(2010年)
7月10日 噴火
(2011年)
1月19日 噴火。日南に積灰。
1月20日
1月21日 噴火
1月22日 噴火
1月23日
1月24日
1月25日
▼1月26日
0731 連続的な火山灰放出 6000トン
1458 コックステイルジェット
1514 東へ火砕流1キロくらい
1600-1850 準プリニー式噴火7500m(2時間50分)軽石放出、900万トン
1610 「こりゃ、だめかもしれんね」
1620 高原町災害対策本部設置
1800 気象庁レベル3
▼1月27日
0210-0440 準プリニー式噴火7500m(2時間30分)700万トン
1541 ブルカノ式爆発 20万トン
1630-1740 準プリニー式噴火高さ不明(1時間10分)300万トン
▼1月28日
0600-0800 南鳥島(2400キロ)で大気異常
1036 モクモク出口が西に移動 5万トン
火口底に新溶岩が出現。以後900 760万トン/日のペース。
1247 ブルカノ式爆発 10万トン、明るい火映
1月29日 20万トン、明るい火映、灰噴火の日
1月30日 10万トン、明るい火映、2535気象庁警報切り替え2キロを3キロに、2350高原町避難勧告1158人のうち518人避難。
1月31日 5万トン。12時に新溶岩の頭が大浪池カメラに写る。夕刻になると噴煙がほとんど収まった。明るい火映
・1月の噴出量は、軽石・火山灰2000万トン、溶岩3150 2700万トン。合計5150 4700万トン。噴火マグニチュードM3.7
・江戸時代1716年噴火は1億6000万トン(M4.2)だった。ただし軽石・火山灰のみ。火口内を埋めた溶岩湖は含めてない。
・火口容積の見積もりが過大だった。85%にして再計算した。2.07.2240
火山噴火による建物や家財の被害は、地震保険でカバーされます。地震保険は、火災保険の特約として購入します。最寄の損保にお問い合わせください。自動車保険では、火山噴火は免責されています。車に被害をうけても補償されません。
地震保険料率は都道府県ごとに決まっています。宮崎県は2等地ですから、保険金額1000円当たり1年につき1.27円です。木造の場合です。鹿児島県は1等地ですから1.00円です。

「
霧島火山防災マップ」から、「新燃岳が火口となった場合」の図を抜き出した。黄色が火砕流の危険が及ぶ範囲。
噴火予報・警報 第2号(抜粋)
火山名 霧島山(新燃岳) 噴火警報(火口周辺)
平成23年1月31日01時35分 福岡管区気象台・鹿児島地方気象台
新燃岳火口から概ね3kmの範囲で火砕流に警戒が必要。

(左)だいち1月30日。(右)2万5000分の1地形図。クリックで拡大する。
新溶岩湖火口の西に寄っている(1月29日撮影のだいち画像では東に寄っていた)。1300m等高線とほぼ一致する。

南東から鳥瞰した新燃岳。オレンジで着色した部分が新溶岩。火口縁は北西方向が一番低い。その地点の標高は1352mである。火口内を満たした溶岩は、そこからあふれ出して、初め北西斜面を下る。谷に達すると、向きを南に変えて谷筋に沿って流れ下る。もちろん、途中で供給が途絶えれば止まる。

西← →東
1月31日12時の火口断面。オレンジ色が新溶岩。赤色が火道。@hugujoが作成してすぐ出かけたので、私が汚いペンで加筆修正した。いまのペース(900万トン/日)が続けば、新溶岩は2月3日に火口内空間をすべて埋め立てる。
言い訳と解説:この断面図は31日1839に作成した。使えた時間が限られていたため、地図師@hugujoと私の意思疎通は不十分だった。オレンジ色新溶岩の頂上の高さはこれでよいが、上面をもっとフラットに作図すべきだった。直径500mという30日情報に引きずられた。東西にもっと広げて直径600mにするべきだった。火口の直径は700m(1日0745)

描き直しました。1月31日12時の新燃火口です。埋め立てた新溶岩は、まだマグマと言ってもよいくらい高温を保っています。火口壁と大気に接触したところだけ温度が下がって固化していますが、内部は融けています。(1日1710)

