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早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

桜島では、噴石は64ミリ以上に限られていた

鹿児島地方気象台が平成12年(2000年)10月10日10時に発表した定期火山情報第10号に付された参考資料に次の記述があります。

[参考資料]

降灰と噴石について

 火山が噴火したときの噴出物には、噴煙、降灰、噴石、溶岩があります。そのうち、降灰と噴石の種類について紹介します。
 降灰現象時の降下物には、火山灰と火山礫があります。この2つは下表のように粒の大きさにより分類しています。

 表1.降灰の種類
 大きさ     種類
 直径2mm未満   火山灰
 直径2~64mm   火山礫

 気象台では、毎日9時に前24時間の1㎡あたりの降灰量(重さ)を測定してその日の降灰量としています。大噴火の際には、火山灰がおびただしく積もることもあり、そのような場合には積もった厚さを測定することもあります。
 噴石については、その大きさにより下表のように分類して表現しています。

 表2.噴石の大きさ
 噴石の大きさ  表現の方法
 6~10cm     こぶし大
 10~30cm    人頭大
 0.5~1m     半身大
 1.5~2m     人身大
 3m以上     巨大

 噴石は火山岩塊ともいい、そのうち特定の形をしたものを火山弾と呼ぶこともあります。また、黒色の多孔質(穴の多い)のものを岩滓(がんさい)またはスコリア、白色の多孔質のものを軽石と呼ぶこともあります。
 気象台では、桜島の爆発時には、飛散した噴石の量(少量、中量、多量)と、飛散した範囲(山の合目で表現)を目視や遠望カメラによって観測しています。
 噴石の大きいものはほとんど風の影響を受けずに飛散します。水平到達距離は通常火口から1~2km程度ですが、強い噴火では数km程度まで飛散することがあります。小さい噴石や降灰は風の影響を受けて風下に流れることが多く、高い噴煙が上がった場合や風が非常に強い場合に降灰は数十kmまで飛散して、自動車の窓ガラスを破損したり、交通障害や家屋・農作物に被害を与えることがあります。


2000年10月の時点で、鹿児島地方気象台は64ミリ以下の粒子を噴石とは呼ばず、火山礫と呼んでいた事実が確認できました。しかし同じ年の8月、気象庁本庁は三宅島の噴火で火山礫サイズの粒子まで噴石と呼ぶと宣言してしまったのでした。

気象庁本庁は、噴石の定義を2000年10月の鹿児島地方気象台に戻すべきです。そして、泥まみれになってしまった噴石の語を使うのはもう断念して、次のように記述するのがよい。

大きな噴石 → 火山弾
小さな噴石 → 火山れき

火山弾と呼ぶとき専門家は形態にこだわりますが、このさい防災情報をわかりやすく正確に伝達するために専門家の定義を変更して、火山弾を形態によらず空中を飛行した64ミリ以上のすべての粒子を呼ぶことにするのがよい。

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嬬恋村の怪 草津白根山の噴火予報に含まれず


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きょうの草津白根山噴火予報の対象市町村に嬬恋村がないのは、政治的判断それとも単に失念しただけ?もしかして噴火警戒レベル表も、万座温泉の存在を忘れたままつくった?まさか。

火山名 草津白根山 噴火予報
平成21年4月10日14時00分 気象庁地震火山部

**(見出し)**

<草津白根山に噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)を切替え>
 山頂火口から概ね500mの範囲に影響を及ぼすごく小規模な火山灰等の噴出の可能性
<噴火警戒レベル1(平常)が継続>

**(本 文)**
1.火山活動の状況及び予報警報事項
 草津白根山では、昨年7月から湯釜火口内の北壁に局所的な高温部分が確認され、また、水釜火口の北から北東側にあたる斜面で新たな噴気が確認されるなど、熱活動の高まった状態が現在も継続しています。
 今後、山頂火口から概ね500mの範囲に影響を及ぼすごく小規模な火山灰等の噴出の可能性があります。

2.対象市町村等
群馬県:草津町


3.防災上の警戒事項等
 山頂から概ね500mの範囲ではごく小規模な火山灰等の噴出に警戒が必要です。
 また、ところどころで火山ガスの噴出が見られます。周辺の窪地や谷地形などでは高濃度の火山ガスが滞留する事がありますので、注意が必要です。

<噴火警戒レベル1(平常)が継続>

**(参考:噴火警戒レベルの説明)**
省略

噴煙4キロ上昇、火砕流1キロ流下 桜島

火山名 桜島 火山の状況に関する解説情報 第33号
平成21年4月9日16時05分 福岡管区気象台・鹿児島地方気象台

**(本 文)**
<火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)が継続>

1.火山活動の状況
 昭和火口では、本日(9日)15時31分に爆発的噴火が発生し、火砕流が火口から東側へ約1km流下したのを確認しました。噴煙の高さは火口縁上4000m以上で南西へ流れました。また、弾道を描いて飛散する大きな噴石が4合目(昭和火口より800から1300m)まで達しました。

