早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

2月18日 システム改革

1816 真っ赤な火山弾放出とともに黒い噴煙が上がる。火山雷。ブルカノ式というには空振が小さかった。最大振幅:247.9mkine、空振計:31.4Pa、気象レーダエコー、1820赤、1825青、1830白、VAAC FL180 5400メートル。噴煙は下層では南西に向かったが、上空でねじれて南東へ。10万トン。

この噴火は、火山弾を飛び散らせはしたものの、爆発力が弱かった。しかし出た量はこれまでのブルカノ式爆発と同じ程度、あるいは多いほうだったとみられる。噴出時間が長かったので多くの量が出た。勢いよく出ている時間が10分を超えて続いた。その後も、弱まりながら1時間近く続いた。

これは、桜島や阿蘇でみられる灰噴火の特徴だ。灰噴火は、爆発音なしに、つまり火山弾を飛ばすことなく、灰を何時間も、ときには一日中降らせる。新燃岳も、桜島と同じようにブルカノ式爆発と灰噴火を、これからしばらく(溶岩湖が十分に冷えるまで)続ける。それは、山頂火口内に溶岩湖がある限り続き、おそらく1年程度の長さだろう。

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南西5.5キロに降り積もった火山灰。小麦粉のように細かい(火山シルト)。灰噴火の特徴も備える。団塊として降った。噴出量をおよそ10万トンと見積もる。

ツイッターによる2月18日1816噴火実況



火山防災システムの改革が必要

火山防災を実現するためには、人材確保だけではダメだ。いまのシステムを変えないといけない。まずは、科学だけでやろうしている姿勢を正さないといけない。科学だけでなく、広く学術全体に知恵を求める。とくに歴史学に近い地質学(マグマ学でない)の本格的導入が必須だ。また学術以外の行政・教育・情報伝達との連携も必要だ。

火山災害はめったにおこらないから経験の蓄積がむずかしい。季節的に起こる気象災害は物理学を中核とした科学でうまく対応できるが、火山災害はそうはいかない。新燃岳のように何百年ぶりの現象に立ち向かうためには、過去を探る地質学の知見を使わないとどうにもならない。現在の観測だけでは無理だ。

新燃岳では何百年ぶりでも、日本全体でとらえればこれは何十年ぶりの噴火だ。目を世界にも向ければ、十年に一度や二度は起こっている噴火だ。こういう見方が求められる。過去の類例として新燃岳の1716年噴火だけに目を奪われてはならない。事例をもっと広く世界に求めなければならない。

火山防災は科学ではない。原因と結果、メカニズムの解明、前兆現象の検知、そういう物理学の手法では限界がある。確率論的な予知に私たちは進むべきだ。向こう1年の間に、火砕流が10キロまで流れる確率は○%などの情報を出すことが社会に役に立つ。

火砕流が出る前にはこういうことが起こる。いったん出ると、これくらいの速さでここまで進んで、これくらい壊滅的打撃を与える。その進む向きは地形に依存する一方で、ときには直進もする、などといった火山学の基本を、すくなくとも火山麓の子どもたちには教える必要がある。学校教育の問題だ。

地質学者を名乗ってこの国の噴火予報にかかわっている学者の多くは、じつは岩石学者であって、ホンモノの地質学者ではない。きちんとトレーニングされた地質学者の知見を求めないから、おかしな情報に依拠したとんまな予報になっている。

噴火予報のシステム改革をするなら、気象庁幹部に優秀な地質学者をひとり入れる。これが特効薬だ。大学観測所の定員をいま増やしたところで、どうにもならない。

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