早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

さまざまな放射線量率

放射線の強さを示すシーベルト毎時という単位は、測り方によってずいぶん変わります。上空から航空機で測ったとき、地上に恒久設置した線量計で測ったとき、体内臓器が実際に受ける放射線量、遮へいを考慮した日平均など、さまざまなシーベルト毎時があります。ただし、それらには比例関係があります。ここでは、その比がいくつなのかをわかりやすく説明します。

航空機計測

航空機計測は上空300メートルから行いますから、そうして作った地図は直径300メートルほどの地域の平均的な汚染度合いを示しています。3年前、森林の上に降り注いだセシウム粒は、林床に落ちたあとほとんど動いていません。放射性物質の半減期に支配されて汚染程度がゆっくり減少する様子が3年後のいま航空機地図によく表現されています。3年たったいま、おおむね半減してます。

一方、都市空間では事故後3年間の風雨によってセシウム粒があらかた移動しました。建物の屋根やアスファルト道路でそれが顕著です。裸の土が露出した地表にあったセシウム粒もほとんど失われました。さらに人為による除染もなされました。航空機地図による都市の汚染が何を示しているか、その科学的な意味は、もはやはっきりしません。

私の放射能汚染地図

私がつくった放射能汚染地図は、2011年3月に地表に落ちたセシウム粒がそのままの状態で保存されている場所の放射線量を示しています。2011年9月の値で表現しました。森林は航空機地図とよく合います。都市は、航空機地図より高い汚染を示します。

私の地図も文科省の航空機地図も、地上1メートルで測ったときの値で表現してあります。航空機計測は高さ300メートルで測った数値を高さ1メートルに換算しています。


モニタリングポストとリアルタイム線量計

地上に設置されたモニタリングポストやリアルタイム線量計の数値は、航空機地図あるいは私の地図のおおむね0.5倍を示します。それは、設置場所が3年前の状態を留めていないところに選定されることが多いことと、設置作業そのものが状況を改変してしまう(除染にあたる)ためです。

個人線量

モニタリングポストやリアルタイム線量計が示す数値をそっくりそのまま人体が被ばくするわけではありません。人体はほとんど水でできていますから放射線を遮る効果をもちます。遮へいといいます。体内臓器が被ばくする量(個人線量)はおおむね0.7倍になります。0.5倍の0.7倍だから、ここで元の0.35倍になりました。

室内遮へい

ひとは夜になると家の中に入ります。外にあるセシウムの粒から家の中に届く放射線は弱いから被ばくは軽減されます。これも遮へいです。家の中にはいると外の0.4倍になるとみなします。1日のうち16時間を家の中に留まるとすると、日平均は0.6倍になります。(0.4*16+1.0*8)/24

といういわけで、0.5倍の0.7倍の0.6倍ですから、元の0.21倍になります。このように、ひとが実際に被ばくする量は、航空機地図や私の地図に示された数値の1/5程度であることがわかります。これはよいニュースです。

さまざまな放射線量率(μSv/h)の換算比
1.00 航空機計測でつくった地図、私の放射能汚染地図
0.50 モニタリングポストやリアルタイム線量計
0.35 体内臓器が実際に被ばくする量(個人線量)
0.21 室内遮へいを考慮した1日平均



考察

あと知っておくべきことは、よく言われる年1ミリシーベルトは、もともとあった被ばくを超える追加分だということです。事故前からもともと年0.4ミリ自然被ばくしていましたから、総被ばく量で言うと年1.4ミリになります。

国が汚染状況重点調査地域を決めたときの毎時0.23マイクロを決めた計算はこうです。年1ミリを24時間365日で割ると0.114マイクロ。これを遮へい効果0.6で割って0.19マイクロ。自然放射線量0.04マイクロを足して0.23マイクロ。

この計算を2011年12月に発表した環境省は実効線量0.7倍を忘れていました。正しくはこうでした。0.19マイクロを0.7で割って0.27マイクロ。0.04マイクロを足して0.31マイクロ。年1ミリ追加は、毎時0.23マイクロではなく毎時0.31マイクロだったのです。環境省は、すみやかに訂正すべきです。

年1ミリシーベルト追加の領域は、福島県外にはもはや存在しません。この安心情報はもっと広く知られてよいと思います。

シーベルトは放射線の強さをあらわす単位なのですが、どうやって測ったかを言わないと5倍くらい平気で意味が違ってしまうやっかいな単位です。シーベルトで数値を言うときは、どうやって測った数値であるかがすぐわかるようにしておきたいものです。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad