早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

観察対象に変化がなくても観察者が変われば見え方が変わる。



全球を対象として毎年の噴火記録を15世紀まで遡ってみよう。噴火した火山の数は、15世紀は毎年1-2個にすぎなかったが、18世紀には10個を超え、20世紀には60個を超えた。この激増は、地球がしだいに活発化して火山噴火の数が増えているからではない。観察者側の事情が変化したことによるみかけの増加だ。15世紀から大航海時代が始まって、人口が増え、情報の流通が良くなったせいで、火山噴火の報告数が増えた。観察対象である火山は15世紀もいまも同じ調子で噴火を繰り返している。

これと同じことがいま福島県で起こっている。いままでになかった規模と手法で集団スクリーニングが実施されているから、そこで甲状腺がんがたくさんみつかっている。甲状腺がんが増えているわけではない。

図は、Siebert, et. al., (2010) Volcanoes of the World, 3rd ed. Smithsonian Institution and University of Calfornia Press より

全員検査による甲状腺がん率

2011年3月にヨウ素被ばくを受けた福島県に甲状腺がんが多い事実は認められない。今回の検査で、潜在的な甲状腺がん患者が1万人に4人程度いることが明確になりつつある。これは甲状腺学界にとって重要な発見だ。この新知見をもとに、甲状腺がんの教科書をすっかり書き直す必要がある。

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・福島県の検査には、低年齢児が含まれている。そして、二次検査がまだ3/4ほどしか進捗してない。がん数はこの1.3倍くらいになる見込み。
・弘前、甲府、長崎のどこかでがん1人みつかった報告が環境省からあった(2014.3.28)。
・まとめ「福島県外での全員検査による甲状腺がん率

福島県の甲状腺がん発見数の増加過程

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玄妙1万分の4仮説が成り立つとすると、福島県の子ども36万人のうち144人が甲状腺がんを持っている。その半数が検査でみつかれば72人だ。いま43人だから、あと29人みつかるはずだ。検査がこのまま続けば、甲状腺がんは来年のいまごろまでこのペースで増加するだろう。(2013年8月20日)

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いま福島県で見つかっている小児甲状腺がんは原発事故由来ではない。

▼原発事故由来では説明できないこと。
・B判定割合が、福島23年度も24年度も青森も山梨も長崎も、0.5から1.0%である。
・がん数が、福島県内において特定地域に偏在していない。むしろ人口による。
・事故からまだ1年あるいは2年なのに、しこりが2センチもある。
・福島23年度、24年度、25年度検査でがん率が変わらない。時間経過とともに増えてはいない。しこりが大きくなってもいない。

▼多発ではない。
・がんがいままで考えられていた人口比をはるかに超えて報告されているのは、もとからあったが放置されていたがんをスクリーニング検査が無理矢理みつけ出しているからである。これまでに発見されたすべてのがんに自覚症状はなかったという。

▼結論
・原発事故によって小児甲状腺がんが増える心配を理由に、甲状腺スクリーニング検査をするのは、益よりも害のほうが大きい。即刻中止すべきである。検査しても治らない。甲状腺がんを早期発見すれば延命率が上がるとは考えられない。手術して生活の質が低下するだけだ。

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(左図)甲状腺がんの数(疑い含む)をピンの数で示す。27例。ハンバーガーとドリンクは、その市町村でゼロであることを示す。ただし23年度検査対象のみ。
(右図)ヨウ素131の沈着量。2011年4月3日基準。日本原子力研究開発機構。

甲状腺がん地図

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甲状腺検査B判定割合(%)とセシウム汚染の関係。相関はみられない。

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甲状腺がんの数とセシウム汚染の関係。橙ピンが甲状腺がんを示す。水色ピンは甲状腺がんなしの市町村(ただし23年度検査分のみ)。郡山市は二次検査対象442人のうち5人のみ検査終了。相関はみられない。人口密度に比例してるようにみえる。

・B判定とがん出典:福島県2013.6.5
・セシウム汚染コンターは八訂版。

フクシマ原発2011年3月事故のリスク評価

フクシマ原発で2011年3月に起こった事故では、1京2000兆ベクレルのセシウムが環境にまき散らされた。チェルノブイリ原発で1986年4月に起こった事故でまき散らされたセシウムの10分の1に当たる(フクシマ原発2011年3月事故の特徴)。ここでは、このセシウムによる健康リスクを評価する。ヨウ素によるリスクはデータ不足のため評価しない。

チェルノブイリ事故から約20年たった2005年9月にウイーンで開かれた国際会議に出席した金子正人はこう報告している。「被ばくの多かった除染作業者、避難した人々、汚染地区の居住者など約60万人の中からこれまでの死亡者を含めて約4000人が放射線被ばくが原因で死亡するとの予測が示された。」(金子、2007

同会議に出席したであろう長滝重信のまとめが児玉(2009)論文にあるので、セカンドオピニオンとして見てみよう。長滝はこう書く。「不確実ではあるが、事故の大きさの概略の印象のため、今後の癌死亡者数を推定すると 4000 人(あるいは 9000 人)である。数万、数十万人ということはない)」 チェルノブイリ原発事故によるがん死者数の見積もりとして4000人の数字がこの国際会議のコンセンサスとして認められたのは確かなようだ。

この死者数推定がどのようになされたのかは不明だが、LNT仮説を極低線量まで延長する方法によって計算されたのだろうと思われる。これをフクシマでやってみたらどうなるだろうか。出発点は、広く認められている「100ミリシーベルトで0.5%ががん死する」に置く。致死量は20シーベルトになる。
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福島23年度甲状腺検査の市町村別データ

