早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

甲状腺検査受診者の年齢別割合

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(福島県データを2014年6月30日現在に更新した。)

三県調査のがん1人は、16~18歳の女性だという。三県調査の16~18歳は全体の20%を占める。福島県調査では10%だから、年齢構成を無視してそのまま比較すると、三県調査が2倍過大評価になる。

三県調査と福島県調査で16~18歳だけを抜き出してがん率を比べると、ほとんど変わらないことがはっきりする。
 ・三県調査 906人中1人(0.11%)
 ・福島県調査 31253人中45人(0.14%)疑い含む 
三県調査では、B判定44人のうち二次検査に同意が得られたのは31人。したがって、上の4割増しとみるのがよい。
福島県調査はまだ進行中だ。最終的ながん数はいまより2割程度増えると思われる。

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福島県の超音波検査でみつかる甲状腺がん数の長期予測

2011-2013年 105人
2014-2015年  20人 
2016-2017年  20人
2018-2019年  25人
2020-2021年  30人

原発事故時に子どもだった36万人を2年に1度検査する計画をこのまま継続すれば、2021年までの10年間で200人に甲状腺がんがみつかるだろう。そのうちの半分が2013年までの初回にみつかる。

事故前からあった既存がんの掘り起こしが2013年までの初回でほとんど済む。2014年から始まる2巡目以降では、被検査者が年齢を重ねたことによって生じた新しい甲状腺がんが、年を追うごとにしだいに数が増えてみつかる。

2011年3月の原発事故に起因する甲状腺がんは、初回と2巡目はゼロ。3巡目以降でも2割を超えないとみる。

・関連まとめ 「福島県における超音波検査と甲状腺癌」(Jacobの2014年1月9日論文)

木村真三2013年7月23日郡山講演

木村真三2013年7月23日郡山講演(講演40分、質問12分)
市民科学者養成講座 第1講 「核害の街に生きる(1)オリエンテーション編」



1分
「みなさんに市民科学者になってもらいたい。」

3分
「自然放射性核種は安全だ、人工放射性核種は危険だ、ということはいっさいありません。放射線というものは、種類を問わず、危ないものは危ない。(安全なものは安全です。)」

9分
「東南海地震が起きた場合はマグニチュード10になる。9を超えると言われています。」

10分
「ここ二本松は、不幸なことに、人口の比率で言うと、がんが一番多い地域になってしまいました。」

13分
「甲状腺がん27人の分母は17万人ではなく383人である。」
・間違った情報が出ている。
「この間違いを国会のエネルギー調査委員会の準備委員会で、菅直人・前首相の前で、国会議員の前で、環境省の医系技官の前で、説明してきた」

15分
・発表されたヨウ素地図は、半減期でヨウ素が亡くなってからの地図を出している。
「正しい情報公開を彼ら(研究者)が行っていない」
「情報をきちんととらえきれていないマスコミ」

18分
「(事故で出たヨウ素のせいで)間違いなく甲状腺がんが出ていると思っています」
・(伝えられている情報は)うそ八百だ。(マスでとらえているから)
・ひとり一人への聞き取り調査が大事。
「二本松では、ひとり一人きめこまかく聞き取り調査をします」

24分20秒
「彼らは反省の色がないのです。ないとなんでいえるのか。そこがおかしい。(甲状腺がんが)ないならなくて助かった。ラッキーなんです。だから、きちんと調べるのを継続的に行うのが真実なんです。そこを忘れているんです」
予言は悪いことを言えばいい、がまさしくあてはまる。このあと自分の予言が外れても、よかったね、と言ってもらえることを木村真三さんは期待している。

この40分講演には、木村真三さんの基礎学力に不安を感じざるを得ないところが多々みられる。そのいくつかを上に例示した。彼は、冷徹な客観世界に住む科学の人ではなく、情が深い主観社会に住む市井の人だ。原発事故のような長期居座り型の災害現場では、冷徹な科学者ではなく、彼のような寄り添うタイプの人を市民は求めているようだ。

たとえば、30分09秒からの肝心部分(70秒間)で木村真三さんの主張は破たんしてる。論理が通っていない。何を言いたいのかわからない発言になっている。

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観察対象に変化がなくても観察者が変われば見え方が変わる。



全球を対象として毎年の噴火記録を15世紀まで遡ってみよう。噴火した火山の数は、15世紀は毎年1-2個にすぎなかったが、18世紀には10個を超え、20世紀には60個を超えた。この激増は、地球がしだいに活発化して火山噴火の数が増えているからではない。観察者側の事情が変化したことによるみかけの増加だ。15世紀から大航海時代が始まって、人口が増え、情報の流通が良くなったせいで、火山噴火の報告数が増えた。観察対象である火山は15世紀もいまも同じ調子で噴火を繰り返している。

これと同じことがいま福島県で起こっている。いままでになかった規模と手法で集団スクリーニングが実施されているから、そこで甲状腺がんがたくさんみつかっている。甲状腺がんが増えているわけではない。

図は、Siebert, et. al., (2010) Volcanoes of the World, 3rd ed. Smithsonian Institution and University of Calfornia Press より

