早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

新燃岳2011年2月噴火のまとめ

1日0754 M2.0地震と同時にブルカノ式爆発。レーダエコー0800黄、0805白、新燃岳南西最大振幅:376.7mkine、湯之野空振計:458.4Pa火山弾3.2キロ、山火事、空振で窓ガラスが割れて顔にケガ。
  0808 2発目(Hi-net)
  1120 「切り替え」で3キロを4キロに
  1540 レーダーエコー青(ブルカノ式)
  2319 レーダーエコー青(ブルカノ式)354.1mkine、185.5Pa
2日0525 ブルカノ式爆発、340.8mkine、299.6Pa、レーダーエコー水色
  1047 ブルカノ式爆発、150.1mkine、86.5Pa、レーダーエコー青
  1552 ブルカノ式爆発、530.6mkine、72.4Pa、レーダーエコー水色
  1622 黒い噴煙、爆発なし、レーダーエコーなし
  2045-2125 奇妙な震動(Hi-net)
3日0809 ブルカノ式爆発、96.3mkine、26.0Pa、レーダーエコーなし。
  1219 ブルカノ式。中央から出た。レーダーエコーなし。
  1235 鳴動、そのあと噴煙5キロくらいまで。レーダーエコー1245青、1250水色、1255白。
  1300 FL300 VAAC 噴煙9キロ
  1400 FL300
  2000 FL300
4日0943 ブルカノ式爆発。小林市側で大音。
  1811 大隈半島東方沖で地震M4.7、鹿屋で震度3
5日0940 レーダーエコー水色、灰噴火4000m
  1100 レーダーエコー水色、灰噴火
  1700 高原町が避難勧告を解除。ただし8キロ以内の27世帯73人は継続。
6日0316 ブルカノ式爆発。Hi-net、大浪池カメラに赤い火山弾着弾
7日0608 ブルカノ式爆発。赤い火山弾飛散。大浪池カメラでよく見えた。レーダーエコー白。
  午後、噴煙止まる。
  1630 気象庁「噴火終了」宣言
  1836 ブルカノ式爆発、レーダーエコー白1850 
8日
9日
10日
11日1136 ブルカノ式爆発。宮崎市で空振。レーダーエコー1140青、1145水色。最大振幅:341.0mkine、空振計:244.3Pa、VAAC FL130
12日
13日
14日0507 ブルカノ式爆発、宮崎市・日向市まで空振、レーダーエコー0510赤、0515赤、0520黄、0525青、最大振幅:1651.7mkine 空振計:332.1Pa、小林市に火山れき。
15日
16日
17日
18日1816 真っ赤な火山弾放出とともに黒い噴煙が上がる。火山雷。ブルカノ式というには空振が小さかった。最大振幅:247.9mkine、空振計:31.4Pa、気象レーダエコー、1820赤、1825青、1830白、VAAC FL180 5400メートル。噴煙は下層では南西に向かったが、上空でねじれて南東へ。南西5.5キロに火山シルト20g/m2(写真判定)。灰噴火の特徴も備える。10万トン。
19日
20日
21日
22日
23日
24日0338 灰噴火。1時間ほど継続。北側に少量の降灰。
25日
26日
27日
28日0733 気象庁が「噴火したもよう」という。0740に小さなレーダーエコーあり。水色。0745には消えた。
   0904 日向灘で地震M4.6、小林市真方で震度3
   1141 御池で灰まじりの雨。
       皇子原公園で硫黄臭。細かい灰が常に降る。
   1712 元気な水蒸気放出の中、灰色噴煙。レーダーエコーなし。
   1804 灰色噴煙。レーダーエコーなし。

2月28日

0733 気象庁が「噴火したもよう」という。0740に小さなレーダーエコーあり。水色。0745には消えた。そのあと、微動が継続していると気象庁はいう。
0904 日向灘で地震M4.6、小林市真方で震度3
1141 御池で灰まじりの雨。
    皇子原公園で硫黄臭。細かい灰が常に降る。
1712 元気な水蒸気放出の中、灰色噴煙。レーダーエコーなし。
1804 灰色噴煙。レーダーエコーなし。

2月27日

雲に阻まれて、昨晩の火映の有無確認できず。

1ヵ月企画(その2)
2日目 1月27日の噴火実況ツイート

2月26日 あれから1ヵ月

昨晩の大浪池カメラ。すっかり静か。水蒸気まったくなし。もちろん火映もなし。2700万トンの高温溶岩がそこにあるとは、とても思えない。 

新燃岳2011年1月26日噴火の実況ツイート

2月25日

昨晩、火映なし。

2月24日

0338 灰噴火。北側に降灰。1時間ほど継続。雨雲に阻まれて気象レーダーはうまく観察できないが、赤や黄のエコーはない。積灰は少量。「えびの高原は車が通過すると黒い灰が舞っていました。麓の集落では戸外駐車のフロントガラスは灰がうっすら付いていました。」

夕刻、無風状態のなか、大量の水蒸気が火口からまっすぐ上がった。

2月23日

霧のため、火映の有無不明。

2月22日 NZ地震

・昨晩は宵のうちにわずかな火映あり。1547低周波地震の影響だったのだろう。
・NZクライストチャーチで地震



霧島山2011年ツイッター噴火

stat.jpg


ネットの常識と良識

ネットの常識と良識を私は信じていない。私がつくったこのまとめとそれについたコメント、それから右上につくx usersからたどれるはてブ・コメントを読むとそれがよくわかるはずだ。ツイッターは即時性に優れるメディアだが、情報の広がりについてはまだまだ発展途上にある。10年前に出現した掲示板と比べたらその影響力はまだ弱い。ただし、今後化ける可能性に私は期待している。火山噴火のように1分1秒を争う場合のメディアとしては、いまこれしかないのが現実だ。このメディアを育てるしか方法はない。

hootsuite.jpg

私はツイッターを利用するアプリケーションとしてHootSuiteを使っています。ストリームを10まで表示できて便利です。もちろん純正ツイッターも併用します。

2月21日 2枚のスライド

昨晩は火映なし。

1610kirishima.jpg 1636.jpg 

16時から17時までの1時間、これまでにないほどたくさんの水蒸気が上がった。左は1610、右は1636。

11022115.png

1547に低周波地震が起こっていた。地下で異常があったからだ。どんな異常だったかはわからない。和歌山県の地震だった。M4.9、深さ50キロ。和歌山県の地震に反応したか、それとも地震と水蒸気は無関係なのか、わからない。



