早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

放射能汚染地図の読み方

2011年3月11日に太平洋で起こった大きな地震と津波によって福島第一原子力発電所が壊れて大量の放射性物質が外に漏れ出した。汚染の主流は福島原発から北西方向に延びて福島市に達したあと、南に向きを変えて郡山市に向かった。福島原発から200キロも離れた千葉県東葛地方にも中程度の汚染スポットが見られる。地図には、8マイクロシーベルト毎時を最大として、4、2、1、0.5、0.25の6段階等値線が引いてある。地上1メートルの測定値である。

福島県教育委員会が県内1600の学校・幼稚園の放射線量を測定して場所と数値を発表したのは4月8日夕刻だった。インターネットでそれをみつけた私は、各市町村から高い数値ひとつふたつを選んでグーグルマップに数値をプロットした。それに8、2、0.5の等値線をつけて公開した。この作業に要した時間は2時間だった。これが、この種の放射能汚染地図の最初である。2週間後の4月21日、萩原佐知子さんがきれいにデザインしてくれた地図を初版としてインターネット上で公開した。

496446916.jpg 18june2001JGs.jpg 
4月8日22時のグーグルマップと6月18日放射能汚染地図(改訂版)

私は100点余りをプロットして疲れてしまったが、その後、@nnistarさんが福島県だけでなく東北関東地方全域の自治体が発表する測定値を収集して、色分けして地図上にプロットする作業を続けている。たいへんな努力である。感謝したい。ここに掲げた地図は、6月18日までに@nnistarさんが収集した7000余りのプロットを私がみて等値線をすっかり引き直した改訂版である。@nnistarさんの地図のプロット数は6月28日時点で1万3000を超えているが、引くべき等値線のかたちはあまり変わらない。すべての測定値が、@nnistarさんのページに整理されて公開されている。

放射能汚染の分布を決めたのは風である。噴火によって火山から吐き出される火山灰は上空数キロから十数キロを吹く高空の風で移動するが、福島原発から漏れた放射性物質は地表風に乗って移動した。当時の気象データを見ると、上空1キロ以上の風ではこの分布を説明できない。放射性物質は高さ数十メートルの風に乗って地表をなめるように移動したのだ。盆地や山肌など地形の起伏を感じ取って分布しているのはそのためである。

福島原発から少なくとも三方向に汚染ルートが伸びている。それぞれ日時が違う。各地のモニタリングポストが記録した時間ごとの測定値を読み取ると、それぞれが次のタイミングで汚染されたことがわかる。

北へ向かって一関市に至った放射能雲は3月12日21時に南相馬市を通過した。南へ向かって東京に達した放射能雲は3月15日4時にいわき市を通過した。これは茨城県内で枝分かれして10時半に宇都宮市に、14時に郡山市に達した。枝分かれはもうひとつあって12時に前橋市に達したあと、夕刻以降に軽井沢町と沼田市に届いた。

飯舘村が深刻な汚染に見舞われたのは、同じ3月15日の18時のことである。その日は夕刻になって福島原発に吹きつける風が南東からに変わった。これが福島県にとって悪魔の風となった。特別に濃い放射能雲が出現して19時に福島市、20時半に郡山市に達した。郡山市はその日午後に南から汚染されたあと、夜になってふたたび北から汚染されたわけだ。この放射能雲は白河の関を越えて栃木県内に侵入し、那須と日光に達した。

千葉県東葛地方が汚染されたのは、その1週間後、3月21日から23日にかけてだった。21日6時に水戸市を通過した放射能雲は9時に東京新宿に達した。この3日間、関東地方には強い雨が断続的に降った。放射性物質を含んだ空気が北からやってきて、南からやってきた湿った空気とそこでぶつかった。東葛地方や霞ヶ浦にみられる汚染スポットのかたちと大きさは、放射能雲の濃度または雨の強さで決まった。

この汚染ルートとタイミングは、福島原発で起こった爆発日時と合わない。1号機は3月12日15時36分に爆発した。3号機は3月14日11時01分に爆発した。福島原発から大量の放射性物質が漏れたのは、爆発の瞬間ではなかった。爆発からしばらく時間を置いて、原発建屋から音もなく静かに漏れ出したようにみえる。

週刊金曜日2011年7月8日発売号に提供した元原稿。週刊金曜日の許可を得て掲載。)

コメント

このブログの放射線地図は大変役立ってます。農家の人もコレを参考にすれば、もっと違った対応ができたのではと思います。

  • 2011/07/23(土) 11:06:20 |
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  • baga #-
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前橋の開業医です。
いつも大変参考にさせていただいております。

最後の段落について、
3月15日(火)の午前中にも爆発のようなものがあったように記憶しています。
前橋沼田が汚染されたのは、その爆発ということでしょうか。

先生の3月14日、15日のツイログを見て驚きました。私も全く同じ行動パターンでした。
ずっと自宅で篭城していたものの、15日昼の爆発を見た瞬間に家族子供を連れて西日本へ避難しました。

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  • 2011/07/26(火) 13:51:21 |
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関東地方のホットスポットの源

地図データありがとうございます。
3月21日の関東地方のヒットスポットの発生源については、下記の失敗学会サイトに掲載しています。
http://www.shippai.org/images/html/news559/YoshiokaMemo53.pdf

2度目のメルトダウン

震災10日後、2度目の溶融か 福島3号機、専門家指摘
http://www.asahi.com/national/update/0807/TKY201108070330.html

今朝のニュースを見て「あっ!!」と思いました。21日から23日にかけて関東に高濃度汚染をもたらしたという雲は、もしかしてこれが原因なのでしょうか。。この頃にはある程度最初の爆発から時間が経っていたので油断しており、無防備に雨を浴びてしまったことが悔やまれます。

  • 2011/08/08(月) 14:14:38 |
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