裁判は、いまの日本では、非日常的なものであり、特別なひとだけが関わるものだとみなされているようです。しかし私は、そうではないはずだと思うし、裁判が日本でもっと身近なものになるのがよいと考えています。このたび、裁判を初めて経験したので報告します。被告ではなく原告でした。
昨年(2008年)7月に交通事故にあいました。センターラインが貫通する優先道路を走行中、左から飛び出してきた車に衝突されました。私の車の損傷はひどくて廃車になりました。相手方保険会社の査定によると私の車の価値は60万円余でした。相手も廃車になったようで、その価値は30万円くらいだったそうです。相手方保険会社の主張は、類例によって9対1の過失割合で損失補償するというものでした。私に1割の過失があったので損失額全体の1割を負担しろとの主張でした。
私は自分に過失があったと考えていません。私にはあの事故を防ぐすべがひとつもなかったと考えます。そして、損失全額を相手に負担してほしいという要求を掲げて、裁判を申し出ました。争う金額が140万円以下なので、簡易裁判所で損害賠償請求事件として扱ってもらうことになりました。裁判にかかる弁護士費用その他は私の保険会社から150万円まで出る契約になっていましたから、私に費用負担は発生しません。
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気象庁が17日に発表した
那須岳の噴火警戒レベル表には、重大な誤記がある。書き手と読み手のコミュニケーション不全が発生している。それは、また「噴石」の使い方だ。1センチの噴石が4キロの地点に降ったとき、那須岳のレベル表をそのまま適用するとレベル5になる。しかし、記述の精神を透かし読むと、その程度の危険を気象庁はレベル3としたいらしい。
レベル5とレベル4の説明文中の「噴石」を「大きな噴石」に書き改めれば、この困難は微視的には解決できる。しかし、同時に発表された4火山のうち、那須岳と箱根山では注で「大きな噴石」を定義しているのに、安達太良山と磐梯山では注で「噴石」を定義している。どちらも意味はまったく同じで、「主として風の影響を受けずに弾道を描いて飛散するもの」だという。
すくなくとも、
同時に発表したレベル表では「主として風の影響を受けずに弾道を描いて飛散するもの」を何と呼ぶか統一してほしかった。本当は、気象庁全体で統一すべきであるのは言うまでもない。しかし気象庁は、部署と時によって「噴石」の意味を異なって使う。そもそも、注記説明しなければならないような用語法を採用していること自体が、防災情報提供機関として欠格であることを証明してしまっている。
「主として風の影響を受けずに弾道を描いて飛散するもの」には、「噴石」ではない別の独立した言葉を当てるべきである。その言葉として最有力なのが「火山弾」である。
気象庁が最近出した噴火警報は、桜島の火山弾と火砕流の危険に対して警戒が必要な範囲を次のように規定しています。
噴火警報(火口周辺)(桜島)平成21年2月19日15時00分
<桜島に火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)を発表>
今後、昭和火口及び南岳山頂火口から1km程度の範囲に影響を及ぼす噴火は発生すると予想されますので、これらの火口周辺では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒が必要です。
噴火警報(火口周辺)(桜島)平成21年3月2日10時30分
<桜島に火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)を発表>
昭和火口及び南岳山頂火口から2km程度の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒が必要です。
噴火警報(火口周辺)(桜島)平成21年3月10日07時10分
昭和火口及び南岳山頂火口から2kmを超えた居住地域近くまでの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒が必要です。
桜島に住んでいる人の避難にかかわる判断は鹿児島市長の専権事項だが、桜島の南岸を回る国道224号の管理責任は国土交通省にある。国道224号は昭和火口から3.0キロの位置を通過する。昭和火口から火山弾が飛んだり火砕流が発生した場合、その地点付近を通行中の車に甚大な損傷がありうることは想像にかたくない。しかし国土交通省は国道224号を通行止めにすることはしないようだ。
浅間山の場合、山頂火口から4.2キロ付近に円弧を描く鬼押ハイウェイが本年2月1日から3日まで通行止めになった。鬼押ハイウェイは有料私道である。国道224号は昭和火口から3.0キロと近いから、桜島が活発化したにもかかわらずその通行を許す扱いは浅間山と比べると大胆不敵のように私には思える。10日5時22分の爆発のあと、一日二日の通行止め処置をしてもよかったのではないか。