2枚のスライド

_04.jpg

_09.jpg 左がプリニー式軽石。右がブルカノ式火山れき。

小山真人さんが2月19日に静岡で行なった報告会で使ったスライドから2枚。ブルカノ式とプリニー式の違いがわかりやすい図と写真で説明してある。

・ブルカノ式は、単発の爆発で風下に火山れきを降らす。
・プリニー式は、継続的な爆発で風下に軽石を降らす。
どちらも、火口周辺に火山弾を飛ばす。


2月20日 観光団体のうそ

宵のうちのごく微弱な火映のみ。



観光団体がうそで客よせ

新燃岳上空の風向きは北西となっていることから、宮崎県都城市方面に流れています。


社団法人鹿児島県観光連盟は、うそを掲げて客を危険地域に呼び込もうとしている。監督官庁もしくは警察の捜査が必要である。18日夕刻に鹿児島県側に大量の降灰があった。このお知らせは19日の日付である。

霧島ハイツ及び霧島ペンション村への通行は可能です。


これはうそではなく事実だ。しかしこれまで黙認してきたが、いまは言う。ペンション村の北寄りは火口から4キロの円にかかる。いま噴火している火口縁から測ると3.8キロだ。ペンション村内に4キロ線を引いて、それより山側の立入りを禁じなければ行政に不公平が生じる。 


火口縁とペンション村の距離。より大きな地図で グーグルマップ を表示。ペンション村東3.84キロ、ペンション村西3.92キロ。

私の2月8日現地調査GPSルートマップ(写真つき)。 該当地域を拡大してごらんください。

気象庁噴火警報2月1日は、「火口から概ね4kmまでの広い範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒が必要です」と書いている。 「火口から」と書いている。「山頂火口中心から」とは書いていない。

鹿児島県と宮崎県が協力して2009年3月につくって、両県ともホームページからいまリンクしている霧島火山防災マップには、想定火口から測った4キロの円が書いてある(宮崎県サイト鹿児島県サイトがリンクした霧島市サイト)。これは、火口縁から測った4キロ円よりもっと広い範囲を包み込む。霧島ハイツや林田温泉もその円の内側にある。

私はこれまで地域の観光も大切だと思ってこれを黙認してきた。しかしこの新聞記事をみて、そうは言ってられないと思った。「噴火に負けず無料入浴…霧島温泉、24日にイベント 鹿児島」 - MSN産経ニュース

火口縁から4.26キロにある宿泊施設の温泉利用を観光団体が呼びかけることに、法律上の問題ない。しかし十分な説明責任を果たさずにいまそれをやることは、社会道徳として許されるべきでない。

また、霧島市の防災対応にも大きな問題を感じる。市のページのどこにも、4キロの立入規制について何も書いてない。この規制はいったい誰がどの法律に基づいて実施しているのか。現地の道路封鎖脇の看板にも書いてない。市長は、自分に実施判断と責任がかかっていることを知らないのではないか。

では霧島の観光業にいま何が求められるか。客の車に損傷があったら、それを肩代わりする契約を申し出ることだ。気象庁は、直径4センチの火山れきが10キロを超えて降る危険があるといっている。火山噴火による車の損傷は保険でカバーされない。このリスクをホテル側が負うことを明示する。そうすれば、いくらかの客を獲得することができよう。客の車を屋根の下に入れる配慮でもいい。

車の損傷とは、小石でガラスが割れる、ボディに傷がつく、火山灰で汚れるなどだ。後者については洗車代をサービスする、あるいはホテル側が水で洗い流してきれいにするなどの軽微な手当てで可能だろう。いま霧島のホテルには生命のリスクはないと気象庁はいうのだから、このような対応で社会は容認することになっている。

しかしリスク管理は、気象庁や行政の指示を参考にすることはあっても、最終的には当事者の責任によって判断されるべきだ。気象庁も県も市も、自然災害によって生じた損失の責任を負うとは思われない。個人がこうむった損失を国が補償する仕組みに、わが国の法律はなっていない。

2月19日 死都日本

昨晩は月明かりがまぶしかった。火映は1816噴火直後にみられた微弱なものを除いて、観察できなかった。



気象庁長官による違法な立入規制

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きょう静岡大学で実施された霧島山報告会で投影されたスライド @disaster_i

このスライドに書かれた総合観測班のルールにおかしな点がある。「規制区域に立ち入る時事務局と福岡管区気象台火山監視・情報センターに問い合わせ、確認。出る時事務局に連絡」 ここでいう事務局は気象庁火山課であると、上に書いてある。「規制区域はA(火口から3km以内、風下4km以内)とB(ほぼ3~4km)があり、観測で入れるのはBのみ」ともある。この規制は気象庁が実施していることを証明してしまっている。この規制は違法だ。そして、法的根拠がない。

災害時の立ち入り規制は、災害対策基本法によると市町村長の専権事項だ。気象庁が口を挟めるものではない。気象庁長官がいま霧島山で公然と違法行為をしている。これは許されるべきことではない。

この規制は、総合観測班だけに当てはまる自己規制だの言い逃れがあるかもしれない。しかし2月9日に火山学会員に届いた注意喚起メールを読むと、そうであるとは言えない。

現在、霧島山で噴火対策として4キロ規制が行なわれているのなら、それは霧島市長と高原町長によってなされているべきだ。その根拠を63条に求めるのなら、法律に定められた「警戒区域」という呼称を用いるべきだ。そうでないなら、いま霧島山には防災目的の立入規制は敷かれていない。

立入規制の行為主体を、法に定められた市町村長にすみやかに戻すべきである。法治国家が放置してよいことがらではない。

じつは、この下地は2004年の浅間山噴火の前からあった。浅間山では地元自治体が63条警戒区域を敷いている。1973年の噴火以来ずっとだ。にもかかわらず、気象庁軽井沢測候所(当時)が山頂調査をするとき、市町村長の許可をいちいち取得して行なっていたようにはみえない。

ときには新聞記者や雑誌記者を連れて規制範囲内に上がった。記者たちはその報告を堂々と公にしていた。ある記事には、火口縁まで登ってきた一般登山者を測候所長が追い返す場面が書かれている。記者を同行していながら、そこに来た一般登山者を追い返すとはどういうことだ。

