早川由紀夫の火山ブログ

火山でいま進行中の噴火や異常をわかりやすく解説します。

浅間山2004年噴火と火映のタイミング

2004年8月から2005年3月まで毎夜の浅間山火映強度と噴火のタイミング。

この表は、火山に2005年に印刷した報告の一部として用意しましたが、削除しろと査読意見がついたために印刷公表できなかったものです。理由は、火映の強弱をこのような形式で表現するのは科学的でないということだったと記憶します。私は、この査読意見にまったく同意できませんでしたが、そのときは報告を火山に印刷したかったので争うことをせず、表の削除を承諾しました。

噴火警報と観光業 浅間山の事例

この記事は、まったくいただけない。どこがどうなのかの論評は後日します。いま論評すると、研究対象に影響を与えてしまうから、しません。きょうは、記事をここに記録しておくだけに留めます。

浅間山:火口周辺警報 別荘所有者から役場に安全確認の電話相次ぐ /群馬
 浅間山(2568メートル)に火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)が出された8日、別荘地を抱える嬬恋村や長野原町の役場には、別荘の所有者から安全を確認する電話が相次いだ。間もなくお盆の夏休みシーズンを迎えるだけに、関係町村は観光面への影響を懸念している。

 警報を受け、立ち入り禁止となる火口から2キロ以内にあたる嬬恋村は防災無線を流して村民に周知、火口北の遊歩道に立ち入り禁止の看板を掲げた。ただ、2キロ以内に建物はなく住宅地も遠いため、村民に大きな混乱はなかった。

 一方、一帯は別荘地が多く、所有者には不安を与えたようだ。同村では午後3時から約30分間、5回線ある役場の電話が鳴りっぱなし。北軽井沢を抱える長野原町役場にも数十件の電話が寄せられた。同町総務課は「現在のところ別荘地への影響はないが、小規模噴火の可能性は否定できない。これで旅行を取りやめる人も予想され、影響は非常に大きい」と苦りきっている。【伊澤拓也】

毎日新聞 2008年8月9日 地方版

噴火警戒レベルと規制主体 各社の報道

× 信濃毎日新聞
気象庁は8日、浅間山の噴火警戒レベルを平常の1から火口周辺への立ち入りを規制する2に引き上げた

△ 上毛新聞
気象庁は八日、小規模噴火の可能性があるとして、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げる火口周辺警報を発表した

○ 毎日新聞(長野)
気象庁地震火山部は8日午後3時、浅間山(2568メートル)の噴火警戒レベル1(平常)からレベル2(火口周辺規制)に引き上げたと発表した。浅間登山の火山館コース、黒斑コースがある小諸市は、火口から500メートルの立ち入り規制を、約2キロの賽(さい)の河原までの規制に変更し、登山者らに注意を呼び掛けた。

○ 読売新聞(群馬)
浅間山(2568メートル)について、気象庁が8日に発表した噴火警報は、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げたもので、昨年12月に5段階の噴火警戒レベルを導入して以降、初めての引き上げとなった。火山性地震が増加したためで、これを受けて周辺の嬬恋村や長野県3市町は、火口から半径2キロを立ち入り禁止とした

× 読売新聞(長野)
浅間山(2568メートル)の「噴火警戒レベル」が8日、「レベル1(平常)」から「レベル2(火口周辺規制)」に引きあげられ、入山の規制範囲が拡大された。
 気象庁浅間山火山防災連絡事務所(軽井沢町)によると、浅間山では6日ごろから、噴煙がやや多くなっているという。これまで火口手前500メートルの前掛山まで入山可能だったが、火口から約2キロの賽(さい)の河原と呼ばれる地点まで、入山が規制されることになった

○ 日本経済新聞
気象庁は8日、浅間山(群馬、長野県)で火山活動が活発化しているとして、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げた。小規模な噴火が発生し、火口から約2キロの範囲に噴石や火砕流が広がる恐れがあるといい、周辺市町村に警戒を呼びかけている

○ 共同通信
警戒レベル引き上げを受け、小諸市では2カ所ある登山ルートで、火口から約500メートルとしていた立ち入り禁止区域を約2キロに広げた

△ 時事通信
気象庁は8日、浅間山で小規模な噴火が発生する可能性があるとして、噴火警戒レベルを平常のレベル1から火口周辺の立ち入りを規制するレベル2に引き上げたと発表した。火口から約2キロの範囲で、大きな噴石に警戒が必要という。


× 規制主体が気象庁だと明記したもの
信濃毎日新聞、読売新聞(長野)

△ 規制主体が気象庁だと読めるもの
上毛新聞、時事通信

○ 規制主体は地元市町村長だと読めるもの(これが正しい)
毎日新聞(長野)、読売新聞(群馬)、日本経済新聞、共同通信

噴石は風の影響を受ける?受けない?

