
この写真は、今年の4月8日、ちょうどお花見の時期の水元公園です。手元の測定器は0.258μSv/h。子どもたちを含め、多くの人たちが、無防備に芝生の上でくつろぐ姿を、みなさんはどう思いますか。
行政は市民の不安を除く目的で講演会を開くため、この放射能はたいしたことない。安心して下さいの結論になりがちです。しかし0.258μSv/hに汚染された水元公園でくつろぐ人々は、その意味を本当にわかってるのでしょうか。私はここで、調べた事実をありのまま率直に話します。やさしいことはもとより、余分な配慮をするつもりもありません。そうすることで、みなさん一人ひとりが現実を直視して、きちんと、この放射能と向き合ってもらいたいからです。
昨年3月に福島原発は爆発し、屋根も壁も見るも無残、めちゃめちゃに壊れてしまいました。このように原発が壊れたら、放射能が出るのは当たり前です。我々はそれを目の当たりにしたのです。なまやさしいものでないと認識して下さい。


事故当時、国民に公表されなかったスピーディは、放射能の影響を予測するため作られたシステムです。これを利用し、11年前2001年4/1~4/30までの30日間、三宅島の噴火で出される二酸化硫黄の動きが調べられました。11年前のスピーディ・シミュレーションは、三宅島から出た二酸化硫黄が東日本全体に軽々と広がる様子を、生き生きとしたアニメーションで表現していました。現在のスピーディは、もっと進化していることでしょう。
福島原発があのように爆発すれば、放射能は東京まで簡単にくる恐ろしい状況になるだろうと、11年前のスピーディを見て知っていた私はとても怖かった。そして実際、放射能は関東までやってきたのです。
放射線量の地図づくり
原発の爆発で、日本がどのように放射能汚染されたのか把握する必要があると思い懸命に調べました。ウェブに公開された、福島県の400くらいの学校の放射能数値をもとに、昨年4/8に作ったのが、最初の汚染マップの原形です。マップを作ってみると、福島中通り全部が2μSv/h とわかり、中通りは全滅だ、これは大変なことがおこったと、頭をかかえました。急いで人々にこの事実を知らせなければと、作ったその日の夜10時に汚染マップをネットに公開しました。福島中通り全部が、2μSv/hに汚染されたのだから、きっと世の中は大騒ぎになるだろうと思ったが、不思議なことに多くの人々は、この事実を気にしていないように見えた。世間とのこの認識の違いは、現在でもまだ継続しています。


汚染マップは、今まで6回更新し、現在7訂版を用意している最中です。各自治体が測った測定値を、nnistarさんが大変な努力で日本地図にプロットしてくれたものや、その他の情報も参考にして、等値線を引いて作っています。噴火で火山灰がどこにどのように分布するかを研究するのが、私の専門です。そのスキルを充分に活かして、この放射能の惨禍を、きちんと後世に残したいと思い、あらゆるデータを集め、なるべく正確に近づけようと努力をしています。


今まで更新してきた汚染マップの中で、昨年6/18に作った改訂版が一番すぐれていると自負している。一関、群馬、東葛など基本的な汚染の分布を、あの早い時点ですべて表現できたことは、自慢していい仕事だと思っています。
学者は普通、自分の研究を世間に発表するまでに長い時間をかけます。間違うことを恐れる。だから本当にいいとなるまで公表しない。しかし今回の放射能の場合、そんな悠長なことをしていては、人々が危険にさらされてしまいます。放射能汚染の情報は、日本人が早急に必要としていると信じたので、多少間違っていても、その時のベストを、すみやかに出そうと思った。時間をかけて正確を期しても、役に立たないと判断しました。結果、みなさんに利用されてよかった。
みなさんがいまがやるべきことは、自分の地域がどれくらい汚染されたのかをしっかり把握し、それに対応することです。対応が無理なら逃げる。現実を直視して、いまある放射能ときちんと向き合うことが大切です。


北総線沿線の放射線量を、5月のはじめに測ったところ、成田が0.1μSv/h。千葉は0.08μSv/h。金町は0.26μSv/hでした。東京は皇居のあたりが0.08μSv/hくらいなので、金町はこの3倍は汚れています。
去年の3月に、福島原発からきた放射能の雲は、運悪く金町までやってきて、ここを汚してしまいました。東京の中で、とくに汚染がひどいところだと認識してください。いっぽう、千葉の柏は、0.4μSv/h。金町の2倍汚れています。
