早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

災害時の新しいインターネットツール

昨年11月12日、桐生市で行った講演の内容を文章にしました。一部をここでご覧にいれます。

5.新しいインターネットツール

すでに述べたように,掲示板には脆弱性がある。いま掲示板に代わるべき新しいインターネットツールとして,ブログとソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の二つに災害時利用の将来性が認められる。

ブログは,簡単につくることができるホームページである。インターネットに接続したパソコンさえあれば,ホームページ作成ソフトを用意したりサーバへのアップロードを心配したりせずに,誰でもすぐに開設することができる。軽微な広告掲載を受諾すれば,無料で利用することができる。

掲示板では主宰者の書き込みも外来者の書き込みも同じように表示されるが,ブログでは自分が書く本文と他者からのコメントが差別化されて表示される。ブログでは自分の個性を色濃く表現することが簡単である。他者からコメントが書き込まれるとメールで通知を受けられるし,IPアドレスを識別して特定の相手からの書き込みを禁止することもできる。このような機能を使えば,双方向のコミュニケーションを確保したまま思い通りのページを運営することができる。

写真はもちろん,ブログサービスによっては動画も掲載できる。そして巨大システムの一部を借り受けているわけだから,アクセス集中に強い。火山噴火が起こって火山ブログのアクセス数が急に増えても,数十万に及ぶ種々雑多なサイトからなるブログサービス全体がダウンするとは考えられない。さらに,ブログに書き込まれた内容は検索エンジンにすみやかに反映される。ブログ専用の検索エンジンを利用すると,書き込んでからわずか数分で検索にかかるほどだ。

SNSは,インターネットの中に存在する紹介制のコミュニティである。わが国ではMixiがもっともよく普及している。友人から招待されてMixiに加入したメンバーは,かならず自分のページを持つ。そこに書くプロフィール,日記,マイミクシィ(友人リスト),参加コミュニティ一覧には,そのひとの個性が描出される。掲示板では自己紹介をしない限り書き込み者のバックグラウンドを推し量るのはむずかしいが,Mixiでは書き込み者のページを見ればその人物像を容易につかむことができる。他者のページを見ると,そこには「足あと」と呼ばれる痕跡が残る。見た人だけでなく,見られた人も誰に見られたかを知ることができる仕組みである。こうして,信用が互いに担保されたかたちで情報交換が行われる。

同好の者たちがつくるコミュニティには次の三種がある。1)だれでも参加できる。話題を公開する。2)参加するには許可がいる。話題を公開する。3)参加するには許可がいる。話題を公開しない。目的に応じてこれら三種のコミュニティをうまく使い分ければ,災害時のコミュニケーション・ツールとしてSNSが大いに役立つ可能性がある。なおSNSの中で飛び交う情報は,検索エンジンにかからない。

情報やデータをインターネットで共有しようとすると,著作権の壁が立ちはだかる。リンクは著作権法32条がいう引用ですらないから,いま問題ではない。リンクは相手に無断でしてかまわない。しかしテキストの全文転載や画像掲載は,相手に無断ですることはできない。禁じられている。一部の検索エンジンは,自社サーバにページの複製を蓄積してキャッシュとしてユーザに提供している。このサービスは検索語がハイライトされて使いやすいが,著作者の公衆送信権(著作権法23条)を侵害している状態にある。アメリカ合衆国の著作権法ではfair use(公正利用)という考え方が採用されていて,正当な理由があれば著作権者の許可がなくても著作物を利用できる。アメリカ合衆国ではキャッシュサービスの提供が違法にならないらしい。災害時における円滑な情報共有を進めるために,わが国でもこのような考え方が法律に反映されることを期待したい。

6.まとめ

インターネットは便利な情報交換ツールにもはや留まっていない。すでに放送の領域に踏み込んだ。災害時にインターネットが果たす役割は、今後ますます大きくなっていくであろう。掲示板はシステムとして脆弱だから、これからの災害時の情報交換にはブログやSNSが使われるだろう。この新技術を広く普及させるためには、著作権についての社会的合意を更新する必要がある。


(2007年4月13日追記)

SNSはこれまでのネットツールと何が違うか

いまSNSは参加するものではなく、運営するものになった。そして、これまで別のネットツールが果たしていた役割を受け継ごうとしている。

これまでは、何か新しいプロジェクトを始めるたびにメーリングリストをつくっていた。しかしこれからは、SNSの中にコミュニティをつくる。コミュニティをつくるのはとても簡単だし、メンバー登録・更新という煩雑な管理操作が必要ない。需要があるコミュニティは、放っておいても自然に成長する。他のメンバーに無用なメールが届くことを心配して書き込みを自粛する必要も、SNSコミュニティにはない。ひとにまったく迷惑かけることなく、いくらでも書き込める。

SNSは掲示板よりすぐれている。掲示板は平面的だが、SNSは立体的である。掲示板はひとつの画面しか持たないが、SNSにはたくさんの画面が存在する。メンバーはその中から好きなところを選んで閲覧する。

SNSが代替できないネットツールは、まず、メールである。メールアカウントは何物にも代えがたい重要なものである。それがないとSNSにそもそも加入できない。ブログは広く一般に意見を公開するための場として、これからも存続して、SNSと同様に発展を続けるに違いない。

SNSにはふつう招待制が採用されるが、メンバーが増えて巨大化すると、招待制を維持する意味が薄れるだろう。巨大化したSNSは自由登録制に移行するのではないか。そうなったSNSが魅力を保ち続けることができるかどうか、興味深い。

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