気象庁が使う「噴石」という語のいいかげんさにはいささかうんざりだが、弾道岩塊の飛来は火山防災を実現するための最重要課題のひとつだから看過することはできない。私も粘り強く言い続ける。

噴火予報・警報 第1号
火山名 浅間山 噴火警報(火口周辺)
平成20年8月8日15時00分 気象庁地震火山部

3.防災上の警戒事項等
 火口から概ね2kmの範囲では、弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒
 風下側では、降灰及び風の影響を受ける小さな噴石に注意


浅間山の噴火警戒レベル

レベル3 山頂火口から中噴火が発生し、4km以内に噴石や火砕流が到達
レベル2 山頂火口から小噴火が発生し、2km以内に噴石や火砕流が到達

注1)ここでいう噴石とは、主として風の影響を受けずに飛散する大きさのものとする。


2キロを超える風下に小さな噴石が到達するかもしれないから注意しろという。レベルの定義表を素直に読めば、それならレベル2ではなくレベル3だ。気象庁がいう噴石とは、いったい何なのだろうか。火山監視の責任官庁が、このようなわけのわからない防災用語をキーワードとして使うことを許してよいのだろうか。噴石はいったい風の影響を受けるのか、受けないのか。気象庁は、はっきりした言葉で語るべきだ。

なお、噴石は日本気象庁が独自に用いる用語である。国際語である英語にそれに対応する語はない。また私自身は、火山学を記述するときに噴石の語を10年以上前から一切使用していない。学術研究においてはあいまい性を排除する必要があるからだ。火山弾 (bombs) あるいは火山岩塊 (blocks) の語を使う。噴石の語を使わなくても、最新火山学を平易に記述することができる。

火映出現からブルカノ式爆発まで4週間 2004年の場合

昨年12月の気象業務法改正によって、気象庁以外のものが噴火予報をするときには気象庁長官の許可を得なければならなくなりました(17条)。私は許可を得てないので、ここには過去の事実のみを書きます。

2004年の事例
8月06日 火映出現
8月21日 とくに明るい火映
8月24日 とくに明るい火映
9月01日 ブルカノ式爆発、18万トン

2008年の事例
8月09日03時 火映出現
8月10日0237 気象庁によると有色噴煙400メートル。爆発音の報告なし
8月10日03時 とくに明るい火映
8月11日03時 明るい火映
8月11日2005 気象庁によると有色噴煙200メートル。爆発音の報告なし
8月12日03時 明るい火映

コメント:潮汐に同期しているようにみえる。8.12.0646

気象庁による浅間山レベル2と地元市町村の対応

2008年8月8日15時の気象庁噴火警報(これは多分に災害対策基本法に抵触の疑いあり)の発表を受けた浅間山麓市町村の対応をホームページで調べました。

小諸市
8月8日更新。賽の河原分岐点までの登山OK。災害対策基本法63条に言及。

御代田町
8月8日更新。町自身の防災対応に変化なし。4キロ以内立入禁止。法的根拠不明。

軽井沢町
8月8日更新。町自身の防災対応に変化なし。4キロ以内立入禁止。ただし、小浅間山と石尊山は登山OK。法的根拠不明。

長野原町
町自身による最新情報伝達は、なし。防災対応も、なし。気象庁ページへの常設リンクのみ。

嬬恋村
8月8日更新。ただし、レベル2になった事実のアナウンスと気象庁ページへのリンクのみ。ホームページには村の主体性がひとつもみられないが、現地では溶岩樹型からの登山道入口に2キロ以内立入り禁止の看板を立てたという。

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神戸の水害を伝えた新聞記事 自然への畏敬を忘れる

橋脚にしがみつき九死に一生 神戸の水害で男性語る アサヒコム

(前略)
能勢さんは「増水は想像を超える速さだった。濁流にのみこまれた人は逃げる間もなかっただろう。こんな悲惨な事故は二度と起きてほしくない」と振り返る。


きのうの神戸の水害で、橋脚にしがみついて助かったひとにインタビューして、そのとき何が起こったのかをありありと描き出した新聞記事だ。しかしそのいい仕事を、最後に置いた一文で台なしにしてしまった。

「こんな悲惨な事故は二度と起きてほしくない」は、助かったひとの発言として書いてあるが、執筆した記者の意思と価値観によって、まとめの言葉として据えられたものである。

新聞記事はこの災害を理知的に生き生きと描写している。しかし、最後のこの一文だけがとってつけたように情緒的だ。誰かに過失があって、そのためにこの悲惨な事故が起きたかのよう読めてしまう。しかし、きのうの水害は誰かに過失があったから起こったのではない。大自然の圧倒的な力にひとが打ちのめされたのだ。

たしかに悲惨な災害だったが、「二度と起きてほしくない」と念じてもそれは叶えられない。このような災害は、ときを置いてかならず繰り返す。ひとのちからでそれを止めることはできない。この記事を書いた記者は、ひとの手が及ばない圧倒的な自然に対する畏敬の念を忘れたように思う。