0.26μSv/hに汚染されてしまった金町は、柏と似たような状況です。汚染された事実をよく把握して、きれいに掃除をすれば、住めると思う。だから定期的にこまめに掃除をして、身近から汚れているものをどかす努力をして下さい。
3種類の地図
汚染の程度を調べるため、3種類の地図を作りました。ひとつは「チェルノブイリとの比較図」、それから日本列島の「焼却灰に含まれるセシウムの分布図(ベクレル)」、そして「雨どいと「黒い物質」の分布図(シーベルト)」です。




「チェルノブイリとの比較図」チェルノブイリは、セシウム137の平米あたりベクレルが示してあります。フクシマは、シーベルトからセシウム137寄与分だけ取り出し、ベクレルに換算、色をあわせてチェルノブイリと比較しました。比較した地図の色わけをみると、福島から栃木の那須あたりまでが、チェルノブイリでの、移住権利区域におよそ相当するとわかります(1μSv/h以上185000Bq/㎡以上の色分け)。葛飾区金町は、ゴメリ市に近い感じだろう。チェルノブイリとくらべ、汚染された面積の程度はフクシマのほうが小さい。しかし汚染された日本の大都会には、何百万もの人が住んでいる。この汚染にさらされた人間の数からすると、日本のほうがひどいのではないかと感じてます。
この一年間ずっと、日本政府も、テレビも新聞も、ある一群のジャーナリストたちも、「フクシマは、チェルノブイリのようにひどくはない」といった発言をしてきています。しかし、私はこれとは違う意見をもっています。今回の福島原発による汚染は、影響を受ける人間の数から考えると、チェルノブイリと同じか、あるいはひどいのではないかと思います。私のこの認識は、世間と大きく違っているようです。
「焼却灰のセシウムの分布図」は、日本全国各地でみんなが出すゴミを、焼却場で燃やしたあと、焼却炉の中に残った飛灰の汚染程度をベクレルであらわしたものです。これを見ると、その地域の平均的な汚染の程度がよくわかります。焼却灰から出たセシウムの数値を見ると、福島を中心に、関東地方は全部、ひどく汚れています。柏、松戸などは、何万ベクレルとゆう数値です。長野や新潟までいってやっと数十ベクレルの値に落ちている。
「津波がれきを持ってきて燃やしたら、自分のとこが汚染される」などゆってる場合ではない。関東に住んでるみなさんが、毎日生活して出すゴミが、津波がれきより高い放射能を持っていることが、焼却灰のセシウム図からみてとれます。津波がれきは放射能をたいして持っていません。「みなさんが出す食べ物やら何やらのゴミこそが、すごい放射能を持っている。」とゆうことを、まずしっかり認識してほしいのです。東北関東は、全部汚れてしまっているのです。
焼却灰のセシウム図で、日本全体を見渡すと、名古屋、大阪まで汚れているのがひとめでわかります。名古屋や大阪の人たちの出すゴミもセシウムを持っている。札幌や九州はまだきれいだ。注目すべきは、小笠原が汚れていることです。小笠原が汚れているのは、福島から来た放射能の雲で汚染されたからではなく、汚れた食べ物が運びこまれたからだと思う。小笠原に運び込まれた汚れたものを、消費して燃やしたから、焼却灰のベクレル値が高く出ていると推察します。
これから先は、人間がどれだけ放射能を拡散するかとゆうことが、大きな気がかりになってゆくと思います。
「雨どいと「黒い物質」の分布図」は、雨どいの出口のところを測ったものと、「黒い物質」を測った数値をあらわしたものです。「黒い物質」とは、風や水で集められ濃縮汚染された、道路わきにある砂や泥などのことです。
西のほうは大阪、箕面市まで汚れています。ふつうのところはきれいなのに、雨どいからは高い数値が出ている。鳥取は、福島原発由来の汚染ではありません。もともとこの地域の自然放射線量が高い。九州、北海道はきれいです。
「チェルノブイリとの比較図」、「焼却灰のセシウム」、そして「雨どいと「黒い物質」の分布図」、この3種類の地図が示す汚染データは、日本がどれくらい汚れているのかを、私たちにつきつけています。しっかり認識してください。
質問1
葛飾区男性....大阪府箕面市の汚染データは、どういったところで信頼がおけると判断したのか。
せんせ...このデータを出したひとは、いろいろなところを測って、バックグラウンドの自然放射線量と比較していたからです。大阪府箕面市は、兵庫県宝塚市との県境にあります。データは、雨どいの「黒い物質」と、すぐそばの場所を比較していた。普通はこうなのに、雨どいのところだけこんなに高い数値が出ると示していたので、明らかに汚染されたとわかるのです。
葛飾区男性....小笠原の放射線量はもともと高かった可能性は?
