早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

2月19日 死都日本

昨晩は月明かりがまぶしかった。火映は1816噴火直後にみられた微弱なものを除いて、観察できなかった。



気象庁長官による違法な立入規制

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きょう静岡大学で実施された霧島山報告会で投影されたスライド @disaster_i

このスライドに書かれた総合観測班のルールにおかしな点がある。「規制区域に立ち入る時事務局と福岡管区気象台火山監視・情報センターに問い合わせ、確認。出る時事務局に連絡」 ここでいう事務局は気象庁火山課であると、上に書いてある。「規制区域はA(火口から3km以内、風下4km以内)とB(ほぼ3~4km)があり、観測で入れるのはBのみ」ともある。この規制は気象庁が実施していることを証明してしまっている。この規制は違法だ。そして、法的根拠がない。

災害時の立ち入り規制は、災害対策基本法によると市町村長の専権事項だ。気象庁が口を挟めるものではない。気象庁長官がいま霧島山で公然と違法行為をしている。これは許されるべきことではない。

この規制は、総合観測班だけに当てはまる自己規制だの言い逃れがあるかもしれない。しかし2月9日に火山学会員に届いた注意喚起メールを読むと、そうであるとは言えない。

現在、霧島山で噴火対策として4キロ規制が行なわれているのなら、それは霧島市長と高原町長によってなされているべきだ。その根拠を63条に求めるのなら、法律に定められた「警戒区域」という呼称を用いるべきだ。そうでないなら、いま霧島山には防災目的の立入規制は敷かれていない。

立入規制の行為主体を、法に定められた市町村長にすみやかに戻すべきである。法治国家が放置してよいことがらではない。

じつは、この下地は2004年の浅間山噴火の前からあった。浅間山では地元自治体が63条警戒区域を敷いている。1973年の噴火以来ずっとだ。にもかかわらず、気象庁軽井沢測候所(当時)が山頂調査をするとき、市町村長の許可をいちいち取得して行なっていたようにはみえない。

ときには新聞記者や雑誌記者を連れて規制範囲内に上がった。記者たちはその報告を堂々と公にしていた。ある記事には、火口縁まで登ってきた一般登山者を測候所長が追い返す場面が書かれている。記者を同行していながら、そこに来た一般登山者を追い返すとはどういうことだ。

こういうことの繰り返しが、気象庁をして自分が規制しているのだと大きな勘違いをさせてしまったのだろう。いまからでも遅くない。みずからの行為を恥じて、過ちをすみやかに正すべきだ。

→ 立入規制と避難を気象庁長官が決めていいのか



死都日本シナリオのリスク

もし江戸時代と同じで、新燃岳が2000万トンだか5000万トンだかのマグマを蓄積してはその分だけ吐き出すのを繰り返すなら、たいした危険はない。江戸時代の火砕流は3キロまでしか流れなかった。せいぜい5キロまで警戒すれば十分だろう。

しかし地下の深いところに鎮座する何億トンあるいは何十億トンのマグマが一気に噴き出すとこれはたいへんな災害になる。10億トンなら、浅間山1783年、1108年と同じ。火砕流が9キロあるいは12キロまで届く。私は2月12日にこの確率を6%と見積もった。もし1000億トンなら死都日本の世界だ。この確率はいま1%。

死都日本が描いたカルデラ破局噴火を日本列島は、平均して1万年に1回経験してきた歴史を私は知っている。今回がそれである可能性を否定する根拠を私はみつけることができない。

死都日本(M7)シナリオでの死者数は100万人。確率1%なら期待値(確率論の用語)は1万人。火砕流10キロ(M5)シナリオの死者数は1万人。確率6%なら期待値600人。のほうが大きい。

リスクは大きいものから順に手当てするのが、限られた富を有効配分するときの原則だが、発生確率が極端に低いリスクは、それがいくら高リスクでも社会に無視される傾向がある。それは、ひとの寿命(80年)とか政治家の任期(4年)に依存して起こる現象である。

いまのところまだM3だ。江戸時代1716年噴火はM4で止まった。Mは噴火マグニチュード。噴出重量の常用対数。M5が10億トン。

→ 現代都市を脅かすカルデラ破局噴火のリスク評価 (2003年11月) 

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