こういうことの繰り返しが、気象庁をして自分が規制しているのだと大きな勘違いをさせてしまったのだろう。いまからでも遅くない。みずからの行為を恥じて、過ちをすみやかに正すべきだ。

→ 立入規制と避難を気象庁長官が決めていいのか



死都日本シナリオのリスク

もし江戸時代と同じで、新燃岳が2000万トンだか5000万トンだかのマグマを蓄積してはその分だけ吐き出すのを繰り返すなら、たいした危険はない。江戸時代の火砕流は3キロまでしか流れなかった。せいぜい5キロまで警戒すれば十分だろう。

しかし地下の深いところに鎮座する何億トンあるいは何十億トンのマグマが一気に噴き出すとこれはたいへんな災害になる。10億トンなら、浅間山1783年、1108年と同じ。火砕流が9キロあるいは12キロまで届く。私は2月12日にこの確率を6%と見積もった。もし1000億トンなら死都日本の世界だ。この確率はいま1%。

死都日本が描いたカルデラ破局噴火を日本列島は、平均して1万年に1回経験してきた歴史を私は知っている。今回がそれである可能性を否定する根拠を私はみつけることができない。

死都日本(M7)シナリオでの死者数は100万人。確率1%なら期待値(確率論の用語)は1万人。火砕流10キロ(M5)シナリオの死者数は1万人。確率6%なら期待値600人。のほうが大きい。

リスクは大きいものから順に手当てするのが、限られた富を有効配分するときの原則だが、発生確率が極端に低いリスクは、それがいくら高リスクでも社会に無視される傾向がある。それは、ひとの寿命(80年)とか政治家の任期(4年)に依存して起こる現象である。

いまのところまだM3だ。江戸時代1716年噴火はM4で止まった。Mは噴火マグニチュード。噴出重量の常用対数。M5が10億トン。

→ 現代都市を脅かすカルデラ破局噴火のリスク評価 (2003年11月) 

2月18日 システム改革

1816 真っ赤な火山弾放出とともに黒い噴煙が上がる。火山雷。ブルカノ式というには空振が小さかった。最大振幅:247.9mkine、空振計:31.4Pa、気象レーダエコー、1820赤、1825青、1830白、VAAC FL180 5400メートル。噴煙は下層では南西に向かったが、上空でねじれて南東へ。10万トン。

この噴火は、火山弾を飛び散らせはしたものの、爆発力が弱かった。しかし出た量はこれまでのブルカノ式爆発と同じ程度、あるいは多いほうだったとみられる。噴出時間が長かったので多くの量が出た。勢いよく出ている時間が10分を超えて続いた。その後も、弱まりながら1時間近く続いた。

これは、桜島や阿蘇でみられる灰噴火の特徴だ。灰噴火は、爆発音なしに、つまり火山弾を飛ばすことなく、灰を何時間も、ときには一日中降らせる。新燃岳も、桜島と同じようにブルカノ式爆発と灰噴火を、これからしばらく(溶岩湖が十分に冷えるまで)続ける。それは、山頂火口内に溶岩湖がある限り続き、おそらく1年程度の長さだろう。

02181816SW5500.jpg

南西5.5キロに降り積もった火山灰。小麦粉のように細かい(火山シルト)。灰噴火の特徴も備える。団塊として降った。噴出量をおよそ10万トンと見積もる。

ツイッターによる2月18日1816噴火実況



火山防災システムの改革が必要

火山防災を実現するためには、人材確保だけではダメだ。いまのシステムを変えないといけない。まずは、科学だけでやろうしている姿勢を正さないといけない。科学だけでなく、広く学術全体に知恵を求める。とくに歴史学に近い地質学(マグマ学でない)の本格的導入が必須だ。また学術以外の行政・教育・情報伝達との連携も必要だ。

火山災害はめったにおこらないから経験の蓄積がむずかしい。季節的に起こる気象災害は物理学を中核とした科学でうまく対応できるが、火山災害はそうはいかない。新燃岳のように何百年ぶりの現象に立ち向かうためには、過去を探る地質学の知見を使わないとどうにもならない。現在の観測だけでは無理だ。

新燃岳では何百年ぶりでも、日本全体でとらえればこれは何十年ぶりの噴火だ。目を世界にも向ければ、十年に一度や二度は起こっている噴火だ。こういう見方が求められる。過去の類例として新燃岳の1716年噴火だけに目を奪われてはならない。事例をもっと広く世界に求めなければならない。

火山防災は科学ではない。原因と結果、メカニズムの解明、前兆現象の検知、そういう物理学の手法では限界がある。確率論的な予知に私たちは進むべきだ。向こう1年の間に、火砕流が10キロまで流れる確率は○%などの情報を出すことが社会に役に立つ。

火砕流が出る前にはこういうことが起こる。いったん出ると、これくらいの速さでここまで進んで、これくらい壊滅的打撃を与える。その進む向きは地形に依存する一方で、ときには直進もする、などといった火山学の基本を、すくなくとも火山麓の子どもたちには教える必要がある。学校教育の問題だ。

地質学者を名乗ってこの国の噴火予報にかかわっている学者の多くは、じつは岩石学者であって、ホンモノの地質学者ではない。きちんとトレーニングされた地質学者の知見を求めないから、おかしな情報に依拠したとんまな予報になっている。

噴火予報のシステム改革をするなら、気象庁幹部に優秀な地質学者をひとり入れる。これが特効薬だ。大学観測所の定員をいま増やしたところで、どうにもならない。

2月17日 伊豆大島1986

伊豆大島1986年噴火との比較

1986年11月21日夕刻、伊豆大島に立ち上がった噴煙の柱は高さ16キロに達し、4キロ離れた地点に厚さ23センチの軽石(黒いのでスコリア)堆積物を残した。噴出量は1000万トンだった。

2011年1月26日夕刻、霧島山新燃岳に立ち上がった噴煙の柱は高さ7.5キロに達し、8キロはなれた地点に厚さ7センチの軽石堆積物を残した。噴出量は2000万トンだった。

一方は、気象庁・予知連に「準プリニー式噴火」と呼ばれ、他の一方は「多量の火山灰等を放出する噴火」と呼ばれた。

伊豆大島では軽石(スコリア)噴火のあと、溶岩がカルデラ床とカルデラ外に流れ出した。その量は3000万トンだった。カルデラ外に流れて元町に向かった細い流れが行政と住民の恐怖心をあおり、一夜のうちに1万人を島から脱出させる作戦が実行された。