せんせ....小笠原は、焼却灰から出たセシウムの話をしています。自然放射線は関係ない。地域のゴミから何百ベクレルも放射能が出るのは、異常事態です。
西亀有の男性....東日本は食べ物のせいで、焼却灰のベクレルが高いと解釈していいか?
せんせ....違います。食べ物が起因する汚染は、小笠原の話だけです。
東金町の男性...「焼却灰のセシウム」データいつごろのもの?
せんせ...昨年7月8月のものをマップにしました。その後のデータ見ると、冬になって下がっているところが多い。千葉は冬に減ったが、また上がってきている。焼却灰のセシウムのデータは、ネット上で公開されています。各自治体の測り方や頻度などにいろいろ問題もあるが、春の傾向は、もう少しデータを集めて判断しないといけない。ぜひみんなで調べて、情報を共有しましょう。
汚染の日時
放射能は、福島原発から大きく5回、①3/12、②3/15の朝、③3/15の夕方、④3/20、⑤3/21の順に原発から外に出ました。最初3/12の一号基の爆発のあと、数時間してから、放射能は北に行って女川が汚れました。次は3/15の朝、関東地方から山沿いに福島あたりが汚れました。同じ日3/15の夕方には、別の放射能の雲で飯館が汚されました。3/20には一関が、そして3/21の朝方に出た放射能の雲が、葛飾区金町までやってきたのです。


多くの人は、原発の爆発映像がすごいので、それと同時に放射能が出たと思っているようですが、実際は違います。爆発から10~20時間あとになって、こっそり出ている。これは、各地のモニタリングポストの数値をみればわかります。各地のモニタリングポストの数値は、ウェブ上で調べることができます。飯館で、44μSv/hでたことなども記録してあります。爆発後の肝心なとき、福島などは、5分~10分おきに放射能の数値を測っていたことがわかります。
原子炉の圧力が下がったときに放射能は出たと解釈すると、12日に女川を汚した放射能は1号基から出たもの。15日に関東や福島に来たものは2号基から、21日金町にきた放射能は3号基から出たものと推察できます。
放射能は、1号基、2号基、3号基と律儀に順番に、音もなく姿も見えずこっそりと出ました。そして、葛飾区金町のみなさんは、今おもに、昨年の3/21に3号基から出た放射能によって、悩まされているわけなのです。
昨年3/15の放射能は、東京の上空を通り過ぎ、群馬、栃木の山沿いに降った雨でそこに落ち、さらに福島、郡山にもどって雪が降って地表を大きく汚しました。このとき東京は雨の予報だったが、ぎりぎりのところで雨を免れました。福島や郡山は、1μSv/h~2μSv/hの放射線量があるが、もし昨年の3/15に東京に雨が降っていれば、放射能は東京の地べたに落ち、福島や郡山と同じだけ汚染されていたはずです。東京は壊滅的な打撃をうけていたでしょう。
3/15の埼玉のデータをみると、この日の6時、10時、18時の3回、放射能の雲がきたことがわかります。6時、0.03→0.10μSv/h。11時、0.45→1.22μSv/h。18時、0.31→1.03μSv/h。18時に 1.0μSv/h だったが、20時に 0.1μSv/h と、1時間ちょっとで数値が下がっていることから、このときの放射能は地べたに落ちずにそのまま群馬にいったと考えられます。


1週間後、3/21の東大柏のデータを見ると、前日 0.1μSv/h だった値が、翌朝9時いきなり 0.7μSv/h に上がっている。これは大変な上昇です。この時はどしゃぶりの雨で、高い数値は下がらず一日続いています。東大柏で計測された 0.7μSv/h は、翌3/22になっても、ずっとしぶとく残り続け、結局いまでも 0.4μSv/h はあります。3/21の汚染が、柏を苦しめているのです。
金町に近い足立区のデータをみると、21日は0.1μSv/h が 0.2μSv/h に上がっただけだが、22日の10時には、0.48μSv/h と急に上昇している。このことから、金町の汚染は3/22だったかもしれない。
このころ金町浄水場で放射性物質が検出され、乳幼児用に粉ミルク溶くボトルの水をくばっていた。水道の水が飲めなければ、そこには暮らせない。少なくとも3/21~23の金町は、人が住める状況では無かったとゆうことです。
