
ハワイ・キラウエア火山で目覚しいことが起こりました。異常は、ハワイ時間で土曜日14時ころから(日本時間では日曜日9時ころから)始まりました。まずは山の収縮が観測されました。つづいて、1983年1月からもう28年もほとんどずっと噴火ているプウオオの火口底が急激に下がり始めました。同時に地震がたくさん起こり始めました。
プウオオは、キラウエアの中心ハレマウマウから東に延びる噴火帯(東リフトゾーン)の上にあります。1715、東リフトゾーンの別の場所から噴火が始まりました。1997年に噴火したナパウクレーターのそばだそうです。
ハレマウマウの火口底にのぞいている溶岩湖のレベルも下がったそうです。以上、アメリカ地質調査所USGSから出た情報によります。防災対策は国立公園がやっています。チェインオブクレーターズ道路閉鎖とトレイル閉鎖、だそうです。ただし、ハレマウマウには普段どおりに観光客が行ってる。
キラウエアの地図。上から4つ目の地図のなかでNapau の文字をみつけてください。
【問題】 東リフトゾーンは、ハレマウマウからまず南東へ向かってしばらくしてから、東に向かっています。これはなぜでしょうか。
プウオオの傾斜変化めざましい。 (いまは落ち着いている)
アメリカ地質調査所は、自分たちが何のために何をしているか、こう書いている。
The USGS serves the nation by providing reliable scientific information to: describe and understand the Earth; minimize loss of life and property from natural disasters; manage water, biological, energy, and mineral resources; and enhance and protect our quality of life.
新しい噴火割れ目が開いたナパウ火口には、前の噴火1997年1月の2年後、1998年12月に学生たちと行ったことを思い出した。貿易風で、プウオオからの二酸化硫黄ガスがトレイルを直撃するので閉口した。
いま現在のウェブカム。マグマのしぶきを噴き上げる噴火は終了したようだ。 前回1997年1月の噴火ショーも1日で終わった。
プウオオから発して地下のトンネルを10キロ流れて太平洋に注ぐシステムは、日曜日の段階でこのまま続くか断ち切られるかは1日くらい様子を見ないと判断できないとアメリカ地質調査所は書いた。そして、月曜日になってinactive(不活発)と書いている。断ち切られたかもしれない。となると、新しい地下システムがいつどこにどういうふうにできるか注目だ。
オリジナル英文。アメリカ地質調査所は、10年以上キラウエアの現状をウェブで毎朝報告している。それは十分長文であり、科学的内容があり、信頼が置ける情報だ。今回のようにめざましいイベントがあると、夕方にも報告する。
画像や動画もすみやかに提供している。そして何より重要なことは、防災対応にけっして口を挟まないことだ。市民防衛や国立公園がとった処置を間接的に伝えるのみ。アメリカ地質調査所は、火山の現状解説と近未来予測だけを科学的に述べる。とても信頼されている。
アメリカ地質調査所には、火山学で博士を取得した研究者がごろごろいる。世界で一番すぐれた火山研究所だ。その火山学者は、物理学と化学(岩石学)だけでなく地質学を専門とするひとも同じようにいて、同じように活躍している。むしろ地質学専門者がリーダーシップをとっていると言える。
アメリカでは、(日本と違って)geologistは誇り高い言葉だ。一般のひとはgeologistを尊敬している。geologistがいう言葉に真剣に耳を傾ける。自分の子どもをgeologistにしたいと思っている親が少なくないようにみえる。
2008年3月、ハレマウマウで噴火が70年ぶりに噴火が起こっていまより緊張したときのアメリカ地質調査所の対応を紹介したブログエントリ。「リスク管理には踏み込まないハワイ火山観測所」「ハワイの火山監視 国と地方自治体の役割分担」そのときの住民の声。なんとすばらしいひとたちだろうか。こういう火山文化をわが国でも持ちたいものだ。
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