霧島山新燃岳の軽石噴火は27日まで3回に渡って繰り返した。そのあと3日半で溶岩が2700万トン出た。しかしそれは山頂火口内にすべてとどまった。行政と住民が覚えた恐怖心はさほどではなく、避難したのは4日後に500人のみ。ほとんどの住民は平時と同じ生活を送り続けた。

2月16日 まとめ 黒い南斜面

明け方、火映かすかにあり。



霧島山新燃岳2011年噴火 ここまでのまとめ

1月19日 突然の火山灰放出。日南に積灰。21日、22日にも火山灰放出。
1月26日 0731から火山灰を連続的に放出し始める。1458鶏の尾のような真っ黒いジェット。1514火砕流が1キロ下る。1600からプリニー式軽石噴火。噴煙の高さ7.5キロ。2時間50分継続。翌27日0210からも2時間30分継続、同1630からも1時間10分継続。この3回で2000万トンのマグマが軽石となって空中に吐き出された。この3回のプリニー式噴火に伴う地形変化が傾斜計でとらえられている。新燃岳はこのあとも火山灰を連続的に放出し続け、ときどきブルカノ式爆発をして火山弾を飛ばし、風下に小石を降らせた。
1月28日 1200ころ火口底に溶岩出現。31日までの3日半で2700万トンの溶岩が地表に出現して、火口内に直径600メートル深さ100メートルの溶岩湖ができた。その3晩は、まばゆいばかりの火映が火口上空に現れた。GPS連続観測によると、26日から始まった顕著な地形変化は31日で終わった。
2月1日 0754にとても強いブルカノ式爆発が起こった。火山弾を3.2キロまで噴き飛ばした。山火事が発生し、多数の窓ガラスが割れた。このブルカノ式爆発は溶岩湖の冷却に伴って起きている。最初は数時間おきだったが、その後だんだん間隔があくようになった。
2月7日 午後、火山灰の連続的放出が途絶えるようになった。
2月15日 火山灰の放出はほぼ止まっている。数日を置いてブルカノ式爆発がときどき起こって小石を風下16キロまで降らせる。車のガラスを割るなどの被害が出ている。

1月26日のプリニー式噴火は何の警告もなしに起こった。次のプリニー式噴火の前には警告があると期待するのは合理性を欠く。

参考にすべき過去の噴火事例
・伊豆大島1986
・桜島1914
・樽前山1909
・鳥海山1801
・浅間山1783
・桜島1779
・岩手山1732
・霧島山新燃1716
・桜島1471
・霧島山御鉢1235
・浅間山1108

新燃岳の黒い南斜面

前日の低気圧が去った15日は晴れ渡って鹿児島市から霧島山がよく見えた。山は雪をかぶって真っ白になったが、新燃岳の南斜面だけ積雪がなくて黒かった。重要な観察事実は次である。1南西側の黒/白境界がいちじるしく明瞭である、2複数の沢に沿って黒が伸びている、3南斜面の下部に積雪のある白い帯が細くある。4中岳は白い。

新燃岳1s 新燃岳2s 南日本新聞社提供

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16日朝の南日本新聞に、考えられる原因が二つ書いてある。11日と14日のブルカノ式爆発で飛散した火山れきの熱が雪を融かした。溶岩湖の上を通過する空気が風下の地表を温めた。このほかに、溶岩湖が上空の雪を融かして雨を降らせたとするモデルもきのうツイッターで目にした。しかしこれらのどれも上記の観察事実をうまく説明できない。

26-27日のプリニー式噴火で降り積もった軽石にまだ熱が残っていたと私はきのう考えたが、これも説明力が小さいモデルだ。とくに南斜面の下部にある細い白帯が説明できない。溶岩湖の熱が直接伝わって地表の雪を融かすモデルも考えにくい。南西斜面を火口縁まで続く明瞭な黒/白境界が説明できない。

溶岩湖から上昇する暖かい空気が北西からの風に吹かれて、山の南東斜面に吹き降ろすモデルはどうだろうか。雪はいったん積もったのだが、南東斜面だけがドライヤーの温風を当てられたようになって選択的にさっさと融けた。15日午前の、高さ2000mの風向きは北西からだった(ウインドプロファイラ)。

ドライヤーモデルだと、南東斜面に一条だけ白い積雪が残ったこともなんとか説明できる。温風が届かなかった、あるいはそこまでの距離では冷えてしまったのだ。沢を下る黒は、温風で融けた雪が小さな泥流を発生させたと考えられる。

2月15日 雪の朝

・きょうは、噴火予知連の定例会議が開かれるらしい。
・夕刻出された発表文の中に「軽石」も「プリニー式」もなかった。26-27日の噴火は「多量の火山灰等を放出する噴火」とされた。「ブルカノ式」の文字もなかった。
・高原町、27世帯73人に出していた避難勧告を解除。



マグマの中には水がはいっている

軽石というのは、穴がいっぱいあいた石のことだ。だから軽い。穴は水蒸気がつくった。とけた岩(マグマ)が固まるとき、溶け込めなくなった水蒸気が出てきてふくらんで穴をつくった。マグマの中には水が含まれているのだ。この水がいつどうやってマグマから抜けるかが、どんな噴火になるかの鍵を握っている。

水をいっぱいもったままマグマが地表に現れると一気に噴き出して軽石になる。1月26-27日に立て続けに3回起きたプリニー式噴火だ。1回は2時間程度だった。水をあらかた失ったマグマが出てくると溶岩になる。28日から31日まで4日かけて火口内をゆっくり埋めた溶岩湖がそれだ。

できたばかりの溶岩湖はまだ熱い。いまゆっくり冷えている。冷えていくうちに溶け込めなくなった水が出てきて圧力を高める。耐え切れなくなったとき大きく爆発する。これがブルカノ式爆発だ。爆発力は強いが10分で終わる。2700万トンの高温溶岩がそこにあるのだから、これから数ヵ月間に渡ってブルカノ式爆発を何度も繰り返すことがもはや避けられない。でもこの爆発は、4キロ以上離れていれば飛んできた火山弾に当たって死ぬことはない。

いま心配なのは、後続のマグマが地下から上がってきて、また1月26-27日のようなプリニー式噴火をすることだ。1月26-27日は不幸中の幸いで最低クラスのプリニー式だった(噴煙の高さ7.5キロ)。火砕流が発生したが1キロで止まった。本格的なプリニー式(噴煙の高さ20キロから30キロ)だと火砕流は10キロくらい平気で進む。火口の上に噴煙の柱が何十時間も立ち続けて、風下の広い地域が真っ暗になる。

