早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

不思議探しか未知への探検か

先月、古い友人と居酒屋で何十年ぶりかにまとまった話をした。彼の専門は地球科学だが物理学に寄っている。地質学者よりむしろ地球物理学者というのが適当だろう。彼が言うには、「不思議を探している。不思議をみつけて、その謎を解くにはどうすればよいか考えるのが自分の仕事だ」 

彼のこの発言は、私が、「私の研究は、なに、どこ、いつ、どうやっては考えるが、なぜはあまり考えない」と話したことから派生したようだった。そのあとで、勤務先の同僚の倫理学者に聞いた。「不思議をみつけてそれを解決しようと努力していますか?」 

返ってきた答えは、「(倫理学も哲学も)不思議を探して研究している」私には意外だった。歴史学者にも聞いてみたいのだが、まだ機会がみつからない。(追記参照)

私自身は、不思議をみつけるというより、私の前に時間的空間的に大きく広がる未知をできるだけ詳しく知りたい欲求が強い。だから、誰よりも先に自分が知る(みつける)ところに喜びを感じる。それがどんな小さなことであっても、いつも内心でほくそ笑んでいる。


四国の室戸岬には高い海岸段丘があって、その地域が隆起していることがわかる。しかしGPSで観測すると、毎年5ミリずつ沈降している。ここに不思議がみつかった。この不思議の謎は、150年に一度の南海地震で一気に1m隆起するモデルで説明できる。

日本全土を覆う姶良丹沢火山灰の発見は、火山の地質学の分野で20世紀にあった画期的前進のひとつである。しかし、そこに不思議は介在しない。それまでは想像できなかった現象が、発見されたのみである。

姶良丹沢火山灰は、南九州にシラス台地をつくった大きな火砕流噴火のときに上空に立ち昇った火山灰が風に流されて日本全土に降り積もったものである。2万8000年前のある日に起こった。この火山灰の発見は、火山学だけでなく、等時間面を与える鍵層として層序学にも大きく貢献した。

それ以前は、これほど大きい規模の火山灰が存在することは知られていなかった。その後、アカホヤ火山灰など、同規模の火山灰が続々と発見された。日本では、およそ1万年に1回の頻度でこの規模の噴火が起こっていることがわかってきた。この規模の噴火では1000億あるいは1兆トンのマグマが噴出して、噴出源が陥没してカルデラができる。これをカルデラ破局噴火と呼ぶ。

ここまで研究史を追っても、(大自然の驚異に恐れおののくことはあるが)不思議はどこにも介在しない。地質学の根幹には不思議探しはないのではなかろうか。不思議探しは物理学特有の問題意識なのではあるまいか。



(12月24日追記)

歴史学者に聞いた。不思議を探しているつもりはないという。過去を詳しく知りたいのが研究する動機だという。自分のことを科学者だとは思っていないとのことだった。そういえば数学者にも聞いた。彼は自分は数学者だから、科学者だと言われると違和感があると述べた。

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