3/15はヨウ素やキセノンなど半減期の短い元素がきて、これを吸い込んだら身体の中に放射能が入ったが、地べたに落ちず群馬に流れた。いっぽう3/21はセシウムが雨で地べたに落とされ、いまもなお金町にたくさんある状況だと理解して下さい。
放射能の詳細分布と除染
学者はそれがどんなに怖い話でも、事実を明らかにし、みなに伝えるのが仕事です。いっぽう行政は、対策を取らねばならないから、その対策が行政の手に余る場合、事実を無いものにすることもあります。今まさに、それがおこっている。どんなに怖い話であっても、事実は変わらないのです。だから学者は、真摯にそれをつたえ続ける。行政は、対策をとるのが仕事ですが、今それが適切になされていないと感じる。もう少し、事実に即した対応をしたほうがいいと思う。
火山の噴火で出る火山灰などは、10km~20km移動し高いとこから均一に降るので、どこを測っても同じ値がでるが、放射能は、上空100mくらいを移動し雨で落とされたので、雨の強く降ったところ弱く降ったところで差がでる。
佐々木さんが作った東葛の汚染マップを見ると、汚染の濃いとこと薄いとこが、まだら模様になっています。東葛ほど汚れていなくても、葛飾区の水元公園などは、雨がたくさん降り、放射能が多くたたき落とされたので汚染が濃くでます。
放射能が降ったところは、場所によってずいぶん違います。汚染がひどいところはどこか、細かく調べるため、駅が読み取れるくらいの大縮尺の地図を作る必要があります。まず地元の人が自分たちで、地元の汚染マップを作って下さい。


いまセシウムがあるところは、金町のような都会では、側溝、雨どい、水たまりや吹き溜まりです。風でホコリが集まり、雨で流され濃縮されたものが「黒い物質」となり、吹き溜まりにたまってゆきます。これを早急に排除してください。「黒い物質」は、いちど排除しても、また雨風で集まってくるから、季節ごとに毎月そうじする必要があります。今まで以上に努力し、街をきれいにピカピカに磨きあげないと、0.26μSv/hに汚染された町には住んでいられません。
群馬や長野の山のほうでは、放射能はほとんど動いてません。福島も山ばかりです。大陸にあるような岩山であれば、除染もできるだろうが、緑豊かな日本の山を丸裸にしてしまったら、放射能よりもっとひどいことが起きます。除染はできません。
葉っぱや落ち葉、小枝などにセシウムはついています。きのこ、筍、川魚がひどく汚染されているから避けるように、自分たちの生活空間の中からこれを排除して、子どもたちがそこにゆかないよう対応することが、いま求められています。
季節変化と経年変化
地表に降ったセシウムは、ホコリについています。地表の砂やホコリと一緒にあっちにいったりこっちにいったりしているわけですから、風塵のゆくえは、花粉に注意すると同じように注意する必要があります。


群馬大学生の村上くんが作った「風塵堆積量の季節変化」を調べたデータを見てみると、風塵は、一年間同じように堆積しているわけではなく、一年のうち、おもに4月5月に集中して堆積していることがわかります。冬の間、地面が凍って地べたについていたホコリは、4月5月になり、気温が上がって地表が乾き風が吹くと、まいあがります。6月になると梅雨になり、雨が降って草がはえるので、地表は固まり、風塵のまいあがりも止まります。
福島市で出している定時降下物データを見ると、雨の降ってない、乾燥した風の強い日に、セシウムが多く検出されているようです。最大瞬間風速が、20m /秒もある乾燥した日は、子どもは学校を休ませてもいいくらいだと感じます。

セシウムは、いつまでもあるわけでなく、ほっておいても半減期で減ってゆきます。さいたま市北区の数十箇所を測定して比較しました。昨年9月と今年3月では、約13%の減少が見られました。昨年3月の汚染状況をそのままとどめている地点の放射能が、6ヵ月で約13%へっている観測事実は、セシウム134と137のブレンドぐあいから計算した、6ヵ月の半減期にマッチします。自然のなかでは、セシウムはほとんど動いていないことがわかります。