2007年12月1日の
気象業務法改正によって、気象庁長官の許可なく火山の予報を反復継続して公にすることができなくなりました(17条)。火山の警報については、気象庁以外が公にすることが一切できなくなりました(23条)。
てるみつさんの2009/3/10 15:43発言は、改正された気象業務法に抵触していると思います。過去の事実の評価だけでなく、具体的な未来予測に立ち入っていますから。なお私は、てるみつさんの2009/3/10 15:43発言のような文章をインターネットブログに載せるなと言っているのではありません。現行法に照らして違法適法を判断しただけです。悪法にどう対処するかについては、いろいろな考えがあるだろうと思います。
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気象庁はきょう、桜島でも噴火警報の切替えをしたと発表した。どうやら、気象庁がいう切替えとは、同じレベルの中でも危険度を微妙に上げ下げすることを意味するらしい。これは、日本語文化圏の人にとって、けっして自明のことではない。気象庁は説明責任を果たしていないと私は考える。そもそも切替えと言っただけでは、危険が増したか減じたかが伝わらない。これは不完全な情報発信である。
火山名 桜島 噴火警報(火口周辺)
平成21年3月10日07時10分 福岡管区気象台・鹿児島地方気象台
**(見出し)**
<桜島に火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)を切替え>
火口から居住地域近くまでの範囲で警戒が必要。
<噴火警戒レベル3(入山規制)が継続>
**(本 文)**
1.火山活動の状況及び予報警報事項
桜島の昭和火口で、本日(10日)05時22分に爆発的噴火が発生し、弾道を描いて飛散する大きな噴石が2合目(昭和火口より2km付近)まで達しました。
桜島の噴火活動は活発化する恐れがあり、火口から居住地域近くまでの範囲で弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒が必要です。
(以下略)
じっさい、きょうの切替えは危険度が上昇したことを気象庁は伝えたかったのだろうと想像するが、それは自明なことではない。上の情報文には危険度が上昇したことが明示的に書いてない。
一方、2月3日の浅間山の切替えは危険度が低下したことを伝えたかったのだろう。これもそうは明記してなかった。2月3日から浅間山の危険度が少しだけ低下したと気象庁が判断を「切替え」たと理解できた人は、私を含めてほとんどいなかっただろうと推察される。
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気象庁地震火山部が6日16時に発表した「
火山の状況に関する解説情報 第4号」の中に次の記述がある。
1.火山活動の状況及び予報警報事項
浅間山では、2月1日に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げました。その後、2月3日に噴火警報を切替え、噴火警戒レベル3(入山規制)を継続しています。
2月1日に気象庁が浅間山のレベルを2から3に引き上げた事実は広く報道されたのでよく知られている。3日に噴火警報を切替えたというのを私は、新聞記事で目にした記憶がある。そのときは意味がわからなかったが、新聞記者が生半可な理解で書いたのだろうと思って放置していた。しかし気象庁が本当にそうアナウンスしたのだと、きょう確認することができた。これはいったいどういう意味なのだろうか。気象庁は「切替え」という言葉で何を伝えようと意図したのだろうか。同じ文の後ろでレベル3継続と書いているから、私には意図がまったく読み取れない。読み取れないのは私だけではないだろう。
2月3日に気象庁は、浅間山の危険が増したと伝えたかったのか(そうではないだろう)、減ったと伝えたかったのか、それとも変化なし(現状維持)と伝えたかったのか。日本語をそのまま読むと、ひとつの文の中で矛盾しているので理解不能である。
広辞苑によると、
切り替える
(1)今までのに取りかえて別のにする。新しくする。「スイッチを―・える」「頭を―・える」
(2)両替する。兌換する。
気象庁は、防災官庁であることを自認するなら、防災情報を伝える際に独自の言葉遣いを用いることを徹底的に避けるべきだ。防災のために気象庁ができることは日本語による情報提供だけなのだから、気象庁は平易なことばでわかりやすく情報を伝達することに熱心に努めなければならない。いまの気象庁にはそういった意識・配慮が欠落している。これは現場担当者の問題ではなく、指導層の意識の問題だ。「噴石」については、もはや手がつけられない状態に陥ってしまった。
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