1月26日午後のプリニー式噴火が何の警告もなく起こったことを考えると、次のそれへの警戒がこれからしばらく必要であることが理解できるだろう。

トランヴェール2010年10月号の16-17ページに、わかりやすい図解説明があります。

大きな噴石と小さな噴石

新燃岳 風下では噴石に注意を
NHK 2月14日 18時47分

霧島連山の新燃岳では、14日朝、3日ぶりに爆発的な噴火が起き、10キロ以上離れた所でも小さな噴石によってガラスが割れたとみられる被害が出ました。気象庁は、特に風下の地域では噴石に注意するよう呼びかけています。

新燃岳では、14日午前5時7分ごろ、今月11日以来3日ぶりに爆発的な噴火が起き、山の中腹では爆発に伴う空気の振動=空振が観測されました。気象庁によりますと、空振の値は332パスカルと、100か所以上の建物で窓ガラスが割れるなどの被害が出た今月1日の爆発的噴火に次ぐ大きさでした。14日朝の爆発的噴火のあと、小さな噴石や火山灰が南西の風に乗って山の北東側に流れ、風下に当たる宮崎県小林市では、火口から16キロほど離れた場所でも小さな噴石によって車のガラスが割れたとみられる被害が出ました。風は昼すぎから北西に変わり、さらに15日朝にかけては北寄りになる見込みです。気象庁は、今後も当分の間は、これまでと同じ規模の爆発的な噴火が続くおそれがあるとして、引き続き、大きな噴石が飛ぶ危険のある火口からおよそ4キロの範囲には立ち入らないよう呼びかけています。特に風下の地域では、10キロ以上離れていても小さな噴石による被害が出るおそれがあることから、今後の風向きなどにも十分注意するよう呼びかけています。


このNHKニュースを聞いて、加害要因として大きな噴石と小さな噴石の二つがあって、それぞれ別個に注意しないといけないことがわかる日本人が、はたして何人いるだろうか。

二つ目の噴石がむき出しで書かれているが、これは「小さな噴石」と書くべきだった。いま防災情報を正確に伝えたいと欲するなら、噴石をむき出しで言ってはならない。「大きな」あるいは「小さな」という形容詞を常にかぶせないと正しく伝わらない。

2000年10月までは、桜島を擁する鹿児島地方気象台は、噴石は火山弾だけをいい、風に乗って遠くまで運ばれる小石は火山れきと言って区別していた。浅間山でもそうだった。噴石は火山弾を意味した。しかしその後、(現場を知らない)大手町の官僚が、どっちもあたってケガをするのだからどちらも噴石というと勝手に決めた。そのあと文書をつくっていくうちに齟齬がどうしても出る。噴火警戒レベル表における噴石の使い方が火山によって違う。噴石という言葉はもうぼろぼろだ。

気象庁は「小さな噴石」「大きな噴石」と分けて言うようにしたようだが、NHKはそんな背景を理解できない。とんでもない無責任情報が、お茶の間のニュースで毎日この国に流れる。

大きな噴石は火山弾という。小さな噴石は火山れき(小石でもよい)という。なんでこれができない。つまらないメンツはさっさと捨てろ。

2月14日 ブルカノ式で日向まで

0507 ブルカノ式爆発、20万トン。宮崎市で強い空振、レーダーエコー0510赤、0515赤、0520黄、0525青、最大振幅:1651.7mkine 空振計:332.1Pa、VAAC FL190。小林市真方(13キロ)に2センチの火山れき。小林市内で車のガラスが割れた。

レーダーエコーに赤は1月27日16時のプリニー式以来。いままでのブルカノ式爆発で赤はなかった。(1日0754ブルカノ式爆発で黄はあった。)

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小林市堤から1キロ離れたところのハウス仲間。ウェザーリポートkadoko17、1445

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霧島SAの西約300mの道路上(9キロ)、Fさん/井村

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小林市細野(12キロ)に降った火山れき。Fさん/井村。写真判定600g/m2、噴出量20万トン。

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小林市真方(13キロ)に降った火山れき。ウェザーリポートたんぽぽ、0647

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日向市江良町(90キロ)、ウェザーリポートけん、0925



理学から見た防災

1716年噴火は、新燃岳誕生以来最大の噴火だった。今回は、それと似てると火山学者が口をそろえて言う。私もそう思う。

であるなら、1716年噴火を超える可能性も十分織り込んで、他火山の事例を踏まえて防災対策するのが妥当だ。ひとつの火山で一度か二度しか起こらない山体崩壊や、カルデラ破局噴火まで織り込むのは(現時点では)行きすぎだろうが、プリニー式軽石噴火とそれにともなう(本物の)火砕流への警戒が必要である。

300年ぶり、いやおそらく3000年ぶりの異常が新燃岳でいま発生している。日常からかけはなれた警戒態勢を少なくとも3ヵ月とってもばちはあたらない。いや、それが火山麓に住む人間がとるべき合理的選択だ。合理的な選択を社会がとらない自由を理学は認めざるを得ない。しかし、それが無知・不勉強による選択であってはならない。

地域コミュニティと畏敬の念

空から石が降ってくるというのは、これはとんでもないことなのであって、それをそうだと認識しないといけない。正常化バイアスから脱却すべきである。このとんでもないことに、地域コミュニティとして立ち向かわないといけない。ぜんぶ中央とかお上とかにやってもらう考えではだめだ。

火山麓に住んで、火山の恩恵を受けて暮らしてきたのだ。何百年かに1回はこういう年もある。観念して、敢然と立ち向かうなり、総員一時退避するなり、まっとうな対応をしないといけない。自分の自由になるものではない。ふるさとの母なる山に畏敬の念をもたないといけない。