地域の汚染を代表する測定値は、セシウムが移動しない場所、人間が動かしてないようなところを選んで測らなければなりません。やみくもにどこでもいいから測って、セシウムが浸食された後の数値をだしても、それは地域を代表する測定値にはならないのです。

福島原発から出たセシウムは、134と137の割合が、ほぼ半々のブレンドです。最初は半減期2年のセシウム134がせっせとへりますが、そのあと半減期30年の137は、のんびりゆっくりなかなかへらないイメージです。学習院の田崎先生が作られたグラフで、セシウムは半分になるのに3年、1/3になるのに5年かかります。5年たつとセシウム134のせっせとへる崩壊はおわってしまい、あとはほとんどへらないから、がまんするしかありません。
自分たちのすんでいる地域の汚染を代表する放射線量を把握して、原発事故から3年あるいは5年たったあと、自分のすむ地域のセシウムが、半減期でどのくらいの数値になるのか計算すれば、それぞれの将来設計に役立てることができます。
金町は、東京の中でもいちばん放射線量が高い認識を強く持って、食品から入ってくる内部被曝の防御とともに、自分たちの街をいかにきれいにして、汚れた部分をなくし、外部被曝に対応してゆくかの努力をする必要があります。
放射能測定器
放射能測定器の数値のゆらぎを、3台のエアカウンターSと2台のシンチを使って、学生の井上くんに調べてもらいました。シンチは10万円以上と高価だが、60秒で安定した信頼のおける数値をだし、非常に高性能だとわかります。


エアカウンターSは、測り始めて2分たってから数値が安定します。これも過去60秒の平均を出しています。公称では20%のゆれ幅があり、0.05マイクロ以下は測れません。しかし6000円とゆう値段にしては、充分健闘してると思います。
ガイガーは数値がばらつき、0.1 以下は高く出てしまう。いっぽうエアカウンターSは、それほど精度は悪くない。地面の放射線の変化の中に入ってしまうくらいの揺らぎなので、気にすることなく、どんどん測るのがよいと思う。
質問2
藤沢の湘南パパさん..藤沢の自宅はシンチで0.03μSv/hくらい。エアカウンターSだと、0.05の点滅になって測れません。
せんせ..いっぽう0.26μSv/hの金町は、6000円のエアカウンターSで充分測れますね。
金町女性....測定器の説明書には、高さ1mで測るようにと書いてあるが。
せんせ....どうゆう高さで測らなければならないなどの制限はない。買った人がいろいろな使い方をするのは自由だ。自分で好きに使いなさい。測定器の使い方として、ちなみにボクは、地図を作るときは、芝生の上1mの数値で測ります。また、雨どいや「黒い物質」などを測るときは、地べたに直接つけて測ります。市民一人ひとりが、測定器をもって測れば、自分たちを痛めつけている放射能がどうゆうものなのか、肌身でわかるようになります。いろいろ気にすることなく、どんどん測って、みなで情報を共有しましょう。
放射能のリスク
昨年3月の原発事故から今日まで、日本がどのように汚染されてしまったかの事実を懸命に追いかけ、13ヶ月この放射能とつきあってきました。現実を直視して自分なりに考えた、このリスクと社会のあり方について述べたいと思います。
たとえば1000人に1人の病気があるとしたら、0.1%です。これが何かの原因でもう0.1%増えて、病気になる人が2人になれば、医者はすぐ異常発生と気がつきます。チェルノブイリの小児甲状腺がんがこれです。
いっぽう1000人に500人の病気であれば、50%です。何かの原因で0.1%増え、病気になる人が501人になっても区別つかず、その異常発生は、わかりません。測定誤差と自然のゆらぎのなかにすっかり埋没してしまうのです。
日本人の50%はがんになると疫学的にわかってます。この会場にいる180人のうち90人はがんになるとわかっている。そのがんが0.1%増えても、それが異常発生かどうかなどは、どんなに医学が発展しても区別がつかないのです。
「チェルノブイリ事故による放射能の被害は、小児甲状腺がんだけだ。他に何も害悪は及ぼされていない」とゆうのがこれまでの政府そして日本を代表する学者たちの意見です。しかし、私はそうではないと思うのです。観測できなくても、存在するものがあります。放射線は、DNAを損傷してがんを引き起こす、と医学的にわかっている理屈から考えると、放射線による小児甲状腺がん以外の害毒もありえる、との推論もまた正しいと考えます。
