PNASという国際的に高く評価されているアメリカの学術誌がある。そこに11月14日に
安成哲平ほかの論文が掲載された。福島第一原発から放出された放射能の分布を日本全体にわたって計算したシミュレーションの結果を報告したものだ。
シミュレーションとは、いくつかの仮定を置いてつくった式のなかに観測データを入れて計算して結果を得る手法だ。得られた結果は事実ではない。そのひとの考え方だ。過去の事実を再現して、それがどんな仕組みで生じたかを探ったり、未来の出来事がどうなるか予想するときにもちいる手法だ。
大学からの記者発表に添付された図。観測事実である文部科学省の航空モニタリングにも私の放射能汚染地図にも、まったく合致しないシミュレーション結果である。彼らは、自分たちがやった計算結果に基づいて、北海道や中国・四国地方を含む日本全国にセシウム汚染が広がっている危惧を強く表明した。喫緊の課題 (an urgent issue) だと書いた。これを解決するために各地で土壌汚染の測定調査をすみやかに実施することが急務だと書いた。なかでも道東の汚染が深刻だろうと主張する地図を印象的に配置した。
しかし彼らは、
道東の土壌調査の結果をそのとき知っていた。その結果(事実)は、彼らの計算結果(意見)の10分の1以下だった。
事実を捨て置いて、自分たちの妄想を垂れ流したわけだ。これは許されることではない。彼らの所属大学である名古屋大学と東京大学はこの論文発表に合わせて
記者発表した。そこには、「新たな風評被害を生むような使い方は絶対にしていただきたくない」と、太字かつ下線で強調した注意書きがあった。はなはだしい自家撞着だ。噴飯ものだ。
NHKテレビニュースの一画面
BBC?案の定、テレビ・新聞はこれを事実であるかのように大々的に取り上げた。一面カラーで大きく報道した新聞もあったと聞く(朝日新聞らしいが未確認)。外国メディアも取り上げた。いま日本社会はこの論文発表によってたいへん混乱している。
▼問題点の整理
・社会的に緊急性のある知見を獲得したといいながら、それを何か月も秘匿した。
・事実でないことを、事実であるかと誤解されやすい形式で発表した。
・自説に不都合な事実を知りながら、無視した。
つまり、利益相反が発生している(2012年3月17日)。
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より大きな地図で 放射能汚染ルート を表示▼3月12日、女川コース2100南相馬市(20.00 uSv/h)、2550女川(21.00)、盛岡。キセノン、ヨウ素、セシウム
▼3月15日、阿武隈・関東平野越え0400いわき市(23.72)、0600さいたま市(0.107)、0600横浜市(0.103)、0700大洗町(1.955)、1000宇都宮市(1.318)、1100さいたま市(1.222)、1200川内村(20.5)、1400前橋市(0.562)、1400那須町(1.04)、1400白河市(4.21)、1400郡山市(8.26)、1500柏東大(0.46)、1640福島市(13.58)、1800さいたま市(1.039)、1800本郷東大(0.72)、1840福島市(24.24)、1900南魚沼市(0.527)、2100白河市(7.56)、2200会津若松市(2.39)、2500前橋市(0.501)。キセノン、ヨウ素、セシウム
、
▼3月15日、飯舘コース1500飯舘村(3.44)、1820飯舘村(44.7)。キセノン、ヨウ素、セシウム
▼3月20日、一関コース1700南相馬(6.78)、1900一関、2000山形市(0.129)、2100米沢市(0.183)。ヨウ素、セシウム
▼3月21日、柏コース0500大洗町(2.047)、1100いわき市(6.00)、1100柏東大(0.80)、1100本郷東大(0.25)、1300横浜市(0.069)、2000川内村(4.01)、2800南魚沼市(0.102)、2900前橋市(0.119)。ヨウ素、セシウム
【“放射能汚染の日時”の続きを読む】
ツイッターを積極的に行っている大学教授4人(私を含む)について、フォロワー数の時間変化を比較した。
【“フォロワー数の推移グラフ(2)”の続きを読む】
16都県の一般廃棄物焼却施設における焼却灰の放射性セシウム濃度測定結果(環境省、2011年8月24日)をプロットしました。地図上のどこでもクリックするとグーグルマップに飛びます。データ数が多いため、2ページに分かれています。工夫すると2ページ同時に表示できます。2011年11月7日
purple 紫 30,000-99,999
red 赤 10,000-29,999
orange 橙 1,000-9,999
yellow 黄 100-999
green 緑 30-99
water 水 0-29
(飛灰 fly ash, Bq/kg)
【“焼却灰のセシウムマップ”の続きを読む】
明日の火曜日、11月8日12:40-14:10です。
現在の放射能問題を、教育学部1年生110人に話します。
場所は、群馬大学教育学部C棟2階西端の大きな講義室です。C-204
7月21日にやった公開授業に、その後の知見を追加して話します。7月21日のときは学部に正式に届けましたが、今回は届けを省略します。外部の方はこっそりいらしてください。
学生110人、一般50人くらい。
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使ったスライド(2.0MB)
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実況ツイートまとめ