(左)空から見た新溶岩。共同通信社1月31日撮影。新燃岳では、1716年噴火のときも火口内を新溶岩が満たした。クリックで拡大する。
(右)2004年9月17日、浅間山頂火口内に現れた溶岩湖(読売新聞社撮影)。よく似ている。どちらも同心円状のしわが表面にみえる。クリックで拡大する。

31日1817(読売新聞)
【“1月31日 山頂火口内を静かに埋め立てる新溶岩”の続きを読む】
火口内にはいま溶岩湖がある。その深さは50m、直径500m。2000万トン。これが過去3晩赤く輝いて、まばゆいばかりの火映をつくり出した。
楽観的なシナリオを思いついた。溶岩湖が火口内を満たし、火口縁からこぼれだす。北西が一番低い。そこから溶岩がゆっくりと流れ出す。溶岩はみやま荘をへて、霧島小学校に向かう。
人工衛星「だいち」が1月30日に撮影した溶岩湖の外形は標高1300mの等高線に一致する。
北西縁の高さは1355mだ。毎日のマグマ注入量を250万m3と仮定して、あふれ出す日時を計算した。3日後、つまり2月3日の朝だ。6日後、つまり2月5日だ。ただしこれはとても粗い計算である。だれか別の人が火口内の詳細地形図をよく読んで再計算してほしい。1日900万トン出ている。28日正午からはじまったとみる。1350mまでを5400万トンの溶岩で埋め立てるのに6日かかる。2月3日正午だ。最低点は1352mだし、少しは上に膨らむだろうから、あふれ出しは2月3日の夜になろうか。(1425)
悲観的なシナリオを出すタイミングは、いまだろう。火口の真上に高さ20キロか30キロの噴煙の柱が直立する。風下の広い範囲に大量の軽石が降る。それは数時間継続する。プリニー式というタイプの噴火だ。26日16時、27日02時と16時に、すでに3回小さなそれが起こった。
そのときの高さは7キロだった。もし20キロも30キロも高い噴煙の柱が立つと、柱の基部から火砕流が全方向の谷筋を流れ下る。防災マップに赤で表示してあるように8キロくらい流れる。
噴煙の柱が立ち上がってから逃げるのでは間に合わない。悪いことに、この柱がいつ立ち上がるかは予測できない。
楽観的シナリオになるか悲観的シナリオになるか、現時点では判断がつかない。

@salixintegra さんがカシミール3Dを使って測った面積に10mをかけて積算しました。(この表の数字は15%増しのようだ)
1016 Hi-netに地震
1357 ブルカノ式爆発(新燃岳南西最大振幅:82.9mkine 湯之野空振計:21.7Pa)
井村隆介による現地調査

都城市夏尾

御池
レーダーエコー
0655から付いたり消えたり、0910まで。小さい。白と水色のみ。その後なし。

霧島山新燃岳を中心とした10km地図、60km地図(@hugujo作成)
「このままでは終わらない。終わるわけがない」 そう言ってるように聞こえた。東大地震研究所のページに掲げられた「溶岩ドーム」の写真を見た第一印象だ。
何かが始まるんだと思う。
何が始まるかわからないが、何かが始まるのがわかる。こういうことってあるのだろうか。科学的に説明できるのだろうか。

(左)2010年11月5日未明、インドネシアのムラピ火山で火砕流が18キロ走って200人を飲み込んだ。その前夜、山頂に現れた溶岩ドーム。不気味としかいいようがない。
(右)きのう28日、新燃岳山頂火口の中心に鎮座しているのがみつかった溶岩ドーム。地面をめくり上げて顔を出した。同じように不気味だ。