疫学的に観測できないからとゆう理由だけで、小児甲状腺がん以外に、放射線による害毒は存在しないと結論づけるのは、おかしなことだと考えます。観測できないことを理由に、存在しないと思うのは誤りです。
20mSvの被曝で、0.1%がん死するだろうとのICRPリスク値を多くの人が認めて議論しているようなので、この仮定で考えをすすめてみます。1000万人の集団の0.1%といえば、1万人です。汚染状況重点調査地域の推計人口だけでも、690万人いるので、その他入れたら、放射能のリスクにさらされている人口は、1000万人に達します。今こうゆう人たちが、0.1%でがんになるとするリスクにさらされています。金町0.2μSv/hは、10年も浴びれば20mSvになる。福島は、いま1μSv/hだから、1年で約10mSv 。食べ物からも呼吸からも、身体の中に入ってくること考えれば、20mSvのリスクにさらされている人間は多い。
日本人は毎年100万人死んでいるが、100万人が101万人になってもわからない、たいした問題ではないとゆう人もいます。しかし私は、わからないでは許されないと思う。1万人の過剰な死を容認することは、到底できません。がんになった誰が、この過剰な1万人かを特定して知ることができなくても、1万人の過剰がんは、だれかに責任がある、誰かの行為によって引き起こされた、ほんらい必要なかった死です。社会として、これを許してはいけないと思います。
1万人の過剰な死の原因を作った人たちは、責任を取って罰せられるべきだし、警察も捜査すべきだと思う。またそうゆう社会にしなければならない。だれも責任を問われないで、1年以上も過ぎているのは、いったいどうしたんだと率直に思います。
たとえば、交通事故を例にとってみます。これまで毎年1万人の犠牲者がでていたが、信号機やガードレールを設置したり、警察官が違反者を取り締まったり、大変な努力とお金をかけ、交通事故死を年間5000人におさえこみました。努力のかいあって、毎年1万人の交通事故の犠牲者が5000人になった。1万人に1人の犠牲者が、2万人に1人になりました。それでもなお、お金をかけ予算をつけて対策をとっています。いっぽう、放射能に対してはどうでしょうか。
放射能による過剰な1万人の死に対しても、少なくとも交通事故対策にかける費用に匹敵する予算を投入しないといけない。国が、放射能の惨禍に立ち向かってゆく必要があるが、いまそうなっていない。これを大変、不満に思っています。1万人の過剰がんが発生しないよう、細心の注意をはらって防御するのが、健全な通常の社会の姿と思います。1年間、放射能の汚染状況を調べてきましたが、この放射能の惨禍には国をあげて対応することが必要だと私は切実に考えます。
質問3
葛飾区高砂、男性…外から家の中に持ち込まれた放射性物質への対処は?
せんせ…5番(自分で考える)ボクの家では、家中を水ぶきして掃除、カーテンを洗う、ベランダの掃除、排水溝にたまる落ち葉のかたづけ、などしています。
市川、女性...3/15の15時から18時まで外にいた。
せんせ...出かけた場所に近い東大本郷では、17時の0.4 が18時に0.7μSv/hに上昇。埼玉の18時は1.0μSv/hです。放射能すった可能性は大きい(笑)。
市川、女性...3/21は家にいたが、22日は2歳の子どもと外にでていた。当時は地震で家が倒壊するのが怖かった。関東に放射能がくるなら、政府が発表してくれるものと、自分で情報集めしてなかったことを、いま後悔している。
せんせ...国民にわかるように情報をださない政府も悪いが、「政府からのアナウンスがないから、放射能がくるとは思わなかった」と、自分で勉強して考えることをしなかった国民も悪いとボクは思っています。ボクはいろいろな情報の中から役に立つものを取り出し、みなに判断してもらいたいと、できるかぎり発信をしている。3/15は計画停電だったが、電源復活と同時に「今日は家にいないとまずい。外に出てはダメだ」と懸命にツイした。
