早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

噴石の混乱深まる 内閣府と気象庁

きのう(3月19日)公表された「噴火時等の避難に係る火山防災体制の指針」は、噴石の定義を次のように書いている(7ページ)。

噴石 噴火に伴い噴出された石は、その大きさ形状等から、火山岩塊、火山れき、火山弾等に区分されている。本報告書ではこれらの石を総称して噴石とする。


火山れきも噴石と呼ぶと明記している。火山れきは2ミリから64ミリの石のことだから、2ミリより大きい石が噴石と呼ばれることになる。しかし気象庁は、昨年(2007年)12月に公表した噴火警戒レベルの説明で、噴石の語を弾道軌道を描いて空中を飛行した岩塊の意味で統一的に使ったばかりだ。

樽前山
レベル5 1667年及び1739年:大規模噴火、噴石が火口から概ね4kmまで飛散、

北海道駒ヶ岳
レベル3 小噴火が発生し、山頂火口原内に噴石飛散

岩手山
レベル5 噴石は火口から山麓(約4km)まで飛散

吾妻山
レベル3 小~中規模噴火が発生して、火口から概ね4km以内に噴石飛散
【過去事例】
1950年:噴石が火口から約1.2kmまで飛散
1893年:噴石が火口から約1.5kmまで飛散

草津白根山
レベル5 山頂火口から概ね3km以内に噴石飛散

浅間山
レベル3 山頂火口から中噴火が発生し、4km以内に噴石や火砕流が到達
注1)ここでいう噴石とは、主として風の影響を受けずに飛散する大きさのものとする。

以下の火山は略。


直径2ミリの石なら、ちょっとした爆発でも簡単に火口から10キロくらいまで空中を飛行する。風に流されるからだ。上記は、最高レベルの5でも4キロと書いているから、弾道軌道を描いて空中を飛行して着弾点にクレーターをつくる大きな岩塊だけを想定して噴石の語を用いたと解釈される。浅間山では、「主として風の影響を受けずに飛散する大きさのものとする」と、わざわざ注書きまでした。火山学では、直径100ミリを超えると風の影響が無視できると考えるから、火山れきを噴石から除外する意図がこのとき気象庁にあったのは明らかだ。

今回の指針策定には気象庁も大きくかかわったはずだ。これはもう、ずさんだとしかいいようがない。気象庁の火山担当者が日本語を用いた正確な論理表現ができないか、気象庁が内閣府に遠慮して譲ったかのどちらかだ。気象庁の火山責任者は自分がなした朝令暮改に気づいているのだろうか。この問題は、けっして枝葉末節ではない。噴石によるリスクは火山リスクのなかでもっとも頻繁に出現し、人体にとって致命的なリスクだから、このずさんは看過できることではない。

噴火警戒レベルをいまから書き換えるのは、やってもいいが、レベル表全体への波及が大きいからめんどうな作業になるだろう。指針の定義文から「火山れき」を削除するのが簡単だし、合理的な修復方法だ。噴石を、「弾道軌道を描いて空中を飛行した物体」だと定義すればもっとよくなる。ほんとうは、これを機会に、これだけミソがついてしまった噴石の語を気象庁には放棄してもらって、火山弾で置き換えてほしいものだ。私はずいぶん前からそうして使っているが、困難はない。言いたいことをわかりやすい文章で読者に的確に伝えることができている。

2007年12月23日の文章参照

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