本日未明、この溶岩ドームも真っ赤に輝いて火口上空の雲を明るく照らした。これを火映という。溶岩ドームが火口底から高く突き出たのだろう。その成長はいまも続いているはずだ。
より大きな地図で 霧島山新燃岳2011年1月噴火 を表示・紫色部分が、火砕流と熱風が到達する心配がある領域。「霧島火山防災マップ」から模写した。
・1月30日までの噴出量は2000万トン。噴火マグニチュードでいうとM3.3。福岡管区27日調査、井村隆介30日調査のデータから、1cm等厚線が囲む面積を200km2と見積もった。
ざっくりいって、1世紀に日本で5回くらいしか起こらない大噴火。つまり日本人が、一生のうちに2-3度しか経験しない噴火。それが自分の近くで起こったひとは、たいへんだ。
いったん目覚めた火山が噴火をいつまで続けるか、わからない。場合による。いまの(いや、まだ獲得してないかもしれない。これから獲得するだろう)緊迫感は、最低限2週間維持することが必要。実質的終息までには、ふつう数ヵ月かかる。数年かかることもある。
おとといきのうが最悪だった必然性はない。これからもっと悪いことが起こる確率のほうが高い。それが、おとといきのうの2倍ですむのか、10倍か、100倍か、まったくわからない。
0355-0405 小さなエコーあり。青色まで
1247 ブルカノ式爆発(新燃岳南西最大振幅:292.4mkine 湯之野空振計:81.8Pa)
1250-1310 エコー赤
2300-2600 Hi-netを見ると28日23時から24日02時まで地震計の針があばれている。小林市堤(12キロ)の地響き時間「28日23時頃から1時頃まで(火映を目視しました)」とピタリ合う。@ay1038
今回の噴火の特徴・長崎、高知まで空振があった。
・軽石が降った。
・火山灰雲の高さは7500m。
調べるべきこと・1716年噴火は、どう推移したか。
http://ht.ly/3Mm0q・新燃岳は1716年の前にどんな大きな噴火をしたか。知られていないようだ。
リアルタイム監視・気象庁カメラ(猪子石)2分ごと60枚、120分アーカイブ
http://www.seisvol.kishou.go.jp/vo/32.php・鹿児島県カメラ(大浪池)
http://kirishima-live.jpn.org/・宮崎河川国道事務所カメラ(複数。遠くのカメラ推奨)
http://www.miyazaki-live.jp/sabou/・WNI気象レーダー、2時間アーカイブ
http://weathernews.jp/radar/#//c=86・Hi-net
http://www.hinet.bosai.go.jp/strace/view.php?orgid=01&netid=01&stcd=N.MJNH&tm=2011012621&comp=U&type=24H・Tokyo VAAC
http://ds.data.jma.go.jp/svd/vaac/data/index.html・小林UST中継
http://www.ustream.tv/channel/studiodiveグーグルマイマップ霧島山(新燃岳)のおべんきょう・過去の噴火リスト
http://ht.ly/3Lc79 http://ht.ly/3Lc7Aやさしい火山学・火山防災用語集
http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/news/2000/usu/index.html・群馬大学インターネット火山博物館
http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/museum/ejecta.html
海外メディアが報じた写真

右がジェームスボンド007噴煙。
【“1月28日噴火 各サイトへリンク”の続きを読む】
・噴火してるとか聞いてないわ at 15:58 on 29 January @maru7to
・天変地異やめて at 10:31 on 27 January @head_s
・こりゃ、だめかもしれんね。 at 16:10 on 26 January @HayakawaYukio
【“ツイッター語録”の続きを読む】
1月27日のツイート0028ころから復活のきざし
Hi-netを見ると、0210ころから活発化して0440ころしぼんでいる。