2.防災上の警戒事項等
 昭和火口及び南岳山頂火口から2kmを超えた居住地域近くまでの範囲では、大きな噴石及び火砕流に警戒が必要です。
 風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石(火山れき)に注意が必要です。
 降雨時には土石流に注意が必要です。

 次の火山の状況に関する解説情報は、10日(金)16時頃に発表の予定です。
 なお、火山活動の状況に変化があった場合には、随時お知らせします。

<火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)が継続>

イタリアの地震予報

6日のイタリアの地震は予知できていたが、パニックを理由に当局が学者の発言を封じていたと日本では報道されています。わたしはイタリアの原報道にあたっていませんが、まずはっきりさせなければならないことは、本当に予知できていたのか、です。予報と地震が偶然近接しただけではないことを立証する必要があります。それには、予報のもとになった観測データを詳しく見ることが不可欠です。ラドンだけなのか。地震計や電磁気も使ったのか。

毎日新聞によると、地震予報は2月にあったという。その学者が発生時期をどのように発表したのかも気になるところです。

観測データに変化があっても、「必ずそこで地震が起こるという明確な関係がなければ役に立たない」という報道がありますが、これは誤った考えです。もし1年365日のうち10日だけ警告をある限られた地域に発して、そのうち1日で死者が出る地震が起こるなら、社会はコストを払ってそれを採用するべきです。社会に役立つシステムだと言えます。しかし、そのようなシステムは、残念ながら、いまは存在しないようです。

ひさしぶりに南岳山頂火口から 桜島

桜島の12時26分火山灰放出は(山腹の)昭和火口からではなく、ひさしぶりに南岳山頂火口内からだった。南岳山頂火口から噴火したことの意味はわからないが、変わったことがあったので格別に注意したい。→噴火に関する火山観測報(気象庁)

桜島の危険度が2倍に

気象庁は、桜島の危険レベルを3だとアナウンスしているが、レベル3の中にも高低がある。気象庁がその高低をいまどうみているかを、情報発表の頻度で推し量ることができる。

火山の状況に関する解説情報についてみてみよう。

25号 3月27日16時00分 次は30日16時
26号 3月30日16時00分 次は3日16時
27号 4月2日16時00分 次は3日16時
28号 4月3日10時50分 次は3日16時
29号 4月3日16時00分 次は6日16時


気象庁は、3月30日までは毎週2回、月曜日16時と金曜日16時に発表していた。しかし今週は、月曜日、木曜日、金曜日(2回)の合計4回発表した。27号と28号が、いわば臨時である。

単純に考えて、桜島の危険度が2倍に上昇したと気象庁がみたと解釈できる。週後半の発表頻度増加を重要視すれば、危険度の上昇は2倍を超えるとみることもできる。ただしきのう金曜日16時の定例発表の末尾に、次回発表予定は月曜日16時にすると、これまでの頻度を維持すると書いているから、この危険度の上昇は一過性のものであり、まもなく終了するだろうと気象庁はみていると判断する。

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桜島では火山れき

気象庁の週間火山概況より

桜島では、昭和火口及び南岳山頂火口から2kmを超えた居住地域近くまでの範囲では、噴火に伴う大きな噴石及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき4))に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。

3)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。


気象庁が小さな石まで噴石と呼ぶことにしたのは、てっきり桜島で言い習わされたからだろうと想像していたが、そうではなかった。桜島では火山れきと呼んでいたのだという。

浅間山では、火山弾に限って噴石と呼んでいた。小石まで噴石と呼んでいた火山現場はなかったようにみえる。小石まで噴石と呼ぶ用語法は、大手町の少数幹部が現場の意見を聞かずに、現場の習慣を無視して決めたことなのだ。はげしく迷惑なことだ。

小石の落下も災害を引き起こすから噴石と呼んで注意喚起したいという意図だったようだが、1センチの小石が車のフロントガラスを割る被害も、1メートルの火山弾が地面に大穴をあける被害も、いまの気象庁の用語法ではどちらも同じ噴石の被害だと記述される。災害に強弱があることが忘れられている。

英語では、64ミリ以上をblocksといい、64ミリ以下2ミリ以上をlapilliという。火山れきはlapilliの和訳である。Blocksの和訳は岩塊(がんかい)だが、音を聞いただけではわかりにくいので、火山専門家として私が普及講演するときには火山弾あるいはブロックと言い換える。