2月13日 桜島が元気

・昨晩の火映、ごくごく微弱。なきに等しい。Hi-net、どうしちゃったのと心配になるほど静か。

1208.jpg

・日中はよく晴れて、山頂火口を埋めた直径600メートルの溶岩湖の表面から「煙が三筋立つ」。
・桜島がきのうから元気だ。溶岩を先に流し出すのはそっちかも。

2月12日 今後の可能性

昨晩火映なし。



霧島今後の可能性 (1月26日1413の予測がわずか91分で打ち砕かれたにも関わらず、再挑戦)
1 ブルカノ式を何ヵ月か繰り返すだけで終わる。
2 火口縁から溶岩が溢れて流れ出す。
3 1月26-27日のような軽石噴火が2度3度起こる。
4 火砕流が山麓を駆け下って5キロ流れる。
5 火砕流が山麓を駆け下って10キロ流れる。
6 火砕流が四周に30キロ流れて中央に小さなカルデラができる。
7 火砕流が四周に60キロ流れて中央に大きなカルデラができる。
ざっくり言って、1(30%)、2(20%)、3(30%)、4(10%)、5(6%)、6(3%)、7(1%)



JNN報道特集(2011.2.5)からビデオクリップ
新燃岳噴火の火山学的解説
高原町長が30日深夜、避難勧告した理由

YouTubeにおいた上記動画は、5月25日に削除されましたので、下に置き換えました。(5月26日)
新燃岳噴火の火山学的解説
高原町長が30日深夜、避難勧告した理由

2月11日 軽石配布

昨晩の火映は、とても微弱。火口周辺に積雪。
1136 ブルカノ式爆発。宮崎市で空振。レーダーエコー1140青、1145水色。最大振幅:341.0mkine、空振計:244.3Pa、VAAC FL130




現在、配布を中断しています。

軽石を配布します

IMG_0755s.jpg ubitw.jpg

新燃岳山頂火口から8キロに位置する御池小学校に、軽石が7センチ積もりました。1月26-27日の噴火のときです。軽石の上を覆う厚さ1センチの火山灰はその後の噴火で降り積もったものです。1月26-27日の噴火がいかに激しかったかがわかります。

この軽石を全国の希望者にお送りします。火山の勉強に役立ててください。軽石50グラム(写真右)で300円。2月16日からメール便で送ります。軽石が届いて満足したら、銀行振込みまたは定額小為替で後払いしてください。配布希望者は、haruna495@yahoo.co.jpへ住所・氏名・電話番号をメールしてください。用途目的を問いません。

500グラムの注文も承ります。その場合は着払いで送ります。後払いで500円いただきます。こちらの発送開始は2月24日から。

小学校の顕微鏡でもここまで見える

【“2月11日 軽石配布”の続きを読む】

2月10日 高原町長

高原町の日高町長と面会しました

10日12時、高原町の日高町長にお会いすることができました。次のようにお話しました。「30日深夜の避難勧告を全面的に支持します。今後も、住民に危険が迫ったと感じたときは、他からの情報や調整を待つことなく、すみやかに避難を指示してください」

浅間山の噴火地図をお渡しして、200年前(1783年8月4日)に吾妻火砕流が山頂火口から9キロ流れたことを示し、新燃岳が今回このような火砕流を出す可能性がそんなに小さくないことをご説明しました。

江戸時代1716年の例にならうと、次の噴火まで3ヵ月の猶予があります。そんなに長い間ずっと緊張を継続するわけにはいきません。短期的には危機は遠のいたのだから、避難を縮小したのはよかったと申し上げました。しかし、猶予はかならずしも3ヵ月決まっているわけではありません。火山は気まぐれです。猶予は3週間かもしれません。いや、もう来ないかもしれません。確定的な未来予測は(おそらく原理的に)不可能なのだろうと私は考えます。これは、火山学が未熟だからではないと最近思うようになっています。

IMG_0811s.jpg IMG_0869s.jpg 天のさかほこ 

1月26-27日の軽石噴火のとき、地上風は北寄りだったようだ。東南東に伸びる分布軸の北側が粗く、南側が細かい。明日(11日)、霧島東神社で紀元節の行事があります。境内には粗い軽石(最大5cm)がたくさん落ちています。お参りの際には、ぜひ軽石を拾ってお持ち帰りください。天の逆鉾(お守り)もお買い求めになるのをお忘れなく。500円です。

IMG_0808s.jpg IMG_0771s.jpg

半径4キロ以遠で、軽石などのために道路通行止め区間があります。主要道路には人が立っています。インタビューしました。土木事務所から受注した建設会社が下請けに出した警備会社のひとでした。民間です。通行止め区間内に住居があったり用事がある人だけを通しています。通り抜けを禁じています。

4キロの通行止め(写真右)は、バリケードを組んで車で進入できないようになっています。霧島ハイツの先のバリケードを観察していたら警察官が近寄ってきました。どの通行止めにも、法的根拠が一切書いてありませんでした。

Kirishima in eruption, 10 February Fieldwork


2月9日

毎日新聞の2月5日記事

 「気象庁や私たち火山学者は、地下のマグマの状態から危険性を科学的に判断している。その点は信頼してもらいたい」と語るのは、京都大の鎌田浩毅教授(火山学)。高原町の判断に理解を示しつつ「今回は根拠に基づく『安全情報』が、必ずしも地元の『安心』につながらなかった。東京の気象庁と地元の気象台、自治体間で情報共有のあり方に課題を残した」と話す。

 また、火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長(東大名誉教授)は3日の会見で「地元で自ら判断するのは決して悪いことではない。ただ、それが正しい判断かどうかは気象庁と相談した方がいい。また気象庁もそれに応じた情報を出してもらわないと困るので努力をしてほしい」と話した。


リスク評価は科学ではない。しいていえば工学だ。防災対応(リスク管理)に正しいとか間違いはない。あるのは当たったか外れたかだけだ。宝くじと同じである。確率でしか表現できない。確かなことは何ひとつないが、1等が当たる確率と末等が当たる確率は区別できる。

火山学会員に届いた注意喚起メール

霧島山(新燃岳)では火口周辺警報(噴火警戒レベル3,入山規制)が発表され,
現在も噴火活動は継続中です。
http://www.jma.go.jp/jma/press/1102/01a/kirishima20110201.pdf
 規制区域での調査活動は危険を伴うと同時に,地元住民への不満をも引き起こします。
また,万が一規制区域内で事故が発生すると今後の調査観測にも支障を来す恐れがあります。
緊急を要しない規制区域内での調査は避けていただくようお願い申し上げます。
日本火山学会長 中田節也
Wed, 9 Feb 2011 14:07:04 +0900 (JST)


だれか、中に入った研究者がいるのだろうか。緊急を要するかどうかを、だれが判断するのだろうか。これは、緊急を要すれば勝手に入っていい規制なのか。このような依頼をする権限が会長に果たしてあるだろうか。法がないがしろにされている。