深さ100キロ、マグニチュード7地震の警報

00時26分に岩手県で起きた地震は、緊急地震速報の新たな欠点を露呈してしまいました。

深さ108キロというから、この距離なら速報が十分間に合うはずだと私は思っていたし、気象庁も思っていたでしょう。しかし警報は遅れました。警報(第6報)が出たのは、地震波の検知から20.8秒もあとのことでした。それは地震波(S波)が岩手県内全域を通過したあとでした。水平方向に100キロではうまくいっても、垂直方向の100キロはうまくいかないことが今朝の地震で露呈しました。

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 気象庁

予報(第1報)は、地震波検知から4.1秒後にでました。しかし震源が深かったため、P波の性質だけから震度を正しく予測することは困難だったようです。システムは、マグニチュード5.8、最大震度4と予測してしまいました。警報の基準を満たす震度5弱が予測されたのは20.8秒後の第6報でした。それは、震度5弱がじっさいに観測されたあとでした。緊急地震速報は、間に合わなかったのです。

しかし、けがをしたり財産を失った方には申し訳ないですが、100キロも深くてマグニチュード7程度の地震では人が死ぬようなことはほとんどありませんから、このような地震の場合は警報が間に合わなくても甚大な損失はないと考えることもできましょう。100キロ深でもマグニチュード8なら地震波検知直後の第1報で警報が出るだろうと期待します。

なお、この地震は日本列島でふつうに起こる逆断層型ではなく正断層型でした。日本列島の下に斜めに沈みこむ太平洋プレート・スラブが、下に引っ張られて引きちぎれて生じた地震だったのでしょう。

ハレマウマウ火映復活

ハレマウマウの火映は、6月にはいって弱まっていた。ウェブカメラに写らなくなっていたが、7月にはいって2晩目のきょうはひさしぶりに赤く見えている。ハワイ火山観測所のハレマウマウカメラ

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地球は、いま100メートルの坂を下ろうとしている

地球はいま、寒冷化しています。

地球は、2万年前に氷期の底を経験したあと、急速に温暖化しました。8000年前までに何回かあった寒の戻りを挟んで、5000年前にもっとも暖かくなりました。地球は、そのあとゆっくり寒冷化しています。次の氷期に向かっています。次の氷期の底は10万年後に来るだろうと思われます。この約12万年周期の温暖寒冷サイクルは、過去に遡って少なくとも7回は数えられます。8回目が起こらない可能性はゼロではありませんが、8回目も起こると考えるのが自然です。

5000年前がじつは温暖のピークではなく、温暖のピークはこれから来るという考えは検討に値します。いまから500年後にもっとも暖かくなるかもしれません。しかしそのとき、地球の平均気温が5000年前よりはるかに高くなるとは思われません。せいぜい1度高くなるだけでしょう。

5000年前から現在までの海面低下は2メートルほどです。過去の地球の平均気温を知るには、海面の位置がよい指標になります。寒くなると氷が大陸の上に蓄積されるから海の水が減って海面が下がります。

2万年前の氷期の底のとき、海面はいまより100メートルも下にありました。したがって、いまは約12万年周期の温暖寒冷サイクルのなかでもっとも温暖な時期にあたります。地球は、これから氷期に向かって100メートルの坂をゆっくりと数万年かけて下ろうとしています。

最近1000年間を細かく見ましょう。西暦900-1250年は温暖でした。日本では平安朝文化が栄えました、北大西洋ではバイキングが活躍しました。そのあと1850年まで、寒冷時代が続きました。小氷期といいます。現在はそのあとに続く温暖期です。ヨーロッパやアラスカの氷河は、毎年縮退しています。この寒冷/温暖変化は、上で説明した約12万年周期の氷期/間氷期サイクルよりずっと短い時間スケールの話です。

したがって、現代科学が教える現在の地球の立ち位置は次です。短期的な細かい目で見ると温暖化しているようにみえるが、長期的には寒冷化している。次の氷期最寒冷は10万年後に来るだろう。いまの温暖化はこれから1万年も長くわけではない。やがて終わって、寒冷化にスイッチを切り替える。

地球はいま短期的には温暖化していますが長期的には寒冷化しています。いま地球は100メートルの坂をわずかに下り始めたところにいます。その坂は単調ではなく、険しいアップダウンを何回も繰り返します。目の前の上り坂だけを見て、大局的には100メートルの坂を下っていることを忘れている、あるいは知らないひとが多いようにみえます。

また、化石燃料をいくら大量に消費するといっても、地球によるこの自発的環境変化をひとのちからで左右できると思うのは傲慢だと感じます。自然への畏敬が足りない気がします。ひとの所作がひとの住環境に影響を与えることはありましょうが、地球環境を支配するとまでは思われません。地球の営みはかならずひとを凌駕します。

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