0200
VAAC Tokyo FL250(7500m)噴煙の高さ。
0409、0414(鹿児島県カメラ)

0418、0424、0434(気象庁カメラ)
WNIレーダーに、少なくとも0205以降に赤色エコーあり。
0410から0435まで長崎で空震と雷鳴のような音が聞こえた@dejimatuji
0440 弱まってきたようだ。
0500 レーダーエコー消える
0510(鹿児島県カメラ)
0200-0440の間、火口から60キロ離れた宮崎市内でも空振を頻繁に感じたらしい。もっと近くでは地震も感じたらしい。しかし詳細不明。長崎、佐賀、そして福岡で空振やゴー音を聞いたとするツイートがあるが、はたして本当だろうか。長崎の空振はひどかったらしい。寝ていた人が起きるほど。長崎は130キロ遠。
1520 噴煙白、弱い。
1535 再び黒、モクモク。
1541 地震を伴ってブルカノ式爆発。火口から13キロの都城市西岳でテレビ朝日が撮影したビデオあり。軽石。新燃岳南西最大振幅:332.7mkine、湯之野空振計:39.7Pa。
1630-1740 Hi-net真っ黒、WNIレーダーにエコーあり。何回か赤あり。
・
1月26日のツイート。画像もあります。
・
新燃岳2011年1月26日噴火の実況ツイート(ツイートまとめ)
霧島山の新燃岳がいま噴火中です。けさ7時30分頃から始まりました。
ライブカメラで噴火の模様をごらんになれます。
http://kirishima-live.jpn.org/http://www.miyazaki-live.jp/sabou/http://www.seisvol.kishou.go.jp/vo/32.php後者は、右端、左端のカメラを選択してください。山から遠いほうがよく見える。
いま霧島山新燃岳で進行中の噴火は、火山灰を風下に降らせるだけです。それ以上の危害の心配はありません。火山の驚異をみんなで
興味深く観察しましょう。(1549取り消し線)
こういう噴火は、桜島では毎週起こります。市民は慣れっこです。きょうは、いつもは静かな霧島山だから注目しています。そして、単発でなく、もう2時間半も継続しているので注目しています。浅間山でも同様の噴火が2004年9月中旬にありました。丸2日くらい継続しました。東京に灰が降った。
霧島山新燃岳は、今月19日に噴火しました。けっこうな量の火山灰が日南に降りました。昨年7月10日以来の噴火でした。そのあと21日と22日にも噴火しました。そして今朝に至ります。
井村隆介「御池小学校から約1km山側。夢ケ丘で30分間。」1443報告
2g/m2とみた。1時間なら4g/m2。
夢ヶ丘から新燃岳までの距離は7キロ。
7km * 3km * 4g/m2 * 10 = 800 トン (1時間あたり)
すでに7時間半経過。6000トン。
暗転
1458 コックテイルジェット(鹿児島県カメラ)
1514、1518 火砕流東へ1キロくらい(気象庁カメラ)
1530 火砕流、東へ1キロくらい
1546 火砕流
1608から発作的噴火(鹿児島県カメラ)

1618、1718 環境省えびの高原カメラ。新湯温泉に向かって火砕流がずいぶん下りている。
1809 赤熱火山弾(鹿児島県カメラ)
1850 気象レーダーからエコー消える。