放射能のことで1年やってきたが、私たちの国は、いま地震に非常に脆弱な状況にもある。つぎ地震がきたらどうしようかの考えも必要です。3/17に長野に5日間くらい避難したが、当時は放射能が2割、地震が8割の割合で怖かった。
世の中には、放射能のリスクだけではなく、地震のリスクもある。他にも、集団登校の中に車がつっこんでくる。そういった、たくさんのリスクの中で、どうやって怪我をしないで生きてゆくことができるかを考えてゆかなければならない。
金町が東京でいちばん放射能で汚れていることは事実だが、放射能だけに対応すればいいとゆうわけではない。放射能に対応するため、どのくらいの時間やお金を使うことが適当なのか、それぞれが考えて対応してゆくことが大事なのです。
学者である私は「金町は東京で一番汚染されていて、それは柏の半分くらい、福島市の1/4~1/5くらい」というふうに、みなさんにリスクを数量的に説明することまではできます。それを受け取って考えるのは、みなさんの仕事です。
自分の生活の中で、リスクをどのように管理して、付き合ってゆくかは、みなさんそれぞれが考えてゆくしかない。なぜなら、人それぞれによって、財力も家族構成も、いろいろな状況も違うから、他人が指示することはできないのです。
船橋、男性…ICRPのリスク係数がよくわからない。
せんせ…ICRPのリスク評価は、専門家のあいだで議論すればいいことです。ここでは1000万人の集団が0.1%で死ぬかもしれないリスクを、仮定して話をすすめています。大事なのは、この事故によって1万人の過剰な死が発生しないよう、細心の注意をはらって防御すべきことだと思います。3/11の津波で亡くなった人は約2万人。この半分の人が、さらに死ぬかもしれないなど、とんでもないことです。
高砂、男性…昨年の大量放出後、新たにここまで放射能がきたデータはあるか?
せんせ...ひとつもありません。今年1月に、福島市で大量の放射能が観測され、心配でいろいろ調べたが、すべて福島原発から出たとみられる情報はない。福島市の説明でも、今年の1月2日に観測された大量の放射能は、昨年3月にまき散らされた放射能が、風で飛んだものだとあります。今でている放射能が、金町にも、福島市までにもとどいているとは思えません。
福島原発から、放射能は今も出ていますが、それよりはるかにケタの大きい量が、昨年3月にまき散らされました。現在でている放射能のことを心配するより、すでに身近に来てしまった、大量の放射能に、対処することが必要です。
亀有、男性…焼却灰のセシウム図は、飛灰が環境に飛び散ったものか?
せんせ…ここに示した焼却灰のセシウム図は、焼却炉の中に残った灰に含まれているセシウムで、煙突から出たものではない。煙突から出たもののデータはわからない。焼却炉の煙突から出るものがどれくらいセシウムをもっているか、ボク自身はそんなに多いとは思っていない。小さなものを広範囲に拡散するために煙突は高いし、それはむしろ効率的な方法とも思っている。これに関しては楽観的です。
多くの人が煙突から拡散される放射能を怖いと思う感情は、理解している。それとは別に、焼却炉の中に残った8000Bq/kg を超える灰は、毎日何トンと増えて、各自治体でその処理に手こずっている現実も見なければなりません。
横浜、女性…がれきの広域処理を、みなが反対しているが、先生の考えは?
せんせ…がれきを、広域で受け入れる必要はない。日本各地が、がれきを受け入れなければならない理由は、誰も納得ゆくように説明できていません。がれきを、日本各地が受け入れる必要はありません。
しかし多くの人は、がれきが放射能をもっているからといって反対している。この考えはおかしい。津波がれきは、放射能を持っていません。岩手はほとんど汚れていないのです。
金町も横浜も、岩手の津波がれきより、ずっとよごれている事実があります。みなさんの自治体の焼却灰は、8000Bq/kg を超え、埋めることさえできずに倉庫にたまっています。津波がれきのほうがよっぽどきれいなのです。
放射能は、むしろ自分たちのところにあります。放射能を理由にがれき受け入れを拒否するのは愚かしい。関東に住んでるみなさんが、毎日生活して出すゴミが、津波がれきより高い放射能を持ってる現実に、きちんと目を向けてください。
金町、男性…福島原発がつぎに重大な局面をむかえるのは、どんなときか?