全員検査による甲状腺がん率

2011年3月にヨウ素被ばくを受けた福島県に甲状腺がんが多い事実は認められない。今回の検査で、潜在的な甲状腺がん患者が1万人に4人程度いることが明確になりつつある。これは甲状腺学界にとって重要な発見だ。この新知見をもとに、甲状腺がんの教科書をすっかり書き直す必要がある。

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・福島県の検査には、低年齢児が含まれている。そして、二次検査がまだ3/4ほどしか進捗してない。がん数はこの1.3倍くらいになる見込み。
・弘前、甲府、長崎のどこかでがん1人みつかった報告が環境省からあった(2014.3.28)。
・まとめ「福島県外での全員検査による甲状腺がん率

福島県の甲状腺がん発見数の増加過程

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玄妙1万分の4仮説が成り立つとすると、福島県の子ども36万人のうち144人が甲状腺がんを持っている。その半数が検査でみつかれば72人だ。いま43人だから、あと29人みつかるはずだ。検査がこのまま続けば、甲状腺がんは来年のいまごろまでこのペースで増加するだろう。(2013年8月20日)

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いま福島県で見つかっている小児甲状腺がんは原発事故由来ではない。

▼原発事故由来では説明できないこと。
・B判定割合が、福島23年度も24年度も青森も山梨も長崎も、0.5から1.0%である。
・がん数が、福島県内において特定地域に偏在していない。むしろ人口による。
・事故からまだ1年あるいは2年なのに、しこりが2センチもある。
・福島23年度、24年度、25年度検査でがん率が変わらない。時間経過とともに増えてはいない。しこりが大きくなってもいない。

▼多発ではない。
・がんがいままで考えられていた人口比をはるかに超えて報告されているのは、もとからあったが放置されていたがんをスクリーニング検査が無理矢理みつけ出しているからである。これまでに発見されたすべてのがんに自覚症状はなかったという。

▼結論
・原発事故によって小児甲状腺がんが増える心配を理由に、甲状腺スクリーニング検査をするのは、益よりも害のほうが大きい。即刻中止すべきである。検査しても治らない。甲状腺がんを早期発見すれば延命率が上がるとは考えられない。手術して生活の質が低下するだけだ。

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(左図)甲状腺がんの数(疑い含む)をピンの数で示す。27例。ハンバーガーとドリンクは、その市町村でゼロであることを示す。ただし23年度検査対象のみ。
(右図)ヨウ素131の沈着量。2011年4月3日基準。日本原子力研究開発機構。

甲状腺がん地図

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甲状腺検査B判定割合(%)とセシウム汚染の関係。相関はみられない。

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甲状腺がんの数とセシウム汚染の関係。橙ピンが甲状腺がんを示す。水色ピンは甲状腺がんなしの市町村(ただし23年度検査分のみ)。郡山市は二次検査対象442人のうち5人のみ検査終了。相関はみられない。人口密度に比例してるようにみえる。

・B判定とがん出典:福島県2013.6.5
・セシウム汚染コンターは八訂版。

フクシマ原発2011年3月事故のリスク評価

フクシマ原発で2011年3月に起こった事故では、1京2000兆ベクレルのセシウムが環境にまき散らされた。チェルノブイリ原発で1986年4月に起こった事故でまき散らされたセシウムの10分の1に当たる(フクシマ原発2011年3月事故の特徴)。ここでは、このセシウムによる健康リスクを評価する。ヨウ素によるリスクはデータ不足のため評価しない。

チェルノブイリ事故から約20年たった2005年9月にウイーンで開かれた国際会議に出席した金子正人はこう報告している。「被ばくの多かった除染作業者、避難した人々、汚染地区の居住者など約60万人の中からこれまでの死亡者を含めて約4000人が放射線被ばくが原因で死亡するとの予測が示された。」(金子、2007

同会議に出席したであろう長滝重信のまとめが児玉(2009)論文にあるので、セカンドオピニオンとして見てみよう。長滝はこう書く。「不確実ではあるが、事故の大きさの概略の印象のため、今後の癌死亡者数を推定すると 4000 人(あるいは 9000 人)である。数万、数十万人ということはない)」 チェルノブイリ原発事故によるがん死者数の見積もりとして4000人の数字がこの国際会議のコンセンサスとして認められたのは確かなようだ。

この死者数推定がどのようになされたのかは不明だが、LNT仮説を極低線量まで延長する方法によって計算されたのだろうと思われる。これをフクシマでやってみたらどうなるだろうか。出発点は、広く認められている「100ミリシーベルトで0.5%ががん死する」に置く。致死量は20シーベルトになる。
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福島23年度甲状腺検査の市町村別データ

甲状腺検査の市町村別データは長いこと隠匿されていたが、2013年4月22日に毎日新聞紙上に初めて公開された。

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(左)福島23年度調査B判定が0.60%を超える4町村(川内、浪江、葛尾、飯館)
(右)福島23年度調査B判定が0.40%を下回る4町(川俣、広野、富岡、双葉)

福島県がすでに述べていたように、B判定割合と放射能汚染に相関を認めることはむずかしい。検査で発見された10人の甲状腺がん(疑いも含む)が、2011年3月の原発事故で生じたとは考えにくい。

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A2n判定は、5ミリ以下の結節によってA2判定された数。
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