甲状腺検査の市町村別データは長いこと隠匿されていたが、2013年4月22日に毎日新聞紙上に初めて公開された。

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(左)福島23年度調査B判定が0.60%を超える4町村(川内、浪江、葛尾、飯館)
(右)福島23年度調査B判定が0.40%を下回る4町(川俣、広野、富岡、双葉)

福島県がすでに述べていたように、B判定割合と放射能汚染に相関を認めることはむずかしい。検査で発見された10人の甲状腺がん(疑いも含む)が、2011年3月の原発事故で生じたとは考えにくい。

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A2n判定は、5ミリ以下の結節によってA2判定された数。
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甲状腺スクリーニング検査結果の考察

福島県で、原発に近い地域に住んでいた子ども3万8000人を23年度にスクリーング検査したら、甲状腺がんが10人みつかった。そのうち3人はすでに手術してがんを摘出した。経過は良好だという。

おととし3月、大きな地震と津波のあと、福島第一原発の運転が正常にできなくなって、大量の放射性物質が空中に放出された。そのとき、福島県内と東日本の大気中を漂ったヨウ素を直接吸い込んだり、後日食物といっしょに取り込んだ人が、身体に深刻な害を受けたのではないだろうかと懸念されている。

ヨウ素は甲状腺に溜まりやすい。チェルノブイリでは、事故後しばらくしてから小児甲状腺がんが多発した。小児甲状腺がんは、100万人に毎年1人か2人しか発症しないたいへんめずらしいがんである。これほどめずらしいがんが福島県で3万8000人に10人もいきなりみつかったのは、おととし3月の原発事故のせいでないかと疑われる。しかしよく考えてみると、どうやらそうではないらしい。

福島県では24年度も続いて甲状腺スクリーニング検査を実施している。中通りなど、原発に近い地域ほどヨウ素の摂取が多くなかったと見込まれる地域の子どもたち対象だ。がんの人数はまだ発表されていないが、5ミリ以上のしこり(B判定)があった子どもの割合は0.6%だった。原発に近い地域を調べた23年度はこれより少ない0.5%だった。

原発事故の影響がほとんどなかったと思われる弘前・甲府・長崎で同様のスクリーニング検査を環境省がしたところ、B判定は1.0%だった。

しこりの有無で判断する限り、子どもの甲状腺にいま原発事故の影響は認められない。ヨウ素の摂取量とB判定割合に相関はない。

この甲状腺スクリーニング検査は、もともとけっこうあったのだけれど、いままで知られていなかった甲状腺異常を、最新式の高性能超音波検査システムによって洗い出したものとみられる。おとなり韓国でも、近年の超音波検査の普及に伴って甲状腺異常が多数みつかっているという。

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福島県で始まった甲状腺スクリーニング検査

いま福島県で行われている甲状腺スクリーニング検査は、基準を定めるための検査である。この基準をベースラインと呼ぶ。福島の子どもたちの甲状腺にどれだけにしこりがあるかを調べる検査だ。いままでの検査では、100人に1人くらいの割合で大きなしこりがみつかっている。

この割合は、いままで知られていたより桁違いに大きい。しかしこれを、2年前の原発事故で出たヨウ素のせいだとみなすのは早計である。最新の超音波器械が高性能なために「見えすぎてしまう」効果によるらしい。原発事故の影響がほとんどない青森・山梨・長崎で行われた同様検査で同様の割合でしこりがみつかったことが、この推論を支える。

(ただし、ここでちょっと不審なのは、1万人に1人の割合でがんがみつかったことだ。そのうち3人がすでに手術したそうだ。これに関する情報公開は個人の権利を守るために限定的だ。したがって、3人がん手術が意味するところは、一般にはまだよく知らされていない)

2年後、2回目の検査をする。それによって、しこりを持っている人が増えたり、しこりが大きくなっていないかをベースラインと比較して調べる。しかし、ここで増大が確認できても、原発事故のせいだと決め付けるのはまだ早いのだそうだ。しこりの割合は時間とともに変化するのが普通で、その変化を見ているだけの可能性があるのだそうだ。

4年後、3回目の検査をする。このとき初めて原発事故の影響があるかないかの判断ができる。1回目(ベースライン)から2回目までに増えた分と、2回目から3回目までに増えた分を比較する。後者が無視できないほど大きかったときに限り、原発事故の影響があったことがわかるという。

ヨウ素が襲来した程度の差によって、警戒区域(多い)・中通り(中くらい)・会津(少ない)に分けて上の検査の結果を集計すれば、原発事故の影響をより正確に判定することができるそうだ。

以上、玄妙さんから教わった。

甲状腺がん仮説

▼仮説
小児甲状腺がんは、症状が出てみつかるのは100万人あたり毎年1人2人というごくまれな病気だが、じつは症状が出ないまま100万人あたり400人くらいがもってる病気だった。これを玄妙1万分の4仮説と名付ける。

▼状況証拠
・福島県23年度検査(高汚染地域)、同24年度検査(中汚染地域)、他3県検査(低汚染地域)に大きな違いはない。ただし、その発見率は従来知見の100倍もある。
・韓国もその発見率。(中央日報
・都内の女子高生の甲状腺触診で6/2869すなわち0.2%に結節発見(慶応)5月7日加筆

▼反証
・まだみつからない。 【“甲状腺がん仮説”の続きを読む】
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