VAAC Tokyo
090FL at 1331,
100FL at 1431,
220FL at 1731,
250FL at 1800,
250FL at 2000。
FLは30m。したがって、今日の霧島山噴火による噴煙最高高度は7500mだったと記録されるべきだ。
より大きな地図で 霧島山新燃岳2011年1月噴火 を表示 【“1月26日噴火(16時)”の続きを読む】
おたふくかぜなどの伝染病に子どもたちをさっさと感染させて免疫をつける感染パーティーがなぜいけないのかを調べていて、集団の利益という考え方に初めて接した。その病気に感染する致命的打撃を受ける弱者が社会にいるから、そのひとたちにうつさないために自分が感染してはいけないというのだ。
私は専門家でないからよくわからないが、予防接種は個人の利益より集団の利益を優先する考えに基づいて推奨されているらしい。そんなこと知らなかった。接種すると個人の利益が増進するから推奨されているのだと思っていた。集団の利益が目的なら、いま通常目にする説明では不十分だ。これは、ほとんど詐欺だと思う。
私は基本的に合理主義者だから、伝染病に関しては個人の利益より集団の利益を優先させるこの考え方にむしろ賛成だ。不満なのは、本当の理由はそこにあるのに、隠していることだ。専門家が強調しない。積極的に普及しようとしない。その結果として、学校の先生や父母が知らない。この責任は、専門家が説明責任をまっとうしてないことにすべてかかる。
従来の価値観と違っても、それが本当の理由なら正々堂々と打ち出したらどうだ。とくに学術や新聞は。
ただしホメオパシーは、伝染病と違ってフィジカルには感染しない。この違いは、集団の利益を評価するときに大きく作用する。合理的に考えれば、ホメオパシーについては個人の自由が集団の利益に優先すると私は思う。
医療従事者が集団の利益を優先して(個人の利益を犠牲にして)ホメオパシーを忌避するなら、そのことを社会に対してきちんと説明する責任を負う。少なくとも会長談話にその説明はなかった。効果がないからダメだとしか書いてない。説明責任のまっとうを怠慢して、患者個人の利益を一方的に奪うことは許されない。
医療従事者にはホメオパシーを攻撃する前にやってほしいことがある。患者予備軍への懇切丁寧な説明である。それは、一過性でなく継続的になされなければならない。北風と太陽。北風で無理やりホメオパシーを押しつぶすより、太陽で患者予備軍のこころをつかむのがよい。そうすれば、自然にホメオパシーは衰退するだろう。
私が専門とする火山災害でも、合理的に考えれば、逃げるか逃げないかの判断を下すときには集団の利益よりも個人の自由が優先されるべきだと思う。しかしいまの日本はそうなっていない。この現状を私はたいへん不満に思う。
【“「集団の利益」と「個人の自由」”の続きを読む】
「ニセ科学批判」という語をネットでよくみる。私は、この言葉をできるだけ使わないようにしている。「批判」を「非難」とか「糾弾」に言い換えて使ったことがあるが、十分うまく表現できたとはまだ満足していない。私が言いたいことはこれだ。あなたたちがやっていることは批判の域を超えている。それは指図だ。
ひとは誰もが、自分の生き方を選ぶ権利をもっている。他者からみてそれがどんなに愚かな選択であろうとも、他者はその選択を尊重しなければならない。自分がよしとする生き方をひとに指図するのは、してはならないことである。
科学的には間違っていると承知したうえで、その現象あるいは言説を信じたり好きになることは、そしてそれを公言することは、反社会的行為でもなんでもない。認められるべきことだ。それを認めないのは、差別である。「水からの伝言」を道徳授業で取り上げるのは教師の自由だ。ホメオパシーに傾倒するのは自然主義者の自由だ。その自由を、指図によって奪おうと企図することは悪だ。
そのときのアプローチは、指図でなく懇切丁寧な説明あるいは親身の相談でなければならない。常日頃は、本を出したりイベントを催して科学を普及する活動をする。これが社会基盤をつくる。ネットの「ニセ科学批判者」がこのような地道な活動をしているようにはみえない。「周回遅れ」だの「考えてないわけではない」だの「どこそこを読め」だの言って、説明の労をとろうとしない。
ニセ科学なるものがある、信じないようにしましょう、などといくら言っても無駄だ。そんなキャンペーンはむしろないほうがよいくらいだ。いま必要とされているのは、科学とは何か、科学はどんなにおもしろいか、科学はどんなにすばらしいかを多くの人にわかってもらう体験してもらうための地道な努力だ。個別のニセ科学がいかに間違っているかを説明するページより、科学がどんなにおもしろいか自慢するページのほうが、長い目で見たら、ずっとよい社会的効果をもたらす。
【“批判と指図”の続きを読む】
ニセ札は定義できる。なぜなら紙幣がきちんと定義できているからだ。グッチのニセモノも定義できる。なぜならグッチがきちんと定義できているからだ。しかしニセ科学は(万人が認める)定義ができない。なぜなら科学に(万人が認める)定義がないからだ。
たとえば広辞苑は科学を次のように定義している「体系的であり、経験的に実証可能な知識」この定義はそれなりの長所をもつが、そのニセモノを定義できるほど精緻な定義ではない。経験的に実証可能かどうかの判定を万人が同意するのはしばしば困難である。
定義できないニセ科学というレッテルをもちだして、「ニセ科学だからよくない」のキャンペーンを展開するのは、よくない。あまりに恣意的である。よくない理由はニセ科学とは別のところに求められなければならない。差別であるとか詐欺であるとか。
ニセ科学はすべて、科学的に間違っていると指摘するだけでことが足りる。
ある受験生が、センター試験の答案用紙のマークを鉛筆でなくて使い慣れたシャープペンシルでやりたいと思った。
大学入試センターから「解法時にシャープペンシルを使うのはかまわないが、答案用紙へのマークは鉛筆でしなさい」と、文書による指示が出ているのは知っている。それを承知の上で、シャープペンシルでマークしてよいか監督者に聞いたら、「大丈夫だろう。原料は同じ炭素だから」と返事があった。受験生は監督者の言を信じて、シャープペンシルでマークした。
試験を無事終えて帰宅して、さっそく自己採点した。8割取れたのでうまくいったと安心して、予定通り第一志望の大学に出願した。しかし、2週間後に来た通知には、「センター試験の成績が悪いので二次試験は受けられません」と書いてあった。
後日開示請求してみたところ、なんと5割しかとれていなかったことがわかった。シャープペンシルでマークしたから機械の読み取りミスがあったのではないか。受験生はそう思った。
調べたところ、シャープペンシルでマークした答案は4000枚に1枚読み取りミスが発生するのだという。鉛筆でマークした場合の読み取りミスは4万枚に1枚だという。
さて、この受験生は監督者を訴えるだろうか?訴えたら勝てるだろうか。
【“受験生のシャープペンシル”の続きを読む】
知識普及ツール世間の常識とか周知の事実のような、ひとが当たり前だとみなしてふだん疑わないことがらを、ツイッターでわざわざ言葉にして書くクセが私にはあります。
その目的は二つあります。1)言葉にすることによって自分の理解を深めたい。2)ことがらの本質を他者に理解してもらいたい。
ふだん疑わないことがらを、ツイッターで私が疑問形で言葉にすると、親切な人が答えを教えてくれます。その答えは最初は私にしか届きませんが、リツイートするとフォロワーにも届きます。理解の輪が社会に広がります。ツイッターのうまい使い方を発見したと自負しています。
140字制限の壁ひとつのツイートは140字までしか書けませんから、私のツイートをひとつだけ取り出して読むと奇妙に感じられることがしばしば発生するでしょう。用語の意味や発言意図を、前後のツイートも合わせて読むことで正しく汲み取ってください。
ひとつのアイデアの記述は140字でできるだけ完結させたいと工夫するのですが、どうしても収まりきれないときがあります。そのときは、やむを得ずツイートを分割します。文の途中で終わっている私のツイートは、次に続くことを意味します。
続くツイートは、そうであることがわかるように、文の途中で切るようにしています。句点(。)ではなく、わざと読点(、)で切ります。
続くツイートはこれで見分けられますが、続いてきてそこで終わるツイートは単独完結ツイートと見分けがつきません。話の途中から始まっていると疑われる私のツイートがあったら直前ツイートを探してください。
ツイッター公理他人のツイートに文句をつけようと思ったら、いくらでもできる。(2013年2月28日追加)
初心者のためのツイッター講座2
懐疑主義の自己矛盾血液型性格判断は差別であるとか水伝道徳授業は不道徳であるとかの、ネットで見られる批判運動は、過去にニセ科学をスマートに批判した権威の力を借りて、個別の事例を(自分で判断することなく)そのまま丸写しで批判する行為である。だからしばしば大きく間違える。
もともとのニセ科学批判が懐疑的立場に基づいてなされたにもかかわらず、それに追随したひとたちはまったく懐疑的でない。ニセ科学批判の権威を疑うことを知らない。皮肉なものである。
科学を権威づけに使う「恐らくはこういう主張をする人々にとって「科学」は権威であり、その科学の力を借りて、天皇家の伝統、男系維持の重要性に関する権威付けを行ないたいのであろうと思われる。125代の歴史は科学的にも重要だ、という方がただ重要だというよりももっともらしく聞こえる、とそういう主張をする人は思うのだろう。」 山田ともみ(2005) 『Y染色体と男系天皇』
