早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

噴火警報(3)

2000年夏の三宅島を考えてみます。補助金団体に成り下がっていた三宅村には自己決定能力と意思がありませんでした。三宅村は完全に東京都の支配下にありました。さて東京都が何をしたかしなかったか。彼らは、気象庁が緊急火山情報を出さないことを理由に(あるいは気象庁に緊急火山情報を出させないよう画策して)、島民を長いこと避難させませんでした。

結局、9月1日にわけのわからない避難指示に至ったわけですが、もしあれが緊急火山情報ではなく噴火警報体制下だったなら、噴火警報なしに避難指示に進むことはできなかったでしょう。8月29日の火砕流をもってしても、社会の圧力が東京都の権力を打ち負かすまでには至らなかったでしょう。

気象庁から噴火警報が出なければ、住民の生活を苦しめる結果になるに決まっている避難指示を首長がみずからの意志と責任で出すとは思われません。噴火警報が出ないことを最大の理由にして住民を日常生活に引き留めるでしょう。噴火警報なしの避難指示は、実社会では不可能だとみます。こんな重大な判断の岐路となる噴火警報を、ひとり気象庁に任せてよいのでしょうか。

緊急地震速報と火山警戒レベルという、ごく一部の新しい仕組みの導入をもってして、地震噴火の情報伝達システムの全体を支える根幹を安易に変更しようとする今回の改正案に私は賛成できません。緊急地震速報は、通信の速度が地震波の速度よりずっと速いことを利用して、地震波の到来を10秒程度前に予測するものです。社会が長いあいだ期待してきた地震予知とはまったく異なるものです。

火山警戒レベルは、すでにある火山活動度レベルの名前を変えただけのものです。現行の火山活動度レベルの中身はたいへんずさんです。たとえば噴石という用語の使い方をみればわかります。このことはすでに述べたことがありますので、ここでは繰り返しません。火山活動度レベルは実際の火山噴火危機で役に立ったことがないどころか、浅間山の2004年噴火では混乱を招いたやっかいものです。火山警戒レベルへの名称変更に伴って、内容が少しは改善されるのでしょうか。

問題の本質を解決したようにはみえないこれら二つを大きく掲げて、地震と火山の警報が出せるくらいまで自分たちが前進したともし主張するなら、それは噴飯物です。

(この文章は10月4日に書きました。そのときここにも掲示しようかと思いましたが、やめました。しかし、やっぱり掲示することにします。本日少し改変しました。)


ちばさんの掲示板への私の書き込み。ここに記録として残します。


15399. 2007年11月17日 07時10分43秒  投稿:早川 
 [http://kipuka.blog70.fc2.com/]
ごぶさたしていました。

ブログとSNS隆盛の時代ですが、この掲示板の社会的存在価値はいまでも2000年当
時と変わらず大きいと感じています。

さて、気象業務法の改正案が11月14日に参議院本会議で可決成立しました。来月
から施行されるだろうとのことです。

気象庁のページを見ますと、今回の改正が次を含むことがわかります。

> (2)気象庁以外の者に対する地震又は火山現象の予報の業務の許可
>  気象庁以外の者が地震動又は火山現象の予報の業務を行おうとする場合は、
気象庁長官の許可を受けなければならないこととする。
>
> (3)気象庁以外の者による地震及び火山現象の警報の制限
>  気象庁以外の者は、地震動及び火山現象の警報をしてはならないこととする。
>
http://www.jma.go.jp/jma/press/0710/11b/071011_houritsuan.html

この掲示板が「地震動又は火山現象の予報の業務を行おうと」意図している場合
は、気象庁長官の許可を受ける必要が生じます。

この掲示板で「地震動及び火山現象の警報」をすることは、違法行為になります。

この件について、オーナーであるちばさんや書き込み常連のみなさんの意見をお
伺いしたいと思います。

私自身もブログで火山の未来予測を公表していますので、たいへん気になるとこ
ろです。


15405. 2007年11月17日 20時19分59秒  投稿:早川 
 [http://www.jma.go.jp/jma/kishou/minkan/kyoka.html]
予報も業務も、気象庁は定義して公表しています。

http://www.jma.go.jp/jma/kishou/minkan/kyoka.html
からリンクされているpdfファイル
予報業務許可の手引き  (平成17年11月8日改訂版) [PDFファイル形式:364KB]
によると、

> ● 予報の業務とは
> 予報とは気象業務法によって「観測の成果に基づく現象の予想の発表」と
> 定義されています。具体的には、「時」と「場所」を特定して、今後生じる
> 自然現象の状況を、観測の成果を基に自然科学的方法によって予想し、その
> 結果を世の中へ表向きに知らせることをいいます。
> 業務とは「定時的または非定時的に反復・継続して行われる行為」をいい
> ます。
> よって、例えば、気温や天気などの予想結果を世の中に対して反復・継続
> して発表することは、その発表手段や営利か非営利を問わず、予報業務許可
> の対象となります。
> 一方、予想を行う人が、自分の所属する学校や会社あるいは家庭等、内部
> のみで自らの予想を利用する限りは、部外への発表を伴わないため、許可は
> 不要です。また、気象庁発表の予報や予報業務の許可を受けた事業者の予報
> を、その内容を変えずに解説したり伝達したりする行為も、予報とは見なし
> ませんので、許可は不要です。

気象業務法は、その第2条で「気象業務」を定義しています。発表だけでなく、
情報収集も研究も気象業務に含まれます。


15408. 2007年11月17日 21時17分56秒  投稿:早川 
 [http://www.jma.go.jp/jma/kishou/minkan/kyoka.html]
同じpdfの4ページに「予報業務許可に関する審査基準」が書いてあります。

> ○予報を行おうとする現象
> 気象・地象(路面状況に限る)・波浪に区分する。
> (路面状況を除く地象、津波、高潮、洪水の予報については、防災
> との関連性の観点等から許可しない。)

この文面が書き換えられない限り、地震動の予報も火山現象の予報も、申請して
も許可されません。地震動の予報も火山現象の予報も、防災との関連性がたいへ
ん強いですから、この文面が今回の施行時に書き換えられるとは思われません。


15411. 2007年11月18日 06時56分27秒  投稿:早川 
 [http://www.jma.go.jp/jma/press/0710/11b/071011_houritsuan.html]
> この文面が書き換えられない限り、地震動の予報も火山現象の予報も、申請して
> も許可されません。地震動の予報も火山現象の予報も、防災との関連性がたいへ
> ん強いですから、この文面が今回の施行時に書き換えられるとは思われません。

この見通しは誤りでした。

改正の新旧対照表
http://www.jma.go.jp/jma/press/0710/11b/071011_houritsuan.html
からリンクされたpdfファイル
をみると、地震動の予報業務と火山現象の予報業務の申請は、審査して基準に適
合すれば許可するつもりのようです。

> 第十八条 気象庁長官は、前条第一項の規定による許可の申請書を受理し
> たときは、次の基準によつて審査しなければならない。
> (略)
> 四 地震動又は火山現象の予報の業務を行おうとする場合にあつては、
> 当該予報業務のうち現象の予想の方法が国土交通省令で定める技術上
> の基準に適合するものであること。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://kipuka.blog70.fc2.com/tb.php/89-fde70f06
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad