早川由紀夫・高田将志
1994年9月に執筆開始するも、雑誌に投稿するに届かず。早川と高田は1994年8月17日に鷲羽岳に登った。

図1 インデックスマップ。鷲羽池は立山と焼岳の中間、活火山がちょうど期待される位置にある。
鷲羽池テフラ:砂礫まじり粘土質テフラ
基本層序:20cm泥炭/鷲羽池テフラ/5cm泥炭/鬼界アカホヤ
鷲羽池テフラの上下の泥炭の炭素年代は5.07/5.43ka.この時代の炭素年代は数百年若くでることがしられているから,鷲羽池の最後の噴火は6.0kaと考えられる.アカホヤを7.333kaとおもえば(福沢1994第四紀要旨),それが5cm下にあるのはたいへんうまい.
泥炭の堆積速度は,25cm/7.333ky = 3.4cm/kyとなる.これは北海道や尾瀬ケ原で測られている100cm/kyよりかなり遅い.
分布:どうやら南に分布軸をもつようだ.しかし東と北でのデータがないので確かなことはいいにくい.
20cmの等厚線が24km2をおおうから,噴火マグニチュードMは3.7と計算される.

図2 鷲羽池テフラの厚さ(cm)。AL: 火山豆石、BL: 弾道岩塊(直径50cm)、WS: 湿ったサージ
三俣蓮華岳山頂下の登山道分岐では多量の火山豆石が観察できる.ほかにも2箇所で火山豆石を観察した.
三俣蓮華岳北東斜面にはガラス質の弾道岩塊が地表に露出している.
三俣山荘ふきんには湿ったサージ堆積物がある.
鷲羽池の火口地形は新鮮で,氷食作用を受けていないようにみえる.

図3 (上)鷲羽池火口。背後は槍ヶ岳。(下)泥炭中に挟まれる火山灰。

図4 三俣蓮華岳山頂下の登山道分岐で観察できる火山豆石。写真をクリックして拡大すると、火山豆石がよくわかります。
中野(1989)は鷲羽池火口の地形が新しいことに注目してスコリアや爆発角礫層が火口周辺に分布することを報告しているが,北アルプスの広範囲で泥炭中にみつかるこのテフラの存在には言及していない.また,具体的噴火年代についても触れていない.
清水ほか(1988)は鷲羽池ふきんから流した赤沢溶岩のカリウム-アルゴン年代を0.12±0.01Maと報告している.
文献
・藤平彬文(1980)太郎山の泥炭層。富山県自然保護、86,6
・本多啓七(1965)日本北アルプスにおけるガキ田の生態。北アルプスの自然、古今書院、173-185.
・小林武彦(1990)内蔵助雪渓の周辺に分布する最新世テフラ層。平成元年度科学研究費補助金(総合研究A)研究成果報告書「日本最古の化石氷床(北アルプス内蔵助沢)の構造と形成に関する研究(研究代表者:樋口敬二)。170-180
・中野俊(1989)北アルプス、鷲羽・雲ノ平火山の地質。火山、34,197-212.
・大角泰夫・熊田恭一(1971)高山土壌に関する研究。日土肥誌、42,45-51,183-188,265-269,270-272.
・高田将志(1992)北アルプス薬師岳周辺の周氷河性平滑斜面。地学雑誌、101(7),594-614

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