象庁火山行政は、この法律に抵触している。

キラウエア溶岩がロイヤルガーデンに進入

ハワイ火山観測所が本日午後に出した臨時情報によると、キラウエアの溶岩流がロイヤルガーデンのPrince Avenueをいままさに下ろうとしているそうだ。ロイヤルガーデンは別荘地として開発された地域だが、そのほとんどは、1990年頃にキラウエアからの溶岩流に順次飲み込まれた。しかし一部が埋め残されてキプカになっている。

助かった住宅の所有者のほとんどは、アクセス道がないから居住利用をあきらめているが、1軒のB&Bを含む数軒がいまでも生活しているという。電気も水道もない不便な生活だ。きょうの臨時情報は彼らへの警報の意味がある。

緊急地震速報の原理に誤解

昨年10月1日から気象庁が導入した緊急地震速報の原理は、まだ社会に正しく理解されていないようです。アサヒコムは、きょうのニュース記事の中で次のようにP波とS波の違いで説明してしまっています。

緊急地震速報は、気象庁が昨年10月から発表を始めた。P波と呼ばれる小さな揺れをとらえ、地震の規模や震源地を予測してS波と呼ばれる大きな揺れの数秒~数十秒前に発表する。


この説明は、震源とひとつの観測点しか考察対象にしていません。じっさいは震源と多数の観測点があります。緊急地震速報は、震源に近い観測点が初期微動(P波)を捕らえた事実を、震源から遠い観測点に主要動(S波)が到達する前に知らせようとするものです。S波より先にP波が来る性質よりも、むしろ地震波の速度よりも通信の速度のほうが桁違いに速いことを利用したしくみです。気象庁のページには、次の説明があります。

緊急地震速報は地震の発生直後に、震源に近い地震計でとらえた観測データを解析して震源や地震の規模(マグニチュード)を直ちに推定し、これに基づいて各地での主要動の到達時刻や震度を推定し、可能な限り素早く知らせる情報です。


P波の速度を7キロ/秒、S波の速度を4キロ/秒として、震源から40キロ離れた地点で考えましょう。地震発生から6秒後にP波到達します。得られたデータを5秒かけて解析して緊急地震速報を出します。地震発生から11秒の時点です。しかしこの地点には、その1秒前(地震発生から10秒後)にS波が到達してしまっています。

震源から40キロくらいまでの地点では、緊急地震速報は原理的に間に合わないのです。地震は震源に近いほど大きく揺れますから、都市の直下で起こった地震に緊急地震速報は無力です。震度5以上の揺れを、気象庁が事前に教えてくれるようになったなどと過剰に期待してはいけません。それは誤解です。

いっぽう南海地震のような沖合いに震源をもつ大地震のときには、緊急地震速報が有効です。震源から100キロ離れた地点にS波が到達するのは地震発生から25秒後です。緊急地震速報受信のあとに14秒程度の余裕があります。震源近くの海底に沈められている地震計がとらえるP波情報が防災のために本当に役立つのです。

以上の考察からわかるように、緊急地震速報の原理を、P波をとらえてS波が来る前に速報すると表現するのはたいへん不適切です。この表現には、実現できるはずのない期待を社会にもたせてしまう弊害があります。震源から40キロの地点にS波が到達するのは、P波のわずか4秒後、地震発生から測っても10秒後です。どうやっても、緊急地震速報は間に合いません。

緊急地震速報の本質は、震源に近い観測点でとらえた地震波情報を、震源から100キロ程度はなれた地点に地震波が到達するよりも先に伝えることです。地震波の速度より通信の速度のほうが桁違いに速いことが、これを可能にさせます。

なお、S波より先にP波が来る性質を利用したしくみは、緊急地震速報システムとは別にあります。それはP波センサーといって、数年前からエレベーターなどで実用化されています。これは、ひとつの観測点だけでおこなう地震対策です。

浅間北麓では地震保険がお買い得

地震保険の基本料率は損害保険料率算定機構が定めています。したがって、どの保険会社から購入しても同じ価格です。2007年10月に、この料率の見直しがあって、群馬県は2等地から1等地になりました。保険料が安くなったのです。4等地の東京都とくらべると、1等地の群馬県では約1/3の保険料で同じ補償が得られます。