2月8日 現地調査

今日から3日間の予定で現地調査中。滞在先は、David A. Johnstone 霧島ロイヤルホテル(高千穂牧場)。

「火山灰じゃないぞ、軽石だぞ。桜島や雲仙岳や有珠山のとは違うぞ。これはすごいんだぞ」

Kirishima in eruption



夏尾小学校(都城市)の校長先生インタビュー。pochipress 



・スミソニアン博物館のビデオギャラリー。軽石や火山灰が降る噴火の解説ビデオ(初級)。日本語字幕も選べます。

2月7日 噴火終了騒動

火映よわい。レーダーエコーなし。Hi-netに顕著な震動なし。新燃岳はいった沈静化したとみられる。ただしブルカノ式爆発は前触れなく続くだろう。

0608 ブルカノ式爆発。赤い火山弾飛散。大浪池カメラでよく見えた。レーダーエコー白。
午後、噴煙止まる。
1630 気象庁「噴火終了」宣言
1836 ブルカノ式爆発、レーダーエコー白1850 

02071727.png 2004.png
インターネットを利用したリスクコミュニケーションを浅間山2004年と比べた。今回は、ツイッターとブログを利用している。2004年は掲示板だった。

現地調査予定 
2月8日から10日、JAL、鹿児島空港、インサイト、David A. Johnstone 霧島ロイヤルホテル。
8日 都城市山田町、西岳小、御池小(1月26日軽石)、霧島ハイツ、
9日 高原町役場、狭野神社(享保軽石)、
10日 杉安病院、林田温泉、
・ヘルメット、帽子、防塵マスク、ゴーグル、サングラス、軍手、フラッシュライト、刷毛、メジャー、カーナビ、ETCカード、GPS、デジカメ、双眼鏡、ノートパソコン、地図、色鉛筆、携帯電話、のど飴、チョコレート、
・ねじり鎌は現地調達(空港セキュリティのため)

2月6日

0316 ブルカノ式爆発。Hi-net、大浪池カメラに赤い火山弾着弾



気象庁火山情報にみられる火山学試験落第答案 (時間がみつかりしだい添削して正解を示します。)
・(軽石といわずに)噴石という。
・(ブルカノ式といわずに)爆発的噴火という。
・大規模噴火、中規模噴火という。(爆発の強さを規模だと表現してる)
・溶岩ドームといった。

ツイッターまとめ
立入規制と避難を気象庁長官が決めていいのか
軽石をあえて噴石と言う気象庁の思惑
県知事と火山学者のツイッター直接会話の記録

YouTube
1月31日JNN、井村ヘリ http://www.youtube.com/watch?v=CFO7uhRxyeU

2月5日 前例に学ぶ

0940 レーダーエコー水色、灰噴火4000m
1100 レーダーエコー水色、灰噴火
1700 高原町が避難勧告を解除。ただし8キロ以内の27世帯73人は継続。
1820-1850 JNN報道特集(プリニー式噴火、火砕流10キロ)



23の1247ころ採取..
高原町花堂(8.7キロ)で2月3日1247に採取された溶岩のかけら(火山れき)。車のガラスを割った。井村隆介さん撮影。26日27日に降った軽石とは違う。噴火の様式が違うからだ。軽石はプリニー式。溶岩のかけらはブルカノ式。火口内を埋めた高温溶岩のうち冷え固まった部分のかけらだ。このブルカノ式爆発の噴煙は火口上空に高く上昇したあと、風で東に流された。VAACによると、その火山灰雲は9キロに達した。

前例に学ぶ

▼1716年
3月11日 水蒸気爆発。泥流。
(8ヵ月)
11月9日 山林、神社仏院ことごとく焼失。
(3ヵ月)
▼1717年
2月7日から10日まで 40キロまで石降る
2月13日 大地震、砂交じり焼石
2月17日から21日まで 火石にて家屋焼失
(7ヵ月)
9月19日 大噴火、田を埋めること数十里(ただし稲の収穫時期だから、災害が大きくなった。噴火自体は2月より小さかったとみられる。堆積物との照合結果もそう)
井村隆介・小林哲夫(1991火山)にその後の知見を加味した。

この噴火は300年前の江戸時代に起こった。新燃岳最大の噴火である。これになぞらえると、いまは1716年11月19日に当たる。3ヵ月後にもっと大きな噴火が起こるのだろうか。



現状把握

新燃岳火口から地下につながる火道のコックは、1月31日午後に閉まっていたと思う。そうではないかとずっと疑っていたが、4日半観察して確信するに至った。

そう思う理由:
1)溶岩湖が31日以来深くなっていない。
2)地殻変動が31日以来停滞している。
3)ときどき起こるブルカノ式爆発は、溶岩湖の冷却に伴う副次的現象だとして説明できる。

これまでの噴出量はテフラ2000万トン、溶岩2700万トン。溶岩湖面の標高1325m。ここ数日のブルカノ式爆発は表面現象にすぎない。

26日27日にあった3回の(小さな)プリニー式では軽石が降った。軽くて丸い。2月になってから大音響を伴ってブルカノ式爆発が毎日2度3度起こっている。これは、火口内を埋めた高温溶岩のうち冷え固まった部分が爆発する。だから、堅くてとがった溶岩のかけらが降る。高原町内の児童生徒には、通学時にヘルメット着用させたほうがよい。

新聞批評

藤井会長は、(略)、今後2週間程度に起こり得る噴火の規模について「(先月)26、27日のような大きなマグマを出すものは想定していない」と話した。(毎日新聞


ずいぶん勇気ある発言だ。しかし26日の(小さな)プリニー式噴火を事前に予報できなかったことが、この発言にまったく根拠がないことを残念ながら証明してしまっている。

新燃岳は現在、溶岩(地表に出たマグマ)が火口の蓋(ふた)をしている状態。この蓋ごと吹き飛ばすような大規模な噴火で、火砕流を起こす可能性も懸念されているが、藤井会長は「ある程度(山の)隆起が戻ってからだと思う。現状ではそれは数週間、1カ月間は可能性が低いだろう」と指摘。26日以降、気象庁が「噴火警戒レベル3」を維持していることについては「予知連が決めることではないが、事態は変わっていない。これでいいと思う」と話した。(同)