せんせ…わかりません。それは、原子炉自体に注目し研究している大勢のグループがいるので、その専門家に聞いてください。ボクはそのことに興味はありません。
原子炉がどんな理屈でどう壊れたか研究する人がいるように、火山がなぜ噴火するかを研究してる人もいる。ボクは火山が噴火したあと、火山灰がどれだけ出て、どう動いてゆくかに興味もって研究しています。放射能に関しても同じです。
わたしが自分の専門を活かす道は、次に何かおこったらどうなるか、あるいは3月におきたことは、何だったかをきちんと把握し、世間に知らしめることだと思っています。専門でないことを考えても、たいした仕事はできない。
過去の歴史と現状をきちんと把握すれば、未来に対処できると考えています。だからそのための研究をしている。未来予測はしない。原子炉の未来予測もしない。これが私の、学者としてのスタンスです。
流山、女性…流山は金町より緑の多い環境で、葉っぱの処理が心配。去年汚れた落ち葉を掃除すれば、今年でる若葉は、汚れてないと考えていいか?
せんせ…今年の若葉は、去年の半分くらいの汚れがあると心配しなければならないと思う。葉っぱの問題は、まさしくお茶のはなし。静岡茶を中心として関係者は、お茶から汚染はもうでないとの前提でやってるようだが、それは完全に楽観的だと思う。私は、今年も新茶を検査すれば、汚染は検出されるはずだと意見表明しています。
地表にあるセシウムが、生態系の中でどう動いてゆくか、はっきりしたことはまだ誰にもわからない。私たちはチェルノブイリ以後はじめての経験をしているわけです。その中で、お茶の葉がどのように汚染されるかは、予想するしかないのです。
お茶の葉からベクレルが出るのは、空気中に舞ったセシウムほこりが、葉に付着するからだと考えます。しかしお茶の人たちは、根からセシウムを吸っていると思ってるようだ。この解釈の違いが、未来予測を全く違ったものにしています。
私の解釈では、一年の中でも特に風塵の多い4月5月の春先に、お茶の葉はセシウムほこりを多く集め、風塵が舞い上がらなくなる6月以降はへってゆく。そしてこの汚染は、半減期のへり方にそって、毎年繰り返されると想像しています。
セシウムは、4月5月の風で舞って、今年もまたお茶の葉につき、汚染はでると私は考えていますが、お茶業界の関係者たちは、去年4番茶以降、あまり汚染が出ていないので、今年も汚染はでないとたかをくくっているようです。
今年、お茶の汚染がどのようにでるかに注目して、みなさんは来年の予想をしてください。どのメカニズムを採用するかで、未来予測はずいぶんと違ってくるのです。
流山の落ち葉の件ですが、表層の落ち葉の上にセシウムがあるので、表層5~10cmの落ち葉をぜんぶ取ってしまえば、状況はかなりよくなると思うが、そのあと除去した落ち葉をどこに持ってゆくかの問題がまっています。
原発の近くに中間貯蔵地を作って、そこにもってゆけばいいのだが、今は各県で処分してくださいとなっている。福島県などでも、みな自分たちの敷地内に埋めるしかない状況です。むずかしい処理状況を思うと、本当にお気の毒です。
葛飾、女性…土壌汚染のある田んぼや校庭に、汚染されてない土を入れて、薄めるやり方は効果あるのか?子どもが幼稚園で、田植え体験をするようだが、その時土をいれて薄める方法で、田んぼの汚染を軽減するとのこと。それが心配だ。葛飾区では、0.25μSv/h 以上の砂場なら除染してくれるが、0.24μSv/h の場合は、砂をたすなどの対処をすると聞いている。
せんせ…問題は、土壌の汚染がどの程度うすまるかではなく、それが人体にどれだけの影響をあたえるかです。自分の子どもに、どれだけの影響があるかを考えてください。基本的なスタンスとしては、余計な被ばくは避けるべきです。数10ベクレルの田んぼでも、子どもに素足で田植え経験させるのは、余計な被ばくを強いることだと私は思います。
セシウムが入った田んぼに素足で入って、被ばくさせながら子どもに田植えを経験させるのは、愚かしいことです。もしそのあと、子供が病気になったら、そのせいではないかと一生悔やむことになる。私なら耐えられません。そうゆう自然に親しむようなことを、どうしても子どもにしてやりたければ、西日本や北海道に引っ越したらいい。そこまでできないなら、余計な被ばくをさけ、なるべく被ばくをしないですむような自然体験をさせることが必要と思います。
こうして葛飾区民のみなさんの真剣なまなざしに、怖いくらいの気迫を感じながらも、一年間、放射能とつきあってきた思いを熱く語ったせんせーのスマイルは、どこまでもひたすらさわやかだったのですた。