この意見には説得力がある。科学を権威づけに使う行為には、それが科学であろうとなかろうと不快感を禁じえない。
ニセ科学だとしてネットで批判されているもののうち水伝道徳授業とマイナスイオンは、たしかに科学を権威づけに使っている。この二つを批判するひとたちの真の目的は、これらが科学であるかないか、または科学的に正しいか間違いかの識別にあるのではない。本人たちがどこまで自覚しているかわからないが、彼らは、権威づけのために科学が使われることを嫌っているのだ。
では、血液型性格判断とホメオパシーを批判するひとたちの真の理由は何だろうか。血液型性格判断を批判する理由はおそらく、その動機あるいは背後に隠れる差別意識だろう。この批判は通俗道徳主義に立脚しているといってよい。ホメオパシーは複雑だ。詐欺と利権がうずまく魑魅魍魎の世界にみえる。
選択基準と差別大学入試や公務員採用試験で血液型を選択基準に用いるのはもってのほかだ。合理性を欠くし、なにより公平の観点から大きな問題が生じる。大学入試は学力だけで選抜しなければならない。
では、営利企業が社員の採否を血液型で決めたらどうだろうか。営利企業だから合理性を求めなければならない義務はない。収益が上がれば不合理を選択してもかまわない。営利企業だから公平性も求められない。そもそも営利追求は自分だけに利益を誘導するしくみだから、公平の精神と相容れない。
大企業が本社玄関の受付係を募集する場合を考えてみよう。この場合は、容姿が重要な選択基準になることをみんな知っている。血液型で選別してはだめだが容姿でならよいのだろうか。それとも、受付係といえども容姿で選択してはならないのだろうか。
吉本興業の入社試験はどうだろうか(そんなものがあるかどうか知らない)。お笑いがうまいへたを選択基準にしてはいけないのだろうか。お笑いがへたな社員ばかりをやとったら、吉本興業の経営が立ち行かなくなってしまう。
学力・血液型・容姿・お笑い。ひとを選抜するときの基準にしてよいものと悪いものを決める要因はどこに求められるのだろうか。
【“ニセ科学批判の風景”の続きを読む】
学者というのはたいへん無責任な存在である。いつも勝手なことばかり考えて、好きなことを言っている。いいかげんな発言をしてもその責任は、自分が属する小社会で信用が失墜するだけに留まる。社会的責任は問われない。これが、学者の自由を保障して社会のなかで学術を効果的に発展させる仕組みだ。
私は過去に一度だけ、この免責された学者の小社会から飛び出ようとしたことがある。それは2004年のことだった。国と県と市町村が合同でつくった浅間山のハザードマップに重大な虚偽があるのをみつけた。
国と県と市町村が示し合わせたこの虚偽は到底容認できないことだと、そのときの私は感じた。法的手段に訴えてみずからが社会改革をなすべきだといったんは信じた。その方法は、告発することだと知った。やり方を調べて、いざ告発する段階に至った。
さすがに躊躇して、親しい何人かに相談を持ちかけた。おおかたは態度を明らかにしなかったが、ひとりが告発を支持すると言った。しかし同時に別の人が、「この社会における学者の役割は書き残すことだ。行動することではない」と言った。最終的に私は、後者の意見に従った。私はそのとき(は)、学者に留まった。
その後、「書き残す」という意味で、2006年5月に学会発表をした。
・
『浅間山火山防災マップ2003年版』にみられる虚偽いま思うと、この事件は虚偽というより詐称と呼んだほうが適切だったかもしれない。
「被害はさらに広がる可能性があるという」
アサヒコム 積雪の重みで、漁船186隻沈没 鳥取
これは、降雪がまだ続いていて、早くしないともっとたくさんの船が沈没するという意味か。それとも、沈没した船がこれからもっとたくさんみつかるだろうという意味か。言葉どおりだと前者の意味になる。しかし、どうやらそうではなさそうだ。
「被害が広がっている(拡大している)」という言い回しを、マスメディアには注意して使ったもらいたい。言葉どおりの意味でなく、違う意味で使っているのが多いように見受けられる。これは、防災・減災実現のための足かせになっている。
「被害がいまも広がっている」 「被害報告がいまも増え続けている」 この二つは、意味がぜんぜん違う。前者の場合は、ただちに防災対策を発動しないといけない。突発災害でそういう状況はめったにない。報道されるのはいつも結果だ。報道されたときはすでに勝負がついている。ただし干ばつとか熱波などのじわり災害では、そういう状況が発生することがある。知らせを聞いたら、すみやかに駆けつけて救助行動を開始しないといけない。