「懸念されている」と他人事だが、そのような大規模噴火を誰がどういう根拠で懸念しているのだろう。めずらしい見解だ。古今東西事例を知らない。レベル3を支持する意見であることをしかと承った。

2月4日噴火 現状把握

0943 ブルカノ式爆発。小林市側で大音。
1811 大隈半島東方沖で地震M4.7、鹿屋で震度3



火山の現状把握と未来予測

今朝までに8000 4700万トン出た。これは一年前から地下の浅いところに蓄積されたマグマの量にほぼ見合うらしい。火口観察とも照らし合わせると、毎日900万トンのマグマ注入はストップしている気配が強い。

だからもう噴火は終わり。きのうの予知連はそうおもったフシがある。しかし私はそう思わない。地下の深いところから大量のマグマがいきなり上昇してきて大きな噴火に至ることを心配している。たとえば伊豆大島1986年11月21日の噴火がそれだった。

そのあと、地殻変動を観測してマグマ移動の前兆をキャッチする試みが続けられてきたことは承知している。敬服する。しかし、まだそれができたためしは一度もない。だから、私は懐疑的である。いまこの瞬間にプリニー式噴火が発生しても、文句は言えないとおもっている。

しかし、26日から続いた緊張、いつどうなるかわからない状況からは、徐々に脱しつつあるように感じる。次いつまた始まるか油断はならないが、26日から始まった危機はいったん遠のこうとしているようにみえる。

伊豆大島1986年の場合で言えば、いまは11月19日にあたる。全島避難の21日は来るもしれないが来ないかもしれない。また、来るとしても2日後か20日後か200日後か、わからない。いまの火山学の実力はこんなものだ。

避難を指図するのは誰か

今朝のNHKニュースで女性アナウンサーがこう読んだ「気象庁は4キロ以内に立ち入らないように呼びかけています」気象庁がほんとにそういったかまだ確かめてないが、NHKは指定公共機関だから、この発言をテレビで伝えた責任は重い。気象庁が立ち入り制限をしてはならない。気象庁の職務は、そしてすべきことは、火山監視に基づくリスク評価までである。

言ってよいのは「4キロまでは警戒を要する」まで。その情報を受け取った市町村長が、地域の事情を加味して、どこまでを立ち入り禁止にするかを決める。これが災害対策基本法だ。今朝のNHKは、気象庁長官が違法行為をしているとみんなに振れ回った。指定公共機関だから、自分も共同正犯だというべきだろう。

大雨や大風のとき、外に出るなと気象庁がいうときがある。だから今回の発言もかまわないとする見方があるようだ。しかし大雨と大風のときそれを言うことだって、じつは違法なのだ。軽微だから、そしてそういうことによる社会的利益が大きいから黙認されているにすぎない。

一方、いまの気象庁+NHKの違法行為はけっして軽微でない。地元が大迷惑をこうむっている。地元は、自分に許されているはずの権限を、不法に中央に奪い取られてしまってほとほと困っている。

ブルカノ式はこわくない

ブルカノ式爆発(気象庁が数えている爆発的噴火)は、こうなったら必然である。火口内に6000 2700万トンもの新溶岩が蓄積された。1000度だ。これが常温まで冷えるわけだから、その過程でときどき爆発する。

いまのブルカノ式爆発はそういうものだ。ことの本質ではない。付随的効果だ。ブルカノ式爆発は、火山弾を4キロまで飛ばす。安全をみて5キロまでを危険区域とすれば、その外側は大丈夫だ。せいぜい10キロまで小石が降って、車のガラスが割れるだけ。10キロ以上は、灰が静々と降るだけ。ブルカノ式爆発と共存して生活するのはむずかしくない。鹿児島市がすでにもう何十年もやってきたことだ。

いま心配しなければならないことは、調べるべきことは、このあといつ何が起こるかを定量的かつ具体的に把握して、そのリスクを地元にわかりやすく伝達することだ。リスクコミュニケーションのスキルが求められている。

現地対策本部をつくれ

有珠山2000年噴火で出たマグマは100万トンの桁だ。今回はもう8000 4700万トン出た。桁違いだ。有珠山のときは、噴火前から大勢のひとが現地に詰め掛けて、噴火後直ちに現地に対策本部ができた。今回はすでに10倍以上の噴火なのに、その気配がまったくない。

観測体制の強化だけでは不十分だ。防災体制も強化しないとならない。まずは現地に対策本部をつくれ。

雲仙岳で1991年5月に溶岩ドームが出現した直後、現地で下鶴会長とお会いした。残念ながら、6月3日の火砕流で犠牲者を出してしまったが、下鶴さんが、現地に足をただ運んだだけでなく何日も滞在して親身の心配をしたことを私はよく知っている。

2月3日噴火

早朝 宮崎市田野町に積灰。@kimono_qchan、写真判定で20g/m2。田野町は火口から40キロだから、16万トン。
0809 ブルカノ式爆発、新燃岳南西最大振幅:96.3mkine、湯之野空振計:26.0Pa、レーダーエコーなし。
0830-1130の3時間 @miyakoi01 写真判定1g/m2 宮崎市橘通西4丁目 
1219 ブルカノ式。中央から出た。レーダーエコーなし。
1235 鳴動、そのあと噴煙5キロくらいまで。NHKカメラでずっとみてた。レーダーエコー、1245青、1250水色、1255白
1300 FL300 VAAC 噴煙9キロ
1400 FL300
2000 FL300



tokei.jpg
新燃岳火口縁のランドマークに、時計の短針が指す方角を与えました。

・噴出量(トン) = 200*距離(キロ)*積灰量(g/m2) ただし観測点が分布軸上にある場合。
・1716年火口の中でやってる限り、1716年噴火を上回ることは考えにくい。

2月2日噴火 地図200

0525 ブルカノ式爆発、新燃岳南西最大振幅:340.8mkine、湯之野空振計:299.6Pa、レーダーエコー水色
1047 ブルカノ式爆発、新燃岳南西最大振幅:150.1mkine、湯之野空振計:86.5Pa、レーダーエコー青
1552 ブルカノ式爆発、新燃岳南西最大振幅:530.6mkine、湯之野空振計:72.4Pa、レーダーエコー水色
1622 黒い噴煙、爆発なし、レーダーエコーなし
2045-2125 奇妙な震動(Hi-net)



60kmssonpa.jpg
空振は音波である。新燃岳から都城まで1分20秒、宮崎まで2分30秒かかる。

300km.gif

火山防災用語集
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