浅間火山博物館の営業休止

浅間火山博物館からのお知らせ

浅間山の火山活動に伴う営業休止のお知らせ

浅間火山博物館及び浅間記念館(二輪車展示館)は、浅間山の噴火警戒レベルに伴う、入山規制中のため、冬期休業に引き続き、平成21年4月以降も営業をお休みいたします。

また、4月以降のご予約につきましても、噴火警戒レベルが下がらない場合は、営業を再開できませんので、ご了承くださいますようお願い申し上げます。

お問い合わせは下記までお願いします。

TEL 0279-86-
FAX 0279-86-


長野原町は、気象庁が定める浅間山の危険レベルが3である限り火山博物館を営業しないことを決めたように読める。レベル3のときの警戒区域から火山博物館を外す防災対応もできたのだが、そして実際にそうしようと努力した気配があったが、最終的にはそうすることを断念してレベル3では火山博物館を営業しない選択をしたようだった。その判断が、冬季休業を終えた4月1日からの営業開始日を迎えて、実行に移されたとみられる。

IMG_3322.jpg 4月6日

2004年9月にインターネットで意見を述べ、新聞記事になり、2年後の2006年5月に千葉市幕張でおこなわれた日本地球惑星科学連合大会で口頭発表して私が指摘したのは、浅間火山博物館が山頂火口を中心とする4キロ円の内側にあるにもかかわらず、ハザードマップでは4キロ円の外側に表示されている虚偽についてだった。私は国と地方自治体が共同で作成したハザードマップに重大な意図的不正があることを指摘したのであって、気象庁が決めたレベル3のときに浅間火山博物館が営業してはいけないと述べたのではない。

気象庁が定めるレベル3の中にも危険度の高低がある。実際、2009年2月1日から3日までは4キロ円の外側でも警戒体制が敷かれた。鬼押ハイウェイは通行止めになった。

これとは逆にレベル3であっても危険度が十分低ければ、火山博物館と浅間園を営業することによって得られるメリットがリスクを上回るときもあろう。入園料による収益だけを言っているのではない。浅間山を現地で学んで地域の火山文化を向上させ、ひいては防災力を高めることを言っているのだ。

レベル3のときは4キロまで、と決めたのは長野原町自分自身だ。レベル3でも危険度が低いときには火山博物館と浅間園を営業しようとするとき、誰の許可もいらない。警戒区域から外すと自分自身で決めればできることだ。しかし長野原町は、独力でこのような細かい防災対応システムを構築することをあっさりとあきらめて、浅間山の火山防災にかかわるすべての権限と判断を気象庁に差し出してしまった。住民自治の死である。

浅間山で現在おこなわれている防災対応をよく観察すると、これはもはや災害対策基本法に基づいているとは言えない。浅間山にいま設けられている立入規制が、災害対策基本法63条が定める警戒区域だとみることはもうむずかしい。現在の立入規制は、気象業務法13条が定める噴火警報によって気象庁が設定しているとみるべきだ。気象業務法13条には、災害対策基本法63条と違って罰則規定がない。

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三宅島2009年4月1日噴火は200トン

きのう4月1日16時17分に三宅島が11ヶ月ぶりに噴火したと気象庁が伝えました。気象庁は情報を次のように発表しました。噴火から9分後の16時26分に噴火に関する火山観測報を発表して、有色噴煙が火口の上600メートルまで上昇したことを速報しました。続いて17時20分に火山の状況に関する解説情報を発表して、噴火が2008年5月8日以来であると評価した上で、防災上の警戒事項を書き添えました。

最後に19時30分に、5ページからなる火山活動解説資料を発表しました。この中には、遠望カメラによる噴火時の画像、積灰を確認した地点を記した地図、積灰写真、地震計の記録、2001年以降の噴火リストが含まれています。

きのうの気象庁は、有意義な情報を短時間で発表したと思います。ただしプロフェッショナルの仕事なら、積灰の量を「車のボンネット一面に確認できる程度の量」とあいまいに表現するのではなく、試料を持ち帰ってただちに秤量して単位面積あたりの重量を数値で発表してほしい。

残念ながら単位面積あたりの重量は報告されていませんが、三池浜の積灰写真が公開されています。これを浅間山火山灰の写真と比較して、10g/m2程度だと見積もりましょう。三池浜は火口から3.1キロの距離にありますから、この積灰量が1.5平方キロの面積を囲むと仮定します。経験に基づいてその積を12倍します。これによって、4月1日の噴火で火口から噴出した固形物質の全量は200トン程度だったと評価できます。噴火マグニチュードでいうと-1.7です。4月1日の噴火は、10メートル四方、厚さ1メートルの岩石が粉々になって火口から飛び出した爆発だったと理解されます。