少し詳しくみてみましょう。木造家屋を考えます。保険金額1000円につき保険期間1年の保険料は、東京都では3.13円ですが、群馬県では1.00円です。つまり群馬県は、東京都と比べると地震に関して3.13倍安全だと日本経済界がみなしていることがわかります。非木造家屋の保険料は木造家屋の半額ですから、群馬県と東京都の比率は変わりません。やはり3.13倍違います。

さて、保険業界は地震と噴火の区別をしません。噴火による損害も地震保険でカバーされます。最近1000年間の日本では噴火災害よりも地震災害のほうがはるかに深刻でしたから、地震保険の基本料率は地震被害だけで決められています。しかし、浅間北麓は地震災害より噴火災害に対してはるかに脆弱です。1783年噴火で壊滅的打撃を受けた地域や、1108年噴火で壊滅的打撃を受けた地域が広く存在します。

再び木造家屋で考えます。群馬県の保険料率は保険金額1000円につき保険期間1年で1.00円です。したがって、1000年に1回被害を受けるとモトがとれます。1783年は225年前です。1108年は900年前です。こういった地域は、いま地震保険に加入すると十分モトがとれそうにみえます。地質図で、オレンジまたは黄色に着色されている225年前に被災した地域と、黄緑色に着色されている900年前に被災した地域は地震保険に加入するとお得だと思われます。非木造家屋だと保険料は半額ですから、2000年に1回の被災でモトがとれるわけです。これはかなりお得です。

geomap640[1]

浅間北麓に別荘をお持ちのかたは、いますぐ地震保険に加入することを勧めます。地震保険は火災保険のオプションとして加入できると聞いています。

浅間南麓は長野県です。長野県は2等地ですから保険料が群馬県より27%増しになります。900年前の追分火砕流の上に建っている住宅は、それでもお得だと思いますので、地震保険への加入をぜひご検討ください。

防災行動の指示は市町村長が出す

 

宮崎日日新聞2007年12月25日社説より

気象庁は今月から噴火警報・警戒レベルの発表を始めた。これまでは火山活動についての状況を5段階に分けて危険度を表示するだけで、各段階で住民や登山者らがどういう行動を取ったらいいかは示していなかった。しかしこれからは危険度に応じた防災行動が明確に分かるようになった。


この社説は、今回の改訂で、住民がとるべき防災行動を気象庁が指し示してくれるようになったと読める。しかし、実際はそうでない。気象庁は行政がとるべき対応を例示するだけである。どの地域にどんな対応をとるかは地元自治体が決める。ここでいう地元自治体は、都道府県ではなく、市町村をいう。避難の勧告や警戒区域の設定は市町村長の専権事項であることが、災害対策基本法で定められている。

市町村長は、気象庁が発表する噴火警報を参考にして、みずからが適切だと考える対応をとる、あるいはとらない。この権限は責任と裏腹の関係にある。気象庁が対応の内容を具体的に示してくれるからそれに従えばよいと受身の姿勢でいては、ならない。そこでは、主体的にもの考える力が求められている。問題解決能力が試される。政治家にとって力量の発揮しどころだ。地元の特殊事情によっては、気象庁が指し示した例示とは異なる災害対応をとるのが望ましいと考えられる場合もあろう。本当にそうなら、そうしてよい。

噴火警報・警戒レベルの発表で、自治体が違ってもどんな防災行動を取るべきかの共通認識を持つことができるようになった。


いや、対象火山との位置関係によって、自治体がとるべき防災行動はそれぞれ異なる。火山から5キロしか離れていない自治体の防災対応と50キロ離れた自治体の防災対応が同じだったら、それはむしろおかしい。火山周辺の自治体は情報交換を密にして互いに助け合うことが必要だが、防災対応を横並びにすることにこだわってはならない。各自治体は、それぞれリスクに応じた適切な対応をとることが求められる。その対応は、自治体の地理条件・社会条件によって異なるであろう。ここでも主体的にものを考える